近所の喫茶店、その席の一角にて。

「それじゃ、何注文しようか…俺は紅茶にしようかな。」
「俺はコーヒーで…あ…十代目、会計は俺が持ちますから!」
「僕チョコレートパフェがいいです!一番高いやつ!」
「てめぇ、ちょっとは自重しやがれ!」
「会計が自分もちじゃない時に遠慮する訳がないでしょう!それも、相手が幹部級のマフィアならばお金だってそれなりに持ってて当然!金持ちにはたかって良いのです!せっかくですから綱吉君もめいっぱい高いものを注文しなさい!」
「黙ってりゃ言いたい放題言いやがって…!」
「黙る方が悪いのです!…大の大人が中学生相手にムキになって、みっともないですよ?さぁ綱吉君、最高級に値の張る物を選びなさい!」
「…っんの野郎!十代目はいいんだよ!」
「あ…注文決まったけど、いい?」
「はい!何にします?」
「(…十年経っても、この変わり身は健在なんですか…。)」
「えと…!フルーツパフェ、おいしそうだなー…とか…。」
「フルーツパフェっすね?」
「お、俺も、一番高い奴!……いい?」
「了解っス!」

注文する獄寺を尻目に未来のツナは、この時代の自分はこれから、きっと少しずつ大胆かつわがままになっていくのだろうと、骸を見ながら考えていたりした。







「ところで、本題に入ってよろしいですか?何故、未来の僕がここ…貴方達にとっての"Ifの過去"で暴れているんです?それに、なんで綱吉君に対してすぐに襲って来たのか。」
「ん、あぁ…そうだね…。そっか、どこから話したらいいんだろう?」
「微妙っスよね…。」


そうごちていると、綱吉と獄寺の紅茶とコーヒーが運ばれて来た。
獄寺が綱吉に紅茶を渡した後、自分のコーヒーを手に取る。


「…あれ?」
「どうしました、綱吉君?」
「獄寺君のボンゴレリング…」
「リングがどうかしましたか?」
「うん…あれ……雷だ…?」
「嵐ではなく?」
「うん。」
「獄寺君はボンゴレ雷の守護者だけど、そっちでは違うの?てゆーか、その年じゃまだ、リングの事は知らないハズだけど…?」
「あ、こっちの獄寺君は、嵐のリングの保持者だよ。」
「まさか!しかし、リングを賭けた戦いは俺たちが高校の時に…」
「僕らこの前やりましたよね、綱吉君?」
「うん。大変だったよね…。」
「なんで骸が知ってんだよ!」
「だって、僕も戦いましたもん。ほら、霧のリング。」
「!!?」「!!」


「なんだか盛大に驚かれていますね。」
「うん、まぁ…無理ないんじゃない?だって、あっちの骸、アレだしさ。」
「まぁそうですけれど…あ、もしかして。」
「なぁに?」
「ひょっとして、"向こう側"と"こっち側"を分けたのって黒燿での戦いなんじゃないんですか?確か、綱吉君が僕に勝って、それから…」
「…え、勝ったんスか?骸に?」
「うん?勝ったよ。」
「超ギリギリでしたよね。まさに紙一重。」
「うん、死ぬかと思ったよ。てか死ぬ気だった。死ねる程の筋肉痛も味わった。」
「僕もまさかの予想外…どうしました、未来人?すっごく変なカオしてますよ。」
「道を分けたのは、そこか…。」
「「?」」
「俺たちはね、負けたんだよ。骸にさ。」
「うそ!」「まさか!」

「俺が力つきた後…リボーンがさ、時間を稼いでくれたおかげでボンゴレの援軍が来てさ。
六道骸、城島犬、柿本千種以外は無事に牢獄に戻したんだけど…彼らはあれから今までずっと逃げ続けてる。…あちこちのマフィアや、関連施設を破壊しながらね…。
その後、しばらく放っておいたんだけど…たまたまボンゴレの研究所、十年バ ズーカを元にしたタイムトラベルの研究をしてた棟の防犯カメラに姿が写ってるのを見つけてね。ほっとく訳にもいかなかったし、十年前のオトシマエもつけな きゃいけなかったからこうして追いかけて来たんだよ。
…過去を荒らされる訳にもいかなかったしね。…でもどうしてわざわざIfの過去に来たのかは分からない、なぁ。」








「…もし僕が黒燿での戦いに勝っていたなら、そういう未来が拓けていた訳だったんですね…。なんか、まざまざとIfを見せつけられた気分です。」
「そうだね…。本当に、何がどこで変わるかなんて分かんないもんだね。…骸はあっちの方がよかった?」
「さぁ…。黒燿での戦い以降は、基本的に僕に選択肢ありませんでしたから、なるようになったカンジの気持ちですけど…。でも、まだあちらの僕が瞳の呪いに毒されているなら、今の方が落ち着いてていいですね。あの黒いオーラは…結構苦しかったですから…。」
「そっか。俺は今の世界が結構好きだから、骸がそう言ってくれると、すごく嬉しいよ!」
「……!!!!!!」
「もしかして骸、照れてる?」
「そ、そ…そんな訳ないでしょう!馬鹿はおとなしく黙ってなさい!」
「やった、珍しいもの見ちゃったかもー!」
「まったくもう……!いいでしょ、別に!こっち見ないで下さい!」
「あはははは!」


中学生達の平和な丁々発止を、巨大マフィアのボスは静かに、複雑な面持ちで眺めていた。
沈黙する綱吉を不審に思ったのか、獄寺が小声で声をかける。


「十代目…?」
「……。」
「どうかしました…?」
「あのさ。」
「はい?」
「もし、もしも、十年前に俺たちが黒燿で勝っていたら、さ…」
「…過去は変わりません。彼らも言っていたでしょう?いっぱいいっぱいで、紙一重だった、と。俺たちだって頑張らなかった訳じゃない。特に、十代目は…。」
「……うん。知ってる。でも、楽しそうな彼らを見ているとさ…俺はあの時、もう一頑張り出来たんじゃないのか、そうしたら、あんな風に笑えたんじゃないか、って。どうにもならないって…ちゃんと、ちゃんと分かってるんだけど…。」
「…俺たちがこの未来を歩んだからこそ、彼らは平和な未来を歩めたんです、きっと。」
「そう、だよね…。きっと……。」












「フルーツパフェとチョコレートパフェお持ちしましたぁ。」

「あ、来ましたよ!」
「うわぁ、あんな大きなパフェ、食べた事ないかも!」
「素敵ですよね、会計が自分持ちじゃないってあたりが特に!自分でお金払うなら、絶ッッ対思いとどまっちゃいますもん!」
「だよね!あ、チョコレートのもおいしそう!一口ちょうだい!」
「嫌です!代わりに、僕が君のフルーツパフェをもらってあげますよ!」
「ぶー!骸のケチ!それじゃ俺もあげないから……あ!俺のさくらんぼぉ!」
「おいしいですぅー!!…とろくさい方が悪いんですよ!」
「ぶー!ひどい!俺だって!」
「あ!ヒドイ!それは反則です!パイナップル持って行かないで下さい!」
「悪いの骸だもん!」
「責任転嫁ですよ、それは!」

「…おいしそうだねぇ…。」
「…ですね…俺たちも頼みますか?」
「そうしよう。」