………どのくらい時間がたったのだろう?
この地下室でぼんやりと灯っていたランプも
もはや息も絶え絶えといったところだ。
俺はよろよろと立ち上がり、
部屋の扉に手をかける。
扉は簡単に開いた。
石組みの通路。
……変なの。俺の居た街じゃ見た事も無い造り……。
まるで、小さい頃に誰かに借りて、
母さんに読んでもらった
あのおとぎ話の絵本みたいな光景。
———俺は絵本の中に落ちてきたのか?
まさか。
そういえば、あの仮面の男も
というか、ああいった存在自体がまるでおとぎ話。
……そういえばあいつ、あの絵本の登場人物そっくりだったな。
笑いがこみ上げてくる。
なんだかおかしい!
「なんだ、随分と回復したみたいじゃないか。」
……あ、はちあわせた。
「……あ、あぁ……」
「腹が減っているだろう?あちらに食事があるぞ。口に合うかどうかは知らんが。」
その直後に俺の腹が盛大に鳴った。
………恥ずかしかったぞ。けっこう。
その部屋には一人分の食事が用意されていた。
白いパンとか、具のたくさん入ったスープ。
かりかりのベーコンにぷりぷりした卵。
そしてデザートに今にも果汁がしみだしてきそうなフルーツ達!
超御馳走じゃん!
金持ちとか権力者とかの食事じゃん!!
俺の普段の食事なんて
真っ黒くて固いパンが一個に
腐りかけの野菜と具なしのスープだけだぞ!
「本当に俺が食べていいのか!?」
「あぁ。好きなだけ食え。」
「本当に!?」
「…?……あぁ…変な奴。」
見ため通り!
まじでうまい!
「そういえば、あんたは食わないのか?」
「あぁ。もう済ませたからな。」
……そういえば、おとぎ話だったらこの後で
閉じ込められてヒドイ目にあわされたりするよな……
……まさか…な………
「あ…あのさぁ、お金とったりする?」
半分以上食った後で聞く事じゃあ無いよな……。
「この程度で金をとってどうする。」
「……あはは……。」