ズガン!ドカン!
獄寺のボムと、タイミングをずらした綱吉の拳が骸(未来)を襲う。


「さすがのボンゴレも、片腕ではどうにもなりませんよね。」
「……俺だけならな。」


直後に、綺麗にツナと綱吉を外して、ボムが炸裂する。

「ちっ!ちょこまかしやがって!」
「へぇ、お上手じゃないですか。」
「るせぇ!」
「じゃぁ、こういうのは…どうですかっ!?」

綱吉の攻撃を避けた骸は、直後にスキの出来た綱吉の左足を思い切り蹴り上げる。

「十代目っ!」
「……っ!」
「痛いでしょう?…クフフ…これで先程までのようなフットワークが出来たら、誉めてさしあげますよ!」

骸があざ笑う。

目覚めたツナは、何かに驚いたような顔をしている。しかし、骸は気付かない。
綱吉も、その何かに気付いたようだが、顔にはださない。そして、もう一度拳を構え直す。
しかし、その顔は苦痛に歪んでいる。


「…へぇ?まだ頑張るんですか?」
「言った筈だ。貴様を野放しにしておく訳にはいかない。」
「昨今の政治家にも見習って欲しい態度と責任感ですねぇ。…ま、いつまでもつのか見物ですけれど。」
「長持ちする必要はないさ。」

綱吉は助走をつけ、骸に向けて正面から突っ込む。
骸は簡単に受け止める。その直後、死角からのボムが炸裂する。骸は綱吉を突き飛ばし、反動と合わせて後ろに飛ぶ。



「さっきから、似たような攻撃パターンですねぇ。簡単、ですよ?」
「戦闘に大切なのは、アクセント…ですよ!」

いつのまにか、後ろに回り込んだ中学生の骸が槍を構える。

「…この位置だと、確実に当たりますよね。」
「あら、どうしましょう?」

骸が攻撃を決めるその瞬間、骸(未来)の姿が消える。

「…!?」
「…あぁ怖かった。」

背後から声が聞こえる。

「なっ…!?」
「ダメですよ、自分の十八番を忘れたら。ねぇ?」

「…幻術かよ…っ!」
「むくろ、あぶないっ…!」

獄寺が顔をしかめ、ツナが叫ぶ。
骸が、余裕の表情でトドメの姿勢をとる。

「不思議ですよね、"自分で自分を殺す"なんて。なかなか出来ない体験です。」
「…僕を殺したらどうなるか、あなた…判ってるんですか?」
「……………さぁ?」






キィン!






金属が撃ち合う音が響く。

「……へぇ?良く防ぎましたね。」
「貴方が戸惑った一瞬、実は結構長かったんですよね!」
「でも、不意打ちが失敗した今、もうどうしようもないのでは?」



「…っ!」

綱吉が膝をつく。
腕から流れ出る血が地面を染める。

「十代目っ!」

「…。」

綱吉はもう限界のようだ。獄寺の呼びかけに答えるだけの余裕もなさそうである。


「さ、どうします?頼みの綱はもう、首の皮一枚ですよ?」
「…まさか。エストラーネオからの脱走に、ヴィンディチェからの、二回にわたる脱獄。…僕のあきらめの悪さは、貴方が一番良く分っているのでは?」


そう言い放つと中学生の骸は幻術を放つ。
一瞬にして、辺りは深い霧に包まれる。一瞬にして、そこら中に存在する"気配"を通り越し、存在感までが希薄になる。


「へぇ、すごいじゃないですか!僕の感覚をこんなにも鈍らせるなんて!…でも、逃がしてはあげませんよ?」
「…結構ですよ!」

中学生の骸が突撃を開始し、未来から来た骸がそれに対して防御の姿勢をとる。
槍と槍とがかち合うその瞬間に、爆発音。
あたりにはさらに煙が立ち上る。


突如、場を支配する空気が変わる。
一瞬にして、痛みに耐える希薄な気配が消え、かわりに、爆発的な殺気をともなう抜き身の刃のような気配が現れる。
しかし、それは一瞬であり、次の瞬間にはその気配は、完全に凪いだ。










そして、声が響き渡る。












「今度こそ死に晒せ、雲雀恭弥ァァァァァッ!!!」





絶叫ともとれるかけ声とともに高速で振り下ろされた、ありえない角度からの不意打ち。十分な威力を伴う疾風の一撃が空を切り裂く。
そしてふくれあがる、異質なまでの存在感!
ツナを抱えた骸は、反射的な防御と後ろへの跳躍でこの一撃を受け流し、距離をとる。しかし、受け流された攻撃は衝撃波を伴い、アスファルトを抉り粉塵を巻き上げる!



「何が起こった…!?」



幻影の霧が晴れはじめる。
霧の向こうにちらつく人影。
人影が先程の攻撃から体制を立て直すのが伺える。

再び人影の主が声を発する。



「クフフフ…さっきの一撃をかわすとは流石ですね、雲雀恭弥!だがしかぁーしっ!そのくらいでないと、葬りがいがないのです!本日曇天、湿度80%の不快 指数90%越え!湿っぽい!むしむしする、マジ不快!そんな最ッ低な本日を、たった今からこの僕がっ!わざわざこの手で!最ッ高の命日にしてさしあげます よっ!クハハハハハハ!」



高笑いを響かせる霧の向こうの人影は、夜色をした長い髪をなびかせて、Tシャツにジーンズとかいうやたらラフな格好をした未来の六道骸だった。
その足下に転がっているのはいわずもがな、ツナが拾ったランボの落とし物、十年バズーカ!




「もしかして骸、自分に向けて、十年バズーカぶっぱなしたの!?…他に考えられないし?…てことは、あのラフな格好した休日のお兄さん…10年後の骸ぉ—!?うそぉぉぉぉぉぉっ!」


ツナが状況を飲み込めずにおもむろにツッコむ。
ツナを抱えた骸はそのツッコミから全てを把握したようだ。


「…へぇ、あれが噂の10年バズーカ。ふん、今の己では敵わないと見て未来を喚んだ。…って所でしょうかね。」

ツナを抱えた骸は鼻で笑う。
喚び出された骸が抱えられたツナに気がつく。



「……あら?」
「………や、やぁ…骸…。」