リング争奪戦のあったあの頃からもう10年が経った。
俺はイタリアに渡り、ボンゴレを継いだ。
皆もそう、俺についてイタリアに渡った。
あの頃はマフィアなんて!とか思ってたけれど、今はまんざらでもない。
そりゃまぁ、人殺しとか絡んで来たら……普通にしょっちゅうではあるけれどさ、嫌、だけど。
でも、ここでしか、この立場でしか出来ない事も沢山ある。
もう後には引けないし…っていうあきらめも、あるのかもしれないな。
執務室の、俺の机の上にある薄汚れた古い写真立て。入っている写真は、あの頃の守護者のみんな。
誰が見ているか分らないから、家族の写真を入れる事はできないけれど……これなら問題ないハズ。
だって…みんな居るもん。その辺に。
あ、そうそう。今夜は重要な会議があってリングを受け継ぐ守護者達を召集したんだっけ。
……と言っても「守護者」はヴァリアーと並ぶボス直属の部下の事だし、みんな何故か執務室や自室に勝手に入り浸っててくれるから、珍しい顔ぶれではないけど……まぁ、全員そろう、のはめずらしいかな?
俺が会議室に入り、着席する。皆ちゃんと居るみたい……だ?あれ?
「リボーンは居ないの?」
「リボーンさんはナポリの方に用があるそうで、出かけてます。」
「そっか。じゃあしょうがないね。はじめよう。」
「本日、皆を召集したのは……。」
会議は順調だった。うん、滞りない。
なんとなく皆の顔を眺めてみる余裕すらある。
なにげに、あの古い写真を思い出す。
みんな、変わったよな。なんて思ったり。
だってあの頃はみなさん、本当に、イロイロな意味でわかりやすくデンジャラスでデストロイだったから。
獄寺君は、ことあるごとにぶち切れてダイナマイトぶん投げてくれたけれど、今はあの頃の10分の1くらいだよね。キレるの。
まぁ、それも含めて随分我慢強くなったと思う。今じゃ名実共に立派な「右腕」だよ。
そして、計算、語学関係は俺、本当頭が上がらない。それらのすさまじい知識にはどれだけ助けられている事か。
リボーンに「ちったぁ見習え。」って言われるけれどさ、人には向き不向きってあるよね。まぁ、英語とイタリア語くらいは……最低限がんばるけれどもさ。
山本は、昔から考えると一番変わったんじゃないかな?
昔よりも目つきが鋭くなって、機転が利くようになった。
そして、あの頃からは考えられないくらい強くなった。多分、野球に回していたエネルギーを全てこちら側に回してくれたんだと思う。
今では、戦いの時、先陣を切って行く切り込み隊長だもんね。
山本を野球の世界に行かせてあげられなかった事は本当に残念だけれど……山本が居なかったら俺、すごく寂しくて、辛かったと思う。
大らかな性格やその場任せなトコロは相変わらずだけれど、山本らしいなぁ、と俺は思う。(口うるさく言うヒトはいっぱい居るけれどね。)
ランボは、一回ボヴィーノに帰って……それからちょくちょく此処に来るようになったけれど、7つになった頃を境に一気に変わったよね。(一体何があったんだろう?)
まぁ、昔程手がかからなくなって……嬉しいような寂しいような……。なんか複雑。これが親心…なのかな?
泣き虫なのは相変わらずだけれど。
どんなにキザなしゃべり方をしても「が・ま・ん」ってのは本当に変わらない。口癖なのかもね?
了平さんの、気にしない気にならない、とりあえず極限!な精神は変わらないよなぁ…。
でも了平さん、昔より格好良くなったよな。
昔はさ、むさくるしいイメージが強くて…俺同様、モテない部類の人だと思ってたけども……。
今は道行く人も振り返らずにはいられないだろうな。…本人は全く気づいてないと思うけれど。
中身は変わらない。としか言いようがない、気がする。
昔からすでに極限だものね。トレーニングが趣味な所も変わらないなぁ。
クロームは感情表現が豊かになった。
表情があんまり変わらないのは相変わらずだけど、纏う雰囲気でなんとなぁーくわかる。あぁ、うれしいんだな、とか落ち込んでるな、とか。その程度と言ってしまえば身もふたもないけれどね。
言葉もそう。確かに、普段は無口。かとおもえばたまに、暴走するかの如くたくさんしゃべる事がある。
いっぱい、一生懸命になって伝えようとしてくれる。昔じゃありえなかった……いや、あのころはまだ言葉にならなかったのかも?女の子って不思議だなぁ。
前までは、ここ男ばっかりだから、辛かったりしないかなぁ…とか思ってたけれど、自力でここボンゴレまで到達して来たハル(めちゃめちゃ驚いたよあのときは!)と仲良くやってるみたいで良かった、良かった。
あと、おいしいお店情報に詳しいみたい。
いろいろ連れてってもらったけれど……特にデザート関係の方面はすんごかった。絶品ばっかり!感謝だよねぇ。
骸も、表情が豊かになった。というか、ヴァリエーションが増えた……って感じかな?
もともとかなりの猫かぶりで、意図した表情を纏う事に関しては達人だったけれど、素面の表情はヴァリエーション、少なかったからね。
あと、昔からかなりの天邪鬼だと思ってたけれど、さらに磨きがかかった。
いまだに「貴方は僕の標的だ。」とか言ってるけれど、そのわりには何も動きないし。そのくせ、忠告、警告は非常に事細か。たまに獄寺君よりもうるさい位だし。なんかもう意地で言ってるんじゃないのかな、きっと。
んで、いちいち嫌味つけてくるのなー。ありとあらゆる国の言葉でね。おかげでスラングばかりおぼえちゃったよ。
ちなみに、究極はロシア語の文法で動詞はドイツ語、其れ以外はフランス語でペルシャ訛りってヤツ。
了平さんじゃ無いけれど、極限としか言いようがない。
一番変わらないのはきっと、ヒバリさんかな?
今も昔も変わらずに風紀委員(今は「元」)を引き連れて、気に食わない群れをかみ殺しているみたい。
この前は、パトロンになって欲しいとせがんで来たNY
系の結社をかみ殺したって聞いたな。まぁ、興味本位で結社からの手紙をみせてもらったけど……脅迫文だったから……かみ殺されてもしょうがないよね。
それ
にしても、勇気あるよね、その結社。ヒバリさんを脅迫するなんて。そっちの世界でも(いろんな意味で)有名人なのに。
そして、最強の名も変わらない。今のトンファーさばきを見ていると、昔は本当に基礎中心な動きだったんだなぁと思う。
今の緩急のついた、滑らかな動きは本当に読みにくい。
この人、本当に敵じゃなくって良かった。心の底からそう思う。
それにしても、夕食のお肉、美味しかったなぁ……。
そして、ナイスな気温………あぅ…寝ちゃダメ!
最近、大変だよなぁ。半端無く忙しいってゆーか…。睡眠時間足りないよ………、ホントに……。
そして、みんなあんまりモノを壊さないでよ…。トラブルも……起こさないでほしい…。
誰が後始末してると思ってるのさ……。仕事ふやさないで……………。
あ、でも…もーだめ。抵抗できない。暗くなっていk……………。
ゴスっ。
机に激突した。
「……十代目?」
あちゃー、やっちゃった。完全に寝てた。
これは……お説教覚悟かなぁ、てか…………うわぁぁぁぁ、みんなめっちゃ見てる!
「……ごめんなさい……。」
「食後っていいよなぁ〜。確かに眠くなるよなぁ……。」
頼む山本、そんなさわやかな、子供を見守るような目で見るな!
「いいご身分だね、呼び出しといて会議中に居眠り。」
雲雀さん、めっちゃ怖い。ごめんなさい。ごめんなさい。
「おい!十代目はお疲れなんだよ!」
あぁ獄寺君、かばってくれてちょっと嬉しい。あ、ダイナマイト出さないでくれたらもっと嬉しい。
「だからって、居眠りの理由にはなりませんけどね。」
そうだね骸。もっともだ。そしてこいつ、顔には出さないが腹の底で爆笑してやがる。
「俺も極限眠い!」
了平さん、それ、この場で炎をバックに背負っていうセリフじゃないよね。
「…えっと……わたしも、極限ねむい!」
クローム。その人のマネするのやめなさい。
「おなか…すきました……。」
ランボ…そうだね…………。
皆さんからのお小言、もっともです。居眠りした俺が悪かったんです。
でもさ、もともと君らが仕事増やすのも悪いんだよ。
獄寺君がキレなかったら、なんとなーく丸く収まった件がいったいくつあった事か。
山本、毎回刀ボロボロにしてくるけど、それ一本でいくらするか知ってる?
この前クロームがなんとなーく拾って来た汚いカギ。
あれって本当は某敵対ファミリーの金庫のカギだったなんてね。知るよしもないよね?悪気はないんだよね……?
ランボはいっつも厄介ごとひっつれてくるしね。
泣くしさ。もう15だぞお前!いいかげん泣くな!イーピンを見習え!楽々軒行って弟子にしてもらってこい!
了平さんは勝手にトレーニングに行ったきり迷子になって音信不通になったりするしさ!
一体どうやったらランニングで海を渡って秘境にまで行けるの!?
特別天然記念物を相手に勝負挑んでるヒマがあったら、NASAでそのうっかり怪奇現象を解明してもらえ!
そして骸!この野郎……!お前この前「マフィアだから。」とかいう理由で取引先半殺しにしてくれたよなぁ!
しかも!あとからクロームがおもむろにバラしてくれた本当の理由は「なんかムカついたから」だとぉ!
ふざけんな!あれもみ消すのにどんだけ大変だったか・・3日は完徹したんだぞ!その件だけで!
雲雀さんは機嫌悪いとなんかこう、あちこち破壊してくれるし!殺気まきちらすし!怖いし!補修費出せよ自分で!
本部と邸宅、よその建物、もうすぐ被害額が
億のそのまた上に到達ですよ!一人で!一ヶ月で!ギネス目指してんですか、あなたは!
そして、究極はアレだよね。某国の政府所有の建物を破壊してくれたヤツ。
あれは・・あの件だけでどんだ
け奔走した事か……。俺もう、死刑覚悟したんだぞ…?こんなに若いのに…!
ああああああああああああ!
なんか、なんだかすげー腹立つ!ってか、ここ最近の仕事の三分の二はこいつらのせいじゃないか!
俺、キミタチの尻拭いの為に奔走してボロボロになってるんだよ!?
こんな時…昔なら鬱憤たまった時どうしてたっけ?えーと、えーと……!
「………。」
どうしてたっけ…。
「綱吉?」
「おや、寝ぼけましたか?」
「……………。」
あぁ、そうだ。テレビゲームやってた。心の中でイロイロぼやきながら。
「ツナ〜?」
「?」
「…あのさ、この会議の目的は、敵対しているロヴェールファミリーに攻撃を仕掛けるための作戦の、最終確認だったよね?」
「あぁ、そうだぜ。」
「要は落ちりゃぁいいんだよね。ロヴェールが……。」
「ボス?」
「よし、決めた。獄寺君、いままで段取りとか細かい作戦とか考えてくれてたのにゴメン!大幅に変更する。」
「…十代目?」
「うん、きめた。これから俺、ゲームをしようと思うんだ。」
「沢田!極限訳わからんぞ!いきなりどうした!?」
「……綱吉君、寝ぼけましたか?これは作戦会議でしょう?遊んでていいんですか。」
「骸なんかじゃねぇスが、十代目本当にどうかなさいましたか?いきなり遊ぶだなんて……。」
「ゲームっつーと、小僧を入れれば9人だな。野球のチームが作れるなぁ〜。」
「山本の兄さん、1チームじゃ対戦出来ないですよ……。」
「……デスマッチが良いと思うよ?」
「わたし…オセロが好き……。」
「うーん、ヒバリさん惜しいね。ちょっと違う。」
「へ?ちょっと十代目!?」
「わお。キミがそういうの好きなんて初耳だね。」
「うん、俺も最近イロイロ鬱憤たまっててさ。きっと愉快にやれそうな気がする。
ルールを説明しよう。
会議の終了から24時間後に西の港集合。その後全員バラバラに別れて、ロヴェールの本拠地である孤島に上陸。上陸後は完全別行動ね。
そして、一番先に頭であるラヴァン・ロヴェールを獲ったヤツが勝ち。賞品は休暇一ヶ月。」
「応援はどうしますか、十代目?」
「沖に一応医療班を置いておくよ。」
「それだけっスか!?」
「うん。それだけ。おもしろそうでしょ?」
「綱吉君、ロヴェールは武器を豊富に扱っていると情報が入っています。それはさすがに無謀では?」
「でもさ骸、どこかの誰かさん達がこの本部でやってるみたく、破壊神よろしくデストロイに暴れて破壊しちゃうのが一番てっとり早いとは思わない?それに、聞くけど、今この部屋に銃弾ごときで死んでくれるような人、居る?」
「……僕が知る限りでは居ませんね。」
「でしょ!ならこれでイイじゃない!どうせ敵対勢力だし、いくら建物破壊してもOKだよ!」
「決まりだね。おもしろそうじゃない。ちなみに綱吉、"うっかり"守護者をかみ殺してもいいの…?」
「いいよ。本気で殺さないならね。気絶したらゲームオーバーだからそれ以上はダメ。忘れずに。」
「わお。綱吉にしてはいい返事だね。軽く覚えとくよ。」
「…ツナ?本当にいいのか?」
「うん、いいよ。だってきっと、主に被害こうむるのはその周辺だと思うし。」
「つまり、上陸したら自分以外は全て敵…ってことですか。おもしろいですね。受けて立ちましょう。」
「ドン・ボンゴレ……俺、生きて帰って来る自信がないのですが……。」
「なんだ、ランボは来ないのか?」
「俺はあいにく化け物でも悪魔でも鬼でもないので……。」
「何だか極限強そうだな!極限戦ってみたいぞ!」
「化け物も、鬼も悪魔も、居るなら会ってみたいものですねぇ。」
「そうだね。かみ殺してみたいね。」
「兄さんがた……。」
ランボ、お前の言いたい事はよくわかる。その人達は間違いなく化け物の部類だよ。
「さて、それじゃ24時間後にね!久々にあばれるぞ〜!」
「え……十代目も来るんスか!?」
「悪い?俺、賞品ほしいもん。休暇に餓えてるもん。」
「や、でも……危ないですよ?俺が勝ったら賞品譲りますから……。」
「わお。久しぶりに綱吉と闘れるんだ。」
「お手柔らかにおねがいしますね、ヒバリさん。」
「ツナも来るのか〜。楽しそうなのな〜。」
「でしょ!今回は好きなだけ暴れられるよ!」
「じ…じゅうだいめぇ……。」
「ボスのことは心配いらないよ。わたしが守るから。」
「そういう事言ってんじゃねえよっ!それに十代目を守るのは俺の役目だ!」
「ありがとうクローム。あ、そうそう。タッグは自由だから。」
「へぇ。クロームだっけ?キミ、南国果実のおまけして行くんじゃないんだ。」
「うん、骸様は大丈夫。多分乱闘すると思うから、わたしは邪魔になるだけ。」
「ふぅん……。」「クフフ……。」
「それに、うっかり骸様が死んじゃっても、ボスの鬱憤がちょっと晴れるだけだもの。別に問題ないよ。」
「…へ?…クローム、今、何て言いました?」
「あははははは!そりゃぁ傑作だね!いいよ!僕が綱吉の鬱憤を晴らしてあげる!任せてくれて大丈夫だからね!」
「うん、おねがい。ボスのためにも。」
「……骸、そんなに落ち込むなよ…。」
「綱吉君……!」
「そりゃまぁ、鬱憤も少しは晴れるけれど。」
「そんな、ヒドイですよ!…僕何か悪い事しましたか!?」
「少しは心当たって欲しかったよ……。」
「まぁいいや。そして、最後に立ってるのは僕だけで十分。みんなキレイにかみ殺してあげるよ。」
「そう簡単にはくたばらないのな〜。」
「雲雀……今度こそ…消す。果てろ。」
「まったく、血の気の多い人達ですねぇ。黙ってても、僕が全員消してあげますのに。"僕の"鬱憤晴らしの為に。クフフ……。」
「……さ…笹川の兄さん!組みましょう!俺、死にたくない!」
「うむ?極限いいぞ!目指すは頂点だ!」
「頂点なんかいいから守ってください、助けて下さい!」
「なに!?男ならば立つべきは頂点と決まっている!」
「せめて山本の兄さんについてくべきだった……。」
「もう遅いよ、ランボ。」
そして、24時間と3時間後、ドン・ロヴェールことラヴァン・ロヴェールを確保し戦場に立っていたのは、仕事に追われ休暇に餓え、そして守護者とは名ばかりのトラブルメーカー達に死ぬ気で怒りをぶつけたツナだった。
おわり☆
記念すべきリボーン初の小説がこれ。
セリフの多さが半端ないですね。後半の半分はセリフだと思うけどまぁ全部こんな感じでいくよ。うん。
今かいてる長編「沢田綱吉暗殺計画」の合間に息抜きに作ったのがこの物語のはじまり。
わーい短編って楽しいね!そしてまとまらないね!