「美味しかったですー!ごちそうさまでした、未来の綱吉君。」
いやいや、会計持ったの獄寺君だし…俺に言われても。」
「うぅ…三分の一くらい骸に食べられた気がする…。」
「過去の十代目、お可哀想に…。俺、何かおごりましょうか?」
「いや、それはいいよ…。てか、あ!そういえばこれからどうしたらいいんだろう…。」

「あ、言われてみれば…。ええと、君たちはこれから予定はあるの?」
「特にないですよ、僕は。綱吉君は何かあります?」
「俺も無いなぁ。しいて言えば、お昼ご飯がまだなくらい…でも、さっきパフェ食べたから…いっか。」
「それじゃあ、しばらく俺たちと一緒に居てくれる?俺たちの世界の骸に会った場合、君たちだけじゃ心許ないだろうし。」
「かまいませんけど…。」
「けど?」
「いえ、貴方達はいつまでこの時代に居られるんですか?長い事ここに居るられるって訳でもないのでしょう?」
「そうだねぇ。やっぱり、異界の人間が長く留まるのは良くないだろうね。骸も、どこで何してるか分らないけれど…過去の俺が目当てなら、きっとこの近所に居そうだし。」
「それならば、手っ取り早く綱吉君を囮にしちゃえば良いんじゃないですか?」
「てめぇ、軽々しくそーゆー事を言うな!」
「うーん、確かに骸の言うことは正論だよね。それが一番簡単。」
「綱吉君、死ぬ気丸とグローブ持ってますよね?」
「うん。……あ!!」
「どうかしました?」
「グローブ忘れた…!」








「それは良い事を聞きました。」




「…へ?」




そうして、一同の前方に、黒衣の(未来側の)六道骸が現れる。
咄嗟に綱吉(未来)は額とグローブにに炎を灯し、獄寺がダイナマイトを手に取る。


「…悪いが、お前を野放しにはできない。」
「おや。僕は追われるよりは追う方が好みなんですけれどねぇ。」
「けっ!その減らず口も、もう叩けなくしてやるよ!」
「できるものなら。」

そして、骸(未来)が地を蹴る。
合わせて、獄寺がダイナマイトをばらまこうとするが、直前で何かに気がついた骸(現代)が無理矢理静止をかける。

「何のつもりだ!」
「伏せなさい!」

突然の事に目を白黒させながらも、一同指示に従い、伏せる。
直後にそよ風。そして、耳をつんざくような爆音。
直後に粉塵が立ち上がる。


「…なんだ…!?」
「…あれは幻術の囮です。こちらがこの人数でアイツを探しているのに、のこのこ出てくるなんて変じゃないですか。僕らが囮に気を取られているスキに、背後からバズーカを撃ってきたんです。」
「…っ!」


「さすがに異界といえど、僕ですね。よく狙ったのに無傷だなんて。」



粉塵で周囲は視界が利かない。その中で、骸の声だけがやたらと響く。


「当たり前でしょう。自分の性格と行動パタ−ンくらいは熟知しているつもりですから。」
「クフフ…。しかし、やはり幼い。自分の事に気をとられすぎなのでは…?」
「…何が言いたい。」
「"沢田綱吉"がどこに居るか、そこから見えますか?」
「………!!」



「…っ!…十代目、ご無事ですか?」
「……。」
「…十代目!」
「……やられた。」
「腕…すぐに止血を!。」
「俺はの事はいい。それよりも…。」
「…?」




緩く風が吹き、粉塵による煙幕がが晴れて行く。
粉塵の向こうには、バズーカ砲と、ぐったりとしたツナを抱えた骸の姿が現れた。


「綱吉君!」

骸(現在)は驚愕に目を見開くと、再び槍を呼び出す。

「行っちゃダメだ!」

綱吉の静止も聞かず、骸は槍を構えて、地を蹴る。



「クフフ…本当に、幼い。」

骸(未来)はバズーカを近くに立てかけ、懐から手榴弾を取り出して片手でピンを抜き、骸(現在)達の方向へとばらまく。その後空いた手で拳銃を握り、連射。

「痛っ…!」
「…骸っ!」

骸(現在)はあちこちに小さな傷をこさえてはいるものの、何とか防御に成功したようだ。
そして、柔らかなそよ風が吹き、爆煙を薄くする。その向こうで骸が見たのは…再びバズーカを構え直して自分に照準を合わせた、もう一人の、自分。


「(…!この体制だと、防御ができないっ…!)」
「addio, Sé che è giovane con stupidità(さようなら、愚かな子供)」






骸が嗤う。
バズーカの引き金が引かれる。
骸がせめてもの抵抗と、目を閉じ歯を食いしばる。

しかし、バズーカの弾が骸に着弾する事はなかった。
骸は爆風で近くのコンクリート塀に叩き付けられながらも、生きていた。


「おや、一体どうやって避けたのでしょうね?」
「てめぇがヘタなんだよ!」

それを言ったのは、少し離れた所に居る獄寺隼人。隣では、無事な方の腕で拳銃を構える綱吉。
死ぬ気の炎がゆらめく。

「…成る程、小型のボムと銃弾で爆発のタイミングと軌道を変えた…ってところでしょうかね?まぁ、どのみちもう"そちら"の僕は使い物にならないでしょうけれど。」
「……。」
「片腕のボンゴレに、ボロボロの中学生。…これでもう、僕と戦えるのは貴方だけですよ?スモーキン・ボム?ま、援護に回られるとや厄介ですが…単体ならば恐るるに足らず、ですからねぇ…。」
「……っ!…うるせぇよっ……!」















「(痛い…。)」

向こうで未来人達の話し声が聞こえる。

「(綱吉君…まだ意識、ないんでしょうか…?)」
「(戻ってなかったら、いいな。無様な姿は見られたくないし、心配も、かけたくない、です。)」
「(いきなり突っ込むとか、自分はどこまで馬鹿なんでですか。返り討ちなんて、火を見るよりも明らかなのに。)」

声がする。
首は動かないので、眼球を動かして辺りを見る。
血を流す綱吉と、ボムを構える獄寺、そして、ツナを小脇に抱えたまま獄寺と戦う骸が見える。

「(…完全中距離型の獄寺隼人じゃ、それなりとはいえ、格闘のできる僕とじゃ相性が悪い。時間稼ぎ程度にしかならない、でしょうね。あちらの僕は完全にお荷物付きの状態で…幻術すら使っていない、どうみても遊んでいます…。)」
「(ダメだ…。もう、勝ち目が無い…。誰も、戦えない…っ!)」


向こうで戦っている骸の動きに変化が生じる。
おそらく、ツナの目が覚めたのだと思われる。

「(ここで僕らが負けたら…綱吉君、どうされちゃうんでしょう?)」
「(やっぱり、契約して人形にされちゃうんでしょうか?そういえば、過去の修正がどうのとか、言ってましたね…。でも、最終的に、用済みになったら…。)」


獄寺がもたなくなってきたのが見える。
傷を負った綱吉が手を貸しはじめたのも見える。
骸は、意にも介さず遊んでいるようだ。
ツナが「あぁぁぁぁぁーーーー!」とか「うぎゃぁぁぁーーー!」とか叫んでいるのも聞こえる。

「(死んで欲しくはない…です。できれば、痛い思いも、怖い思いも、してほしくはない、です。)」
「(もし、"あちら"の僕が現れた直後に逃げて、上手い事逃げられたら…何か、変わっていたの、かな?過去が変えられたら、いいのに。…ちょっと前までは Ifがどうのとか言っていたのが、そのまま現実になるなんて、ね…。Ifが未来で、未来がIfで…そうしたら未来もまたIfで…未来………未来?)」





「…過去には戻れないけれど……あるじゃないですか。未来人と、Ifと戦う方法っ…!」




骸は、軋む体を無理矢理に起こしはじめる。
動作を一つするたびに体に激痛が走る。

しかし、
その両目に灯るのはゆらめくような不屈の光。
口元に浮かべているのは、最高のイタズラを思いついた悪ガキの笑み。



「…反抗期をなめると、痛い目見ますよ!」



そして骸は、よろめきながらも歩き…走りだす。