二日目 〜 Rondino 廻り始めた輪舞曲 〜

綱吉の執務室にて。


「あぁ、そうか…。ダメだったんだね。」

「俺とした事がぁ…。」
「ゴメンね、ツナヨシ君……。」
「……すまない……。」
「ごめんな、ツナ。」


「てめぇら四人もいて、なんてザマなんだよ!」
「ちょっと、獄寺君!」
「十代目、今度警備が要るときは、間違いなく俺を出させて下さい!もう、こんな奴らに任せておけません!」
「そーは言うけれどね、獄寺隼人。私達だってかぁーなぁーりぃー真面目に頑張ったのよ?」
「…奴は満月に吸い込まれるように消えて行った…。」
「ねぇレヴィ。それって、SILVERが特殊な能力の持ち主って事?」
「…わからない…。」
「まだ断言はできねぇぇ、姿を消すだけならかなり低級な幻術らしいからなぁ、術を込めた道具を裏で買った可能性もあるぜぇ。」
「そんな事できるんだ?」
「詳しい事は知らねぇが、昔、マーモンが言っていた気がするぜぇ?噂らしいがなぁ。」
「そっか。噂か…。でも、こっちにも呪われた虹の子供とか輪廻の果ての人とか帯電する牛男とか、常識が何なのかよく分からなくなるようなのが、わらわら居るから…なんか、素通りできない話だよね…。」
「確かに………。」




こんな話をしていると、おもむろに執務室の扉が開く。入って来たのは…。

「やぁ、綱吉。」
「ヒバリさん!」
「綱吉、取り込み中だった?」
「いや、もう終わりましたよ。みんな、もういいよ。ありがとう。あ、レヴィ、ザンザスには怒らないように俺から言っておくから…。」
「…面目ない。」
「ツナヨシ君のそう言う所、大好きよんv」
「……ルッスーリア、ありがとう…。」


そうして、ルッスーリア、レヴィアタン、スクアーロ、山本武は執務室を出る。










「ねぇ獄寺隼人、席を外してくれない?」
「……十代目、何かあったらお呼び下さい。」





眉間にしわを寄せた獄寺が部屋を出て行く。
これで、執務室には綱吉と雲雀だけになった。


「ヒバリさん…何かありましたか?」
「うん、まぁね。この前、内部で少し動きのおかしい連中が居たから、気になって少しちょっかい出してみたんだけど…、」
「どうでした?」
「そいつら、ロッソ・ファミリーの連中と繋がってるっぽい。証拠も出たよ、間違いない。まさか敵対ファミリーとグルなんてね。良くない事に大分大きく根を張ってるみたいだね。細かい事はまではわからなかったけれど。」
「ヒバリさんは、今の時点でそいつらがどのくらい根をはってると思いますか?」
「少しカンも入るけれど…幹部クラスの奴にも、うさんくさいのが何人かいる。それをふまえて予想すると…核になってるのは幹部クラスも含めて10人くらい、下はの30〜40人、それ以下は多分命令に従ってるだけ…かな?」
「うわー、最悪…。」
「一応、まだ予想の段階だけれどね。」
「薄々、ろくでもないのが居る気はしていたんだけれどなぁー…。こーゆー時に限ってリボーンは居ないし!クロームとハルにランボも、京子ちゃんもいないし……手勢の少ない時に…!あ、確かヒバリさんも日本に…。」
「うん、今日ここに寄ったのはちょっと小用があったから。用が済んだらすぐに日本に戻るから。」
「…最悪のタイミングだな…。」
「敵も時期を見てるんじゃないの?赤ん坊が居ない時をわざわざ狙っているのなら、それを知る事が出来る人物が敵にいる事が確実になるね。そして、赤ん坊が 帰ってくる前に何らかのアクションを仕掛けて来る、と、考えることも出来る。というか僕ならそうする。綱吉はどうする?何か行動するの?」


綱吉は溜め息をつきながらも、俯いていた顔を上げる。


「…手が無い訳じゃありません。それなりには打っています…。しかし、まだ時期じゃない。動く訳にはいかない。」
「そう。ならいいけれど。手遅れだった、なんて勘弁してよね。」
「…不吉な事言わないでくださいよぉ……。」


再び綱吉は大きな溜め息をつく。


「そうそう、僕がもって来たのは悪いニュースだけじゃないよ。いいニュースもある。」


ぽつりと雲雀が言う。


「ヒバリさん?」
「この前言ってた"アレ"。遂に完成したよ。」
「……っ本当ですか!?それはいいニュースだ!こっちには、いつ頃もってこられそうですか?」
「一週間後には日本の研究所から出せるみたい。すぐにほしい?」
「そりゃもう!今すぐにでも欲しいくらいですよ!」
「そう言うだろうと思って、手配しておいたよ。一週間後に本部の、キミの邸宅で、良いんでしょ?」
「ありがとうございます!あぁ、待ち遠しい!」
「随分な執着だね?」
「そりゃぁもう!完成をどれだけ待ち望んだことか!」
「そこまで喜んでもらえると、開発責任者の僕も嬉しいよ。」
「あ、そうだ。運搬についてですけれど、それについては後日でいいですか?。」
「すると、電話かメールになるよ?僕は最終チェックのために、この後急いで…三時間後にはイタリアを発つから。」
「わかりました。後日メールを送ります。」
「……綱吉。敵と味方の線引きがかなり曖昧になってる。簡単に人を信用しないで。」
「…分かりました。気をつけます…。」




扉のあたりまで歩いた所で、雲雀は振り返り、口を開く。


「…僕の事、疑わないんだね?」
「はい。仲間にまで裏切られたときは、おとなしく死ぬつもりですから。」
「へぇ、随分あっさりしてるじゃない。」
「こんな世界ですからね。信じるべき、命を預けられる人間は選んでいる、つもりです。」
「……君はマフィアなんかには向かない人間だよ。」
「はは、骸にも幾度となく同じ事言われました。」
「あのパイナップルと一緒にしないで。」
「…言うと思いましたよ……。」