「……っざけんなっ!」
「道、これで、あってますか…!?」
「……僕が間違える、と、でも!?」
「結構、しんどいの、なぁー!」
激戦です。
工場跡で見つかってから、ひたすら車道を走っています。
人気の無い2車線道路では、身を隠す所も無いのでひたすら走るより他にはありません。
しかし、向こうも躍起になっていますね。
追って、追って、追いかけて…黒服の一団の先頭に立つ奴らは銃をぶっ放してきますが、山本武が防いでいます。
先程の、サブマシンガンの連中も追いついて来て、まさに銃弾雨あられ……。
山本武だけでは防ぎきれないので、雲雀恭弥も後ろで銃弾を弾く方にまわりました。
今は獄寺隼人が、邪魔な物を(主に妨害してくる黒い車)をダイナマイトで吹っ飛ばしながら先頭をつっ走っています。
「……っ!」
右足に鋭い痛み。……でも、走れない程じゃ、ない。流れ弾が掠りましたかね?
まだ、工場から100mも走っていないでしょう。
なのに、後ろの2人は結構な満身創痍です。だらしない。
そう思った矢先に、揺れ。……地震!?
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!
それと同時に、耳をつんざくような…音!?振動!?
突如、目の前に大型のトラックが滑り込んで、通せんぼ、してきます。
しょうがないから回り込んで、避けますが……。
「畜生!やられた!」
獄寺隼人が叫んでます。
そうですね。僕らはしてやられました。
トラックの向こうには、びっしりと黒い車がありました。
後ろにも、言わずもがな。
黒服達があざわらうように、ゆっくりと車から降りて、銃を構えます。
銃口はぴたりと、狙いを定めたまま動きません。さすがですね。
そうしたまま、包囲網を少しずつ狭めて…今は僕らを中心に半径5m程のあたりまで来ています。
「随分とまぁ、逃げ回ってくれたじゃねぇか。鬼ごっこは終わりだぜ?ガキ共……。」
黒服の代表格とおぼしき人間が語りかけてくる。
「逃げ回った…?そうだね。執拗なストーカーが並盛の平和を乱しながら、しつこくしつこく、つけ回して来てたのは知ってたけど。」
「そういう趣味なんじゃねぇの?この前テレビで見たぜ?」
「けっ!まさかリアルに少年趣味のオヤジの大群に出会うなんてな、思ってもみなかったぜ。」
「嫌ですねぇ、気持ち悪い。僕、オジサンに興味はありませんよ。」
「黙れガキ共!今のこの状況、分かってるのか!?」
たくさんの銃口がこちらを向いています。この距離ならばまだ、反応はできますが…。
しかし、すごい数。
これでは、さすがの僕も逃げ切る事はできませんね。
いえ、誰も、逃げられないでしょう。
万事休す、ですね……。
「…僕らは、全員殺されるんですか?」
「この状況を見て、貴様は生きて帰れるとでも思っているのか?」
「……いいえ。ただ…。」
「痛くはないぞ?一瞬で蜂の巣だ。ボンゴレ10代目と一緒にな。」
「……冥土の土産でいいので、一ついいですか?」
「言ってみろ。」
「僕に、沢田綱吉を殺させて下さい。」
「!」
「どういうつもりだ、骸!」
「……!」
「そのままの意味ですよ。獄寺隼人。僕の手で沢田綱吉を殺す、という事です。」
「テメェ、十代目を……!」
「唐突、なのな。」
「同じ事でしょう。どのみち僕らは蜂の巣です。誰が何をした所でどうせ結末は変わらない。ならば、僕が綱吉君を殺してもいいじゃありませんか。」
「…だからって!」
「……折角、綱吉君ってばこんなにも可愛らしいのに、蜂の巣じゃあんまりでしょう?僕ならば頭に一撃、上手に撃ちますよ。一発きりで、綺麗に殺してあげられます。これ以上傷を負う必要も無いでしょう?」
「………っ!」
「……。」
「…勝手にすれば。」
ゆっくりと、綱吉君を背中から降ろして、横転したトラックのあたりに背をもたせます。
そして、僕は拳銃を取り出す。
手持ちの拳銃から、残りの銃弾全てを冷たいアスファルトの上にぶちまけ、ポケットの奥から金色に煌めき輝く銃弾をとりだして、装填する。
黒服達は一瞬動揺するも、すぐに取り直して、指示を待つ。
「肝の座ったガキじゃねぇか。それとも、あまりの恐怖におかしくなっちまったのか?」
「あなたのお好きな解釈でどうぞ。」
「フン…。上等じゃねぇか、許可してやるよ。」
安全装置を外し
— 約束は果たせそうですよ、綱吉君。 —
ゆっくりと銃口を持ち上げ
— マフィアなんて、最低ですよね。争って、殺してばかり。 —
綱吉君の額へと狙いを定め
— まさか同じ意見を持ったのがボンゴレのボスだなんてね。更に酔狂にも"仲間"ときたものだ。 —
引き金に、指をかけて
— …また、逢えるでしょうか? —
徐々に、力を込める。
— また逢えたら…その時は、その時はまたー……! ー
「…ごめんなさい…。」
銃声。