そんな訳で武道会の日です。
朝早く目が覚めた獄寺は、二度寝しました。

再び獄寺が目を覚ますと夜でした。
獄寺の部屋の天井に貼ってあるツナヨシ王子のゲッツポスターが妙に眩しいですが、夜です。

獄寺は考えます。
エントリーした猛者乙女の数は膨大でした。きっと決勝は今頃ではないのかと。
まだ間に合うのではないかと思いますが、今回は武道大会であり、武器の使用は禁止されています。
ダイナマイトに頼るモヤシっ子獄寺では分が悪いですね。
ついでに今日の天気は、晴れときどき白蘭とかいう不吉なものだったので遠出しなくて良かったかもしれません。


あきらめて星を見ようと、ハシゴを使って屋根に上ります。

すると流れ星が流れました。
獄寺は願います。
でも願いを言う前に流れます。お約束ですね。

獄寺が溜め息を吐くと、夜空を彩るひときわ大きな星からビームが飛んできて、獄寺に直撃し、獄寺を華麗に吹っ飛ばしました。屋根も一部壊れました。
舞い上がる煙の中には、よく見えませんが二つ程人影が視えます。




「な…何なんだ!?」

「ふっふっふ…なんだかんだと聞かれたら!」
「…答えてあげるが世の情け?」
「未来の破滅を防ぐため!」
「魔界のモスカを守る…ため?」
「愛と真実と約束を貫く!」
「ごめん正一セリフ忘れ…(ごにょごにょ)らぶりぃちゃーみぃな技術班。」
「入江正一!」
「ねぇ正一、もう名乗っていいの?」
「…。」
「…あ、そうだ台本見ていい?」

煙が晴れると、どんくさそうな眼鏡の男とKY臭のする金髪の作業着姿の男が現れました。

「……あーもう!調子狂うなぁスパナ!僕がどんだけ考えてこの台本作ったと思ってるのさ!」
「…寝っ転がってテレビ見ながらあれ使おうって…。」
「うるさい!」
「…正一、それは無茶だ。」



「…おい。」
完全に無視された獄寺がじとぉっと見ています。
しかし正一とスパナとかいう謎の連中は一向に気にせず宇宙船の前で言い合いを続けています。
頭にきた獄寺は2人を思い切りぶん殴りました。

「暴力反対だよ…。」
「豆腐の角より痛い…。」
「うるせぇ!勝手に体当たり決め込む方が悪いだろうが!」

「体当たり…あぁ、そうだった!」
「あぁ?」
「君、獄寺君だよね?」
「だったら何だってんだよ。」
「おめでとう!君は第59回ランキング星宝くじ一等当選者だ!」
「ハァ!?何だそれ、買った覚えなんかねーぞ!」
「そりゃぁそうさ!だってこれは我らがランキング星の偉大なる王子、フゥ太様がこの宇宙の全ての星に住む生物の名簿リストに向けて、三時のおやつを食べながら適当に投げたダーツが当たったら当選ってシステムなんだもん。」
「えらく無茶苦茶だなオイ!」
「ちなみにこのアイディアは日本全国ダーツの旅って番組からとっ(ゴスッ)」

余計な事を言いかけたスパナは正一のアッパーカット(つうこんのいちげき!)により沈黙した。

「じゃぁお前ら2人は…その当選を知らせにきたのか?」
「そう!あと賞品もさ!」
「賞品?」
「そう!どんな願いでもランキング星の技術力でもって力技で叶えちゃうって事さ!悪くない話だろう?」
「…だな。でも俺の願いは…。」
「無理かもしれないし無茶は聞けないけど、規則だし聞くだけ聞くから言ってみてよ!」
「おいそれマイナスの二乗になってるぞ。…まぁいいか。言うだけ言うが、俺の願いは今お城でやっている武道会で優勝したいってのが願いだ。どうだ?」
「ねぇスパナ聞いた?てか起きてるの、仕事中だよ?」
「へんじがないただのしかばねのようだ。」
「起きてるじゃん。仕事だよ!」
「ムムーンサササイドへよようこそ」
「何寝ぼけてるのさ!願い事だよ!」
「いのちをだいじに」
「こらいいかげんいしろスパナ!きみはほんとうにばかだな!」
「ウチは馬鹿じゃない。」
「よし起きたね。それじゃ願いを叶えよう!」




◆◆◆◆◆◆◆◆




こちらは、貧乏臭い屋根裏部屋ではなく豪勢で華麗なお城の前です。
普段は城門より奥は許可を得ないと立ち入り禁止ですが、今日は「天下一武道会」の垂れ幕とともに解放されています。出店も沢山出ていますね。
庭園と広場では、沢山の一般人が乙女達の武道会と見事な庭園を楽しんでいました。
その中で、わたあめ大好き山本は出店のフランクフルトにかぶりついていました。

そんな山本に駆け寄るのは。


「山本さぁ〜ん!」
「ハルじゃないか。試合お疲れさま。残念だったのな〜。」
「はいですよぅ!マーモンちゃんにしか勝てなかったのはとっても残念だったのですぅ。もっといけそうだったのに!」
「マーモンが、誰かが落とした小銭の音に反応した瞬間にバドミントンのラケットで吹っ飛ばしたのは見事だったぜ!」
「はいですよ!強欲もほどほどにですね☆…でも…次の試合で……うっうっ…!」
「泣くなよハル。あの気合いの入ったミニスカボディコンなレヴィは俺だって目玉がぽぽぽぽ〜んだったし。俺もあんなに見るに耐えないものは初めてだったのな!あの時の降参は正しかったぜ。」
「そういえば山本さんはどうしてエントリーしなかったんですか?」
「あぁ、エントリー場所探してたら、なぜかグランドラインまで行っちゃって結局タイムアウトだったのな〜。」


山本がそう言い終えた後に、「ピンポ〜ン」という音とともに放送が鳴り、野太く極限なピーカンボイスが響き渡ります。


「先程、天候の悪化により大量に降って来た百蘭により中断されていた極限準決勝の、内藤ロンシャンvsD・スペードだがな、2人ともなんとなくやる気をな くしたとかで2人とも極限に辞退だそうだ!こんな熱い準決勝を棄権するなど、スポーツマンシップが欠けているにも程がある!ちょっと喝をいれてやらね b…」
「ちょっと、お兄ちゃんそのくらいにしないと!」
「うるさい京子!これを熱くならずして何を」
「えっとあのね、だから次の準決勝だった組が繰り上がって事実上の決勝戦になるよ!」
「こら京子はなせ俺に語らせ」
「見たい人は急いでリングの周りにね!」


「はひー、片付いたんですねぇ、あの大量の白蘭。」
「本当なのな!"びゃくらんらーーーーん!"って、降って来たちっこい白蘭達が会場中跳ね回って大変だったのな!清掃員のランチアさん、頑張ったんだろうな。また胃を壊していないといいけど。」
「ハル的にはあれの親玉百蘭を一度は見てみたいものですぅ。」
「親玉百蘭の推定遭遇確率は200分の1だってよ!」
「げ!それ確かACのCMでただいマンボウが出現するのと同じレベルじゃないですか!」
「うん、でも遭遇するとウィンクで山とか町とか破壊される事も多いから…」
「どんだけでかいんでしょーね!」
「あ、そろそろ行かねぇと決勝戦始まっちまう!」




◆◆◆◆◆◆◆◆




んでもってここは決勝トーナメントのの行われる会場です。

貴賓席で居眠りをしていたツナヨシ王子は、付き人のリボ子によるバチコーン☆なウィンクで目を覚ましていました。


「ねぇリボーン、決勝戦はじまった?」
「リボーン?誰それ私はリボコよ。んでもってこれからよ。馬鹿な子ね。(ムシャムシャ)」
「誰なんだろう決勝戦…ってゆーか準決勝終ってたの?」
「内藤ロンシャンとD・スペードが棄権したから、その次の組が繰り上がりで決勝よ。流れ的に当然じゃない。(ムシャムシャ)」
「あぁ、ロンシャンが嘆き弾を撃とうとしたら詰まって、カチカチしてたら暴発して3発程…」
「そうよ。それでロンシャンの他に流れ弾でD・スペードとついでにツナにも当たったのよ。不憫ね。(ムシャムシャ)」
「そうか!それで俺パンツ一丁に…!」
「パンツ一丁の貴方を見かねて、貴賓席からガウンを渡してくれたユニに感謝するのよ。まったく貧相な体なんだから。(ムシャムシャ)」
「は、はずかしい〜!」
「その後大量の白蘭が降って来たから試合を延期していたの。最低だったわ。(ムシャムシャ)」
「ちなみに決勝って…?」
「雲雀恭弥vs六道骸よ。そんな事も知らないのね(ムシャムシャ)」
「…へー、あの騒がしい家の…。」
「そうよ。でもこの大会は飛び入り参加歓迎だからどうなるかしらね。(ムシャムシャ)」
「飛び入り歓迎なんだ。初めて知ったよ。」
「だってその方が絶対に面白いじゃないの。そんな事もわからないのね。(ムシャムシャ)」



そしてこちらはリングの上です。
やたら長いスカートのセーラー服姿の雲雀と、旧ナチススタイルの軍服にミニスカートを組み合わせた姿の骸が、氷の視線をぶつけ合いながら睨み合っていました。

「うわ、コスプレは好かないよ。鬱陶しいから消えてよ。」
「それあなたが言うんですか?あなたもいい勝負でしょう。」
「君と一緒にしないでよ。僕のが正統派なんだから。」
「クフフ、正当?そんなのどうでもいいじゃないですか。僕が良ければそれで良し。」
「ふーん、でもまぁ、僕的には戦えればそれでいいんだけど。くたばれ六道骸。君なんかに武器はいらない。持ち込み禁止でも問題ないね。」
「同感ですね。僕の拳が汚れるのは嫌ですが!」


そう言って雲雀と骸はしなやかに拳を構えます。



レフェリーが戦闘開始の声をかけるのと同時に、その拳が放たれました。
拳が交錯するその瞬間の事です。



「ぶるぅぁぁぁぁぁぁ!」


何か人のようなものが飛んできて2人の間に割って入り、二つ分の本気モードな拳を受けました。顔面にモロに喰らいました。痛そうですね。



「ぶ…ふぉぁ…あ……」

「…なにこれ。」
「…さぁ…あ、でも見た事のある銀髪ですね。」
「そうだね…」


「…いてててて…俺は武道会に行きたいとは言ったが…正一とスパナとか言ったな…覚えていやがれ…!」


その言葉を最後に、いきなりふっ飛んできた銀髪の持ち主は気絶しました。
その人物の顔は、先程の雲雀と骸のクロス攻撃によってその顔は無惨かつ残念に歪んでしまっていました。
見覚えはあるがよくわからないくらい顔が歪んでしまったその人物に、雲雀と骸は戸惑うばかりです。

「この人、心なしか獄寺隼人に似ているね。」
「そうですね。仮に五話寺としておきましょう。」
「いいねそれ。そんな感じだ。」



今リングの上空に停止している宇宙船では正一とスパナが会話しています。

「やぁやぁ、上手く行ったねスパナ!」
「こんな伝統ある方法を使って、失敗するほうがおかしい。」
「そうだね、やっぱり大砲に詰めて吹っ飛ばすのは古典的だったかもねぇ。そこは失敗だったかな?」
「いや、マリオやカービィも通った正当な道を歩めた幸福の方が上だとウチは思う。」
「あはは、その通りだよね〜!あれ、なんかエンジンから変な音がしない?これって…」
「お約束の流れだ。」



チッ……チッ……チッ……どっか〜〜〜〜〜ん!


「やな感じぃぃぃぃーっ!」
「…ざむ・でぃん………」

きらーん☆


宇宙船は派手に爆発して、ランキング星から来た技術者は星になりました。
それで、爆発した宇宙船は庭園の片隅に落下してしまいました。


乙女による天下一武道会の観客達は飛んできた五話寺よりもそっちに皆興味を示し、そして誰もいなくなりました。


「ねぇ雲雀恭弥。」
「どうしたの六道骸。」
「見たくないですか宇宙船。」
「見たいよねやっぱり。」
「未知との遭遇かもですよ。」
「E.T.いるかな。」
「もしかするとフォースの力を感じられるかもしれませんね。」
「これはもう行くっきゃないね。」


そして2人とも宇宙船見たさに棄権してしまいました。お子様ですね。
こうして繰り上がる事で、五話寺は無事に優勝しました。