それから一週間経ちました。
町にはある噂が流れています。
なんでもその噂とは、王宮のツナヨシ王子が先日の武道会に出場した乙女を、尋ねて回っていると言うものでした。


「ねぇ山本さん聞きました?あの噂!」
「あぁ聞いたぜ!俺も出場したかったのな。こうなるとがぜん惜しくなるってもんだぁ。腹も減って来たし!あぁ玉の輿、くいもの〜!」
「おい山本、それは王子に失礼だろうが!」


いつもの如く山本とハルと獄寺の三馬鹿…いえいえい仲良しトリオが話しています。


「なぁ獄寺、おまえは観戦に来なかったのな。」
「そうですよ〜。ハルの勇士を見せたかったのですよ!」
「ちげぇよ!参加したさ、しかも優勝だ!」
「はひ!優勝は五話寺さん(仮)です!名前が似ていても嘘はいけませんですよ!」
「そうだぜ、あの顔面崩壊は見事だったのな!」
「ぐぬぬ…!」


そうです、獄寺が優勝したという事実は、謎の宇宙船墜落事件の影に隠れて忘れられていたのです。
翌日の新聞にも、宇宙船の事ばかりで武道会のことは一言もありませんでした。
小さく掲載された記事も、行方不明だったランボの角が見つかってよかったねという記事で埋まっていました。
だから、武道会ネタは宇宙船の話題に飽きた人々の格好の噂となっているのです。


「アホ女の家にも来たのか?王子様。」
「ハルはアホじゃないです!…来ましたですよ、ツナヨシ王子、とっても素敵でしたぁ〜!」
「へぇ、いいなぁ。どんな事話したんだ?」
「えっと…何か人探しみたいでしたよ。」
「人探し?」
「はいですよ。武道会の優勝者に賞品を渡したいんだって言ってました。」
「なるほどー!」
「あぁ?王子が直々にだと?なんでわざわざ…」
「あぁ獄寺、優勝者の特典なんだよ。賞品は直々に王子から手渡されるのは!」
「そして、事前の噂によればその時プロポーズもうけられるって…あうぅ〜、ロマンですよぅ!」
「どうしたんだ獄寺、すげぇニヨニヨしてるのな…!」



そんな事を話していると、にわかに周囲が騒がしくなって来ました。
どうやら王子が現れたようです。
三人が騒ぎの方へ向かうと、そこは…


「獄寺の家じゃん!」
「王子様がいますですよ!ツナヨシ王子素敵です…ハル、胸きゅんメロきゅんラブどっきゅんですよぅ…!」
「とりあえず行ってみるか…!」


三人が人込みをかき分けて進むと、リボ子を伴ったツナヨシ王子が、ビアンキと話していました。
傍らには、それぞれ別のアリの巣に運ばれて行くトンボとセミを眺める雲雀と骸もいます。


「あぁリボーン!いえリボ子お姉様!お慕い申し上げてますわ!」
「よぉビアンキ。今日もお前は無敵だな。」
「あぁんもう、リボ子お姉様…好き!」

「なんなんだ…!?」


獄寺がぼそっと呟きます。
すると、それに気がついたツナヨシ王子が獄寺の方を向きます。


「あれ、君は武道会に参加していた子だっけ。」
「え、あ、いや…!」
「違うの?」
「あー、何と言いますか、そのー、」
「あのね、知ってるかもしれないけど俺、武道会の優勝者を探しているの。…君、知らない?」
「あ、俺…!」
「もし見つからなかったら、繰り上げでここに居る準優勝者の2人が繰り上げて優勝って事になるんだけど…。あ、賞品もちゃんとあるんだよ。」


後ろの方でハルが小さく「(お城でプロポーズ!)」と叫んだような気がしましたが山本の頭には今日の晩ご飯の事しかありません。


賞品と言う言葉に反応して、アリの巣を見ていた雲雀と骸が顔を上げます。


「そういえば賞品って何だっけ。」
「噂はいろいろありますよね。」
「戦えればそれでいいとしか考えてなかったな。」
「僕は賞品目当てですけど。」



ツナヨシ王子は溜め息をつく。

「ここが最後の家だったんだけど、見つからないならしょうがないかな…」

骸は端から見ていてわかる程顔を輝かせ、雲雀は首を傾げています。


「えっと、優勝者に俺から賞品を…」
「俺っス!優勝者!」

「「「 えっ? 」」」


場が凍り付きます。

「ちょっと獄寺隼人、君参加してないでしょ。」
「そうですよ、武道会の日、あなたはずっと家で寝ていたじゃありませんか。」
「うるせー、最後に飛び入りしたんだよ!」


その瞬間2人の脳裏に、顔面崩壊した五話寺が浮かびます。

「あの顔面崩壊さんが君だって言うの?証拠はあるのかい?」
「うっ…!」
「それに、貴方はエントリーしていなかったでしょう。トーナメント表に名前がありませんでしたし。」
「ぐっ…!」


獄寺は言葉を詰まらせます。2人が言う事は最もですものね。
その言葉に対して口を開いたのはツナヨシ王子でした。


「いや、彼は本物だよ。俺の超直感がそう告げているんだから間違いない。あの武道会も実は飛び込み参加おっけーだったし。」


ツナヨシ王子の言葉に、雲雀と骸の目は点になります。
かわりに獄寺はきらりんこ☆と顔を輝かせて王子に詰め寄ります。


「王子…!俺…!」
「ねぇ君の名前はなぁに?」
「俺、獄寺隼人といいます!」
「そっか。じゃぁ獄寺君って呼んでいい?」
「はい、よろこんで!」


そしてリボ子もこちらに向けて歩いて来る。


「お前があの日スッ飛んできたんだな。」
「はい、そうです!」
「じゃぁ…」


そうしてリボ子はハンドバッグから何やら紙を取り出して読み上げる。


「天下一武道会優勝者である獄寺隼人に…庭園と戦闘フィールドの修理費の支払いを命じるんだぞ!」
「…え?」


ぽかんとする獄寺に、ツナヨシ王子が追加説明をします。


「いやぁ、見つかってよかったぁ!ほら、あの日墜落した宇宙船に『獄寺隼人当選』って書いてあったからさ、君に請求すれば問題ないって事になったんだ。墜 落した後の庭園の被害も結構だったし、キミが飛んできたせいでフィールドも壊れちゃったしね!お城の財政も大変だし、君が見つかって本当によかったよ!」


「あ…あの…。」


「あ、賞品だったね!賞品もちゃんと持って来たよっ!…はい、うまい棒(サラミ味)詰め合わせ!それと賞金だった500万リボーンだけど、そっちは君の借金から天引きしておいたからね!」



そして賞品と請求書を渡し、支払い期限について適当に話した後、ツナヨシ王子とリボコは帰って行きました。





あぁ、いつのまにかもう夕暮れ時です。
カラスが鳴いていますね。
雲雀は石を投げてカラスを撃ち落として遊んでいます。
ビアンキは去って行く王子とリボコをいつまでも見送らずに、すぐに王子抹殺の為のポイズンクッキングの制作に取りかかりました。
骸はうらめしそうに、獄寺のうまい棒(サラミ味)を凝視しています。よっぽど食べたいのでしょう。


そんな所に残った獄寺は、

「…ランキング星の馬鹿ぁぁぁぁ!技術者なんか嫌いだぁぁぁぁっっっっっ!」
とかなんとか叫んでいました。



おわりんこ☆


お疲れさまでした。6ツ目の長編っぽい小説です。
洞窟大作戦!とメドゥサアイの、貼りすぎた伏線をどうにかしようとして
考えてたら頭がぽぽぽぽーんになって、気休めに書いた物語です。
濃すぎるネタばっかりだったけど、ここまで読んでくれた人マジありがとウサギ!

いやぁ、獄寺くん不憫だね!10代目パーティの不憫キャラは獄寺で固定でいいと思うよ!
初代パーティ不憫は…うん、スペード様でいいと思う…。

それと、久しぶりにリボーン通し読みしたけど、白蘭サン本当に無茶苦茶ね!
そんな無茶ぶり大好きよ!
あと骸も本当に無茶苦茶ね!チートだね!レアキャラだから許される無茶だよね!
白蘭vs骸見てたら、RPGでザコ戦すっとばしてボスに挑んでGAME OVERになったの思い出したよ!

そうそう、本誌見た後に、未来から〜読み返して…ハハッwwってなったのは秘密だ。