「ツナ…君?」
「京子ちゃん…?」
足音の主は京子だった。
ツナは思わず固まる。
「どうしたの、京子ちゃん。こんなとこで。」
「ツナ君、そのカバンは?」
「あ、コレは山本の。忘れたらしくてさ。」
「そっか…。お礼を言わなきゃね。」
「お礼?」
「わたし、ツナ君と話したい事があって。」
「…へ?」
「それで、山本君に頼んだの。最初は獄寺君に頼もうと思ってたんだけど、花にやめとけって言われて…。」
京子は照れたように、赤い顔を少しうつむかせながら話しはじめる。
ここは校舎裏。こんな、卒業式のようなイべント時には誰も来ない。
つまり…2人っきり。
「おぉ、これはこれは。面白い物が見られそうですねぇ!」
「なにコレ。あれ綱吉でしょ?世紀の瞬間じゃない。あっちの女の子かわいいね。綱吉にはもったいなくない?」
「山本、何のつもりだ!」
「あーあ、結局止めらんなかったのな…。」
…なんて事はなかった。
ボイラー室の影からこっそりとのぞいているのは1人、2人、3人…計6人。
「あれ、何か増えてねーか?」
「そんな事ないですよ。獄寺さんは今日もクレイジーです。ハルには理解できそーにありませんですよぉ。」
「しかたないわ、ハルちゃん。」
「ホントに増えちゃったのな。」
「髑髏ちゃん幻術失敗ですか?ミステイクですかぁ?ハル達の事気付かれてるような気がします!」
「大丈夫よ。うまく近寄れてる。今は骸様が使ってる幻術の陰に隠れているわ。わたし達の事もボス達は気がついていないハズ。」
「そうですか。なら心配ないですね!ハル安心しましたですよ。」
「やれやれ、髑髏にハルさん。あなたたちまで来てしまったんですか?」
「そういう骸様だってのぞきに来てるじゃない。」
「うるさいよ。よく聞こえない。」
「京子ちゃん…話したい事って?」
「あ、うん…その…。」
「…。」
「えっとね…。ツナ君、わたしに言いたい事あるんじゃないのかな、って。」
「俺が、京子ちゃんに?」
「…うん。」
「ムキー!京子ちゃん、ツナさんに言わせるつもりですかぁ!?そんな幸せな事ぉ—!うらやましいじゃないですかぁ!この外道!」
「うるっせーんだよ、アホ女!」
「嫉妬に狂ったハルはアホじゃないですー!ただの鬼ですー!」
「だーから、黙れっての!」
「おや、髑髏?」
「…。」
「(なんだかどす黒いオーラが垂れ流されてます!下手に関わったら僕でも殺されそう!)」
「…あっと…。」
「ん…。言いたい事、あった?」
「いや、その…えっと…。なんというか…。」
「わたし、時間なら、いっぱい…ある、よ?」
「あ…うん…。俺も…って、違うよね。」
「そう、かな?」
「あは…はは…。」
「じれったいんですよー!とっとと言ってしまえ沢田綱吉!思いを告げてしまえー!口で言えないなら押し倒せ!」
「うるさいよパイナッポー!…でも確かに、じれったいのは認める。玉砕しちゃえばいいのに。」
「いや雲雀、ここはシアワセを願うべきだろー?仲間として。」
「僕がいつ群れたのさ。」
「まさに今…いやいやいつでもねーって!トンファーしまってくれって!お前はいつでも孤高の浮き雲だ!」
「わかってるならいい。」
「それにしても綱吉君もスミに置けないじゃないですか。あんな美人と。」
「笹川はウチの学校のアイドルだかんな。容姿的には十代目にもつりあうかもしれねぇ。容姿的には。」
「髑髏からですけど、話には聞いていました。あーあ、デレデレしちゃって。ほほえましーですね。うまく行って欲しいと思わなくもないですぅ。」
「…むくろさま。」
「はい、なんですか髑髏…」
「骸様、わたしの事応援してくれるって言ったわよね?」
「え、言いましたっけ…?」
「言ったわ。」
「うそぉ…って、いだだだだだだ!関節技はダメですってぇぇぇぇぇっ…!!」
「裏切り者。」
「いいよ、ナッポー2号。もっとやっちゃいなよ。僕が許可する。」
「…委員長さん、鬼ですぅ…。」
「…あのさ、京子ちゃん…?」
「なぁに?ツナ君…?」
「あのさ、えっとさ…?」
「うん…。」
「京子ちゃんはこれから、もっと大きな町の大学に、進学…するんだよね。」
「うん…。」
「俺はさ…イタリアに、行くんだ。」
「お兄ちゃんに聞いたよ。イタリアの大学に行くんだ、って…。」
「うん。そして、イタリアで就職しようかと思ってる。」
「え…。もう、並盛には帰ってこないの…?」
「たまには、帰る、と、思う、けど…。でも、なかなか帰れないと、思う。」
「ぁ…。」
「それでも、さ。」
「…。」
「それでも、あの…。」
「…。」
「えっと…あっと…その…。」
ツナは意を決したように顔を上げる。
ツナを見つめる京子と目が合う。
「その…それでも、そんなんでも、えっと、その…!」
「…。」
「俺と、」
「うん。」
「と……。」
「…。」
「と、友達で、いてくれる!!?」
ずるべしゃどがぁっ!
問7:これはなんの音でしょう。
答え:のぞいてた奴らがずっこける音。
「あ…あの根性なし!肝心な所が言えてないじゃないですか!」
「草食動物以下!いや虫以下だよ!それでも虫に失礼だ!」
「ツナ…。気持ちはわかるけどよぉ…。」
「十代目…。」
「ツナさん…。ハルは今、うれしいのか…これってどーなのか、ちょっと微妙な気持ちです…。」
「不思議ね。わたしもだわ」
「ツナ君…。」
「そのぅ、え、えっと、あの…何かその、アレなお願いなんだけど…!あの俺、みんなで居るのすげー楽しくて、それで、その、京子ちゃんともまた…!あの…なんかうまく言えてないね。でも、そんな感じ…。それだけ、だから!」
「あの、ツナ君…それ…だけ?」
「…!!」
「…。」
「………うん。それだけ、だよ。…俺から言えるのはね。」
「…そう。」
「綱吉ってば馬鹿じゃないの!?何となく言いづらくて最初にあー言ったってのならともかく、今またチャンスあったじゃない!」
「そーですよ!さっき告白したらイイ感じに行ったっぽい雰囲気あったじゃないですか!」
「だよね!君でもわかるのに綱吉ったらどんだけトロいのさ!トロい上にマヌケときたよ!度胸とか根性とかって、こーゆー時に使うものでしょ!?」
「ありえないです!どーせもう会う事も無いのなら言ってしまえば良いのに!トロマヌケ爆発頭!」
「だよね!ふざけてる!」
「マジありえないですよ!」
「…お前ら、なんか今日仲いいのな。」
「こいつとかい!?」
「そいつとですか!?」
「君の目は節穴なのかい?かみ殺すよ。」
「あなたの目腐ってるんじゃないですか!?刺し殺しますよ。」
「…俺が悪かったのな…。(なんか腑に落ちないのな!)」
「京子ちゃんには悪かったですけど、何か安心したですよ。」
「うん…。あと、邪魔なのはハルちゃんだけ…。」
「ふふふ…。髑髏ちゃん、ハルは簡単には諦めませんですよ?」
「うふふ…。」
「ふふふ…。」
「(十代目の身に危険が!だがここで何か言ったら俺も危険だ!)」