並盛のある場所にて。
黒い服に身を包んだ男が電話に向かい、言う。

「ボス、並盛に到着しました。手筈も整っています。ご指示を。」

こちらは薄暗い部屋、ボスと呼ばれた男が答える。

「決行のタイミングは任せる。人員は幾ら使ってもいい。確実に殺せ。」
「了解致しましたした。」
「ふふん、一番厄介なのが離れている今がチャンスだ。失敗は許されないぞ。いいな?」
「はい、分かりました。」
「では、成功を祈る……。」

そうして電話は切れた。

「いいか貴様等、失敗は許されない。確実に仕留めろとのお達しだ!
チャンスを逃すな。…なに、簡単だ。いかなボンゴレ10代目といえど所詮はまだお子様。しかも護衛のアルコヴァレーノは留守ときている。赤子の手をひねるようなものだろう…。
しかし、ウワサではかの暗殺部隊、ヴァリアーを倒したとも聞く。一応抜かるな…なぁに、眉唾だ。だがしかし万一に備えて、全員動けるようにしておけ!」
「さぁ行くぞ!ボンゴレ10代目、沢田綱吉を殺せ!」







 始動!ボンゴレ十代目"沢田綱吉"暗殺計画!










とある日の夕方。僕(六道骸)は並盛を適当に散策しています。

この間の戦い…沢田綱吉対ザンザスの、ボンゴレ十代目ボスの座を巡るボンゴレリング争奪戦は、沢田綱吉側の勝利として終わりました。
そして僕も「クローム髑髏」の存在を借りて沢田側に立って戦い、マフィアボンゴレの至宝、7つのボンゴレリングの一つ「霧」の名を冠したリングを受け取る事になりました。
その後、しばらくして僕は牢獄を出ます。理由は至極簡単で、ボンゴレ9世の金と権力の力です。解りやすくていいですね。
「沢田綱吉を裏切らない」事を条件に、僕は彼が成長し、イタリアに渡るまでの時間を自由を過ごす事を許されました。



そんな訳で、本日は並盛の地理把握と銘打って散歩してるんですよ。
この辺は人気が無くって良いですねぇ。日が沈むのがよく見えます。穏やかでキレイな風景、追われないって素晴らしいですね。クフフ。
そうしていたら、少し前方に見覚えのある、小柄な後ろ姿。

「…綱吉君?」

時刻は、もう黄昏時。
はて、買い物か何かかな?と目星をつけながら、折角なので驚かせてやろうと思い、駆け寄ろうとした時。





僕の脇を黒い車が走り抜けて…綱吉君の脇で止まりました。そこから思案する間もなく、綱吉君が取り囲まれ…ました。
悲鳴と、抵抗の様子から察するに知人ではなさそうです。


次期ボンゴレ10代目の拉致、あるいはは誘拐。
…有り得そーなお話ですね。というかそれ以外の状況こそ考えつかない…いや、あのアルコヴァレーノなら暇つぶしとか言いながらやりかねない?
とりあえず放っておく訳にもいかないので攻撃をかけます。
この状況ならば、多少派手に暴れても問題なさそうですし…ね?




愛用の呪具、三叉槍を出現させて黒服達に駆け寄り、上段に振りかぶって体重と遠心力を乗せてなぎ払う。道は……まだ開けないですね!
唐突な第三者の登場に黒服達は動揺しながらも、黒服達は慣らされた動きですぐに銃を構えてきます。
さすがに向こうもそれなりの人選をしているようですね。
すぐに体制を立て直して来ます。邪魔だ。
そんな中、隙間からちらりと見えたのは、ぐったりとした薄茶色の頭が黒い高級車に飲み込まれる所。

……間に合わない?……いや、まだ大丈夫!




すると、唐突に背後に気配。
後方には攻撃の入りの浅かった黒服が居ました。…抜かった!攻撃が間に合わない!

後頭部に衝撃。

意識が飛ぶ寸前に、ありったけの力で槍を……先端を投げる。
槍は、綱吉君と共にそそくさと共に車に乗り込んだ黒服の頬を掠めた、ように見えました。

僕  の   意識   は   こ こま  で    …… み  たい    で      す   。

















目が覚めるとベッドの上でした。此処は何処なのだろうとか頭を巡らせます。

「あ、起きたのな。んで…えっと、お前名前なんだっけ。獄寺覚えてる?」
「六道骸だ!テメェ山本、戦った相手の名前位覚えてろ!」
「お前って常に機嫌悪いよなー。怒鳴るよなー。…将来ハゲっぞ?」
「ああああああ!!ムカつく!なんでこんなのなんかがリングの守護者なんだぁぁぁぁ!」


なんだこの漫才。


「あのー……?」
「しょーがねーだろー?受け取っちまったし。」
「分ってんだよ!んなこたぁ!」
「もしもーし…?」
「しかしこのリング、キレイだよなぁ〜。」
「ふん!てめぇが守護者なんて聞いてあきれるぜ!……まぁ、十代目の右腕の座はぜってー譲らねぇからな!」
「がんばれ耳たぶ!」
「うるせぇ肩甲骨!」


……今、何かが僕の目の前で始まろうとしています。このまま見ていても面白そうですけど……。
まぁ、今はそうも言ってられませんよね。
とりあえず、手元に転がっていたボール……子供のおもちゃですかね?を手に取って、獄寺隼人にぶつけてみる、と。あ、顔面。


「てめぇ骸!何しやがる!」
「予想外なまでにクリーンヒットしましたね。びっくりです。」
「お前、上手だな〜「黙れ山本!」
「あ、ケンカする前に聞きたいんですけれど、ここどこですか?」
「聞きてぇのはこっちだ!骸、テメェは牢獄に居たんじゃねぇのかよ!なんであんなとこで倒れてたんだぁ!?」
「そーそー、びっくりしたんだぜー?」
「そんな日もありますよ。」
「質問に答えろよ!」
「此処はツナの部屋だぜ。」
「綱吉君の?」
「そ!お前が倒れてた場所から一番近かったからな。ツナもいちいち怒らないだ
ろーし。」
「あぁ、じゃあ今度会ったらお礼を言っとかないと。」
「十代目にマリアナ海溝より深ぁーい感謝をささげろ!んで質問に答え「あ、でもツナならもうすぐ帰ってくると思うぜ?「オイコラ山本マジ黙れ!」


千種じゃありませんが…めんどくさい……。


「僕がここに居るのはボンゴレ九世の金と権力のお陰ですよ。ところでアルコヴァレーノは居ないのですか?」
「ふーん…リボーンさんなら急用で昨日イタリアに飛んだらしい。」
「そういやいなかったなー、小僧。」


…綱吉君も厄介な時に居なくなってくれましたね…。


「そうだ!オイコラ骸!さっさと十代目のベッドから降りろ!」
「嫌です。」
「なっ!」
「僕は今、死ぬ気もびっくりなくらい眠たいのでこのままもう一眠りする事にします。それじゃおやすみなさい。」
「床で寝ろっ!」
「もう寝てっぞ。寝付きいいんだなー。」
「んなアホな!」









僕は意識を沈め、先程綱吉君を連れて行った連中を探します。
契約からまだそんなに時間は経っていない。すぐに見つかる筈…。


黒服の意識はすぐに見つかりました。誰かと話している最中みたいですね。
憑意弾を使った訳ではないので、体を支配する事まではできませんが“契約”からさほど時間が経ってはいませんので、集中して同調すれば盗み聞きくらいはできるかもしれません。



おや、ここはどこでしょう?並盛神社ですかね?


「きちんと始末して来たんだろうな?」
「…はい、明日を待たずに死ぬかと思います。」
「貴様、死体を確認してはいないのか。」
「重傷を負わせたまま、並盛山に放置してきました。こんな時間から山に入る奴など居ないでしょう。後は死をまつばかりです。」
「俺は殺してこいと言った筈だが。」
「…まだ、あの少年がボンゴレ十代目だと決まった訳では・・」
「情けのつもりか、はたまた狂気の沙汰か。」
「………。」
「確認する。俺は次期ボンゴレを殺して来るように言った筈だが。」
「………。」
「失敗は許されないと分かっての事か。」
「……了解しました。今すぐ息の根を止めに戻ります。」


男が綱吉君を殺す為に身を翻す。




銃声。



……!
撃たれた。



「総員、直ちに山に入りボンゴレ10代目にとどめを刺せ!」



その台詞を耳に、男は絶命した。

Cavolo!(畜生!)
あの男が綱吉君の所までいった辺りで憑意弾を使えば簡単に済んだのに!


ここから並盛山まで、徒歩で最低40分はかかる。
…でも…知ってしまった以上、後戻りはできない。九代目との……約束もありますしね…………。

悪態をつきながらも意識を引き上げる。
まったく!なんて手のかかるボスなんでしょう!