最初に目に入ったのは白い天井。
ここはどこだ?
やわらかな陽が差し込んでいる。
窓の外に目を向けると真っ白だった。朝もやのようだ。

私は見た事のない機械がに取り囲まれて眠っていたようだった。
その機械達が一定の音をたてている。
よく見ると機械から幾本かコードが伸びていて、私の体に繋がっている。


…状況がつかめない。




首を回してあたりを見渡すと、ここにはいるはずのないアッシュとスマイルが寝息をたてているのが目に入った。

・・・とりあえず体を起こそうとして、全身に、激痛。









・・・・・・・・・全て思い出した。そうだ、私はあの時事故にあったのだ。

・・・すると、ここは病院?・・・・・

何だろう。何か、足りない・・・。何か・・・

・・・・・・子猫だ。

・・・子猫はここには居ないようだ。何処に行ったのだろう?




点滴だとか、体に繋がっている管達をとりあえずぶちっと引っこ抜く。
これだけ全身痛いのだ。その程度の痛みなど今更何でもない。

体が重い。思うように動かない。
そんな体を引きずるようにして窓から外を見る。





…この景色は!


ここはあの商店街の並びにある病院のようだ。
現在位置のつかめた私は窓を開ける。この高さならば2階くらいか?
足をかけて、飛び降りる。
翼を広げるが、どうやら折れているようで減速ぐらいにしか役に立たなかった。

着地したときに傷が開いてしまったかもしれない。
足下に紅い水たまり。



でもまぁ別に気にしないで、私は事故現場に向けて走り出した。






どんより曇った空の下
朝もやの中を
血を流しながら
よろよろと裸足で突っ走って行く
入院患者な吸血鬼。

今の私はさぞかし滑稽であろうな。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ユーリ、あんにゃろう、どこまでいったのサ!?


だんだん血の感覚は狭くなっているし、
あちこちに転んだり、膝をついた後があって
追っかけているボクは気が気じゃない。

血の匂いが濃くなってるから、近くに居るハズなんだけど。
あぁ、雨、今にも降ってきそう…!










ユーリが見つかったのは小雨が降り出した頃。
折れた電柱、穴が開いて傾いた建物。ここは事故現場だね。

ユーリは歩道脇の物陰に半分体を隠すように座っていた。
全身血と泥でべたべたになっている。
傷もかなり開いてるっぽい。
見てるこっちが痛い位に。
足の裏なんかもう赤一色だよ。まったく、裸足で外出たりするから!



「ユーリ。」



返事がない。





「僕だヨ、スマイル。心配したんだよ。」



ユーリは静かに振り返る。





「瀕死の私を、その身を呈して助けてくれた。
迫り来る亡者の中に突っ込んで、奴らの気をひいてくれた。
だから私は逃げ切れた。生きのびた…

・・・・すまない、
お前にはまだ、紹介していなかったな?

こいつ、は、
名前はないが、私の、大切、な、大切な友達、だ。」







ボクにはユーリの言葉の意味はよく分からなかったけれど、
その手の中にある、ぐちゃぐちゃになった肉塊がボクの友達を救った、っぽい事はなんとなく理解した。



雨が本降りになってきた。
ボクはどうする事もできずに、その場に突っ立っていた。