「うまかったのなー、魚の肉!」
「うん、見た目はグロテスクだったけどおいしかったよね!」
「極限な見た目に惑わされてはいけないという事だな!」
「つーか、アレを食べるって発想まずがねーよ。」
「そこはハルも同意しますですよ…。というか、お腹を壊さない事を望みます…。」
「大丈夫ですよ。起こしても脱水症状です。」
「後発型の毒持ちだったらアウトだけどね。」
「(この人達には食べないっていう選択肢がないんだわ…。)」



彼らは今、地底湖の空洞脇にあった大岩の裂け目から連なる道を歩いている。
地底湖のほとりでの食事中に、了平とランボが見つけたのだ。
とりあえず、当面行くあてのない彼らはその道を突き進む。


道は静かに下る。
先頭を切る山本としんがりの了平の手には、流木にたき火の炎を移したたいまつが握られている。




「どうーでもいいですけど、この道の先がガスってて一酸化炭素中毒とか硫化ガスでの中毒って怖いですよねー…。ずっと下りだし。」
「こ、怖い事言うなよ骸!」
「ありえるよ。この下った先が行き止まりのガス溜りじゃないって保証もない。」
「やめってってば!ヒバリさんも怖い事は言わないで!」
「そんな事言われたって、僕は可能性を言ったまでですよ。綱吉君の腕のアザだって着実に進化していますしね。」
「え、マジで?…って、い、い、いやぁぁぁぁぁ!…蝶々が蜘蛛みたいになってる!」
「…流砂かな。」
「たぶんね。」
「そういう骸のアザも手首までがじがじに伸びてる…!」
「アヒルなんか首一週してますよ。」
「え…うわぁぁぁぁぁ!」
「そんなに怖がる事ないでしょ、もげる訳でもないし。」
「やめて!もげるとか言わないで!」
「あるかもしれませんよ?紋様を放置していたら内側まで浸食して来て、腐ってぼとり…とかね。」
「いやぁぁぁぁ!」
「それならそこのパイナポーの方が早そうだよね。首よりも手首の方が円周小さいんだし。腐って甘い匂いとかするかもよ?香水要らずだよね、超便利。虫だっ て喜ぶ。」
「いやぁーー!!」
「首よりはマシでしょう。蛆がわいたらぼとぼと落ちて体に張り付いてくるかも。」
「ひぎぃぃぃぃぃ!なんか痒くなってきたぁぁぁ!」
「うーん、確かにそれは嫌だね。でも手首だと白い蛆がもしゃもしゃしてるのがダイレクトに見えるんじゃない?首だと見えない分まだいいような気もする。」
「あああああああああああああ!」
「あぁ、なるほど。確かに、自分の手首にびっしりくっついた蛆は見たくないですねー。」
「ぁぁぁぁぁ…。」
「なーお前ら。」
「どうしたのさ山本武?」
「ツナいじめるのも程々にしとけよ?」
「あなたに指図されたくないですね。」
「でもよー…。もうツナ、目の焦点が合ってないまま歩いてるぜ?足取りもふらふらしてるし…。」
「別にありえるかもしれない話じゃないですかー。」
「そうだよ。それに、超おもしろかったし。」
「ねー。」
「ねー。」
「こーいう時だけ仲いいよなお前ら…。」

彼らは気づいていない。
そのすぐ後ろを歩いていた獄寺とハルの顔も真っ青になっていた事に。








さらに少し歩いて、ツナ、ハル、獄寺が少し正気を取り戻した頃に。
先頭を歩いていた山本が言った。


「おい、キノコだ!」
「…は?」
「山本、どうかしたの?」

山本に続くツナ、獄寺。そこに山本がさらに続けたのは「だからキノコだ」という一言。
「それがどういう事か聞いてるんじゃない。」と詰め寄る雲雀。ランボも「なになにー?」と山本の居る辺りまで来てみる。

「くぴゃ…。」
「キノコだ…。」
「だろ?」

不思議に思った残りも詰め寄る。
そして

「「「「「キノコだ…。」」」」」

今、常にバラバラな彼らの心が珍しく一つになった。







ここで洞の道は終わっていた。
目の前にはまた、地底湖にも負けないほどの大きな空間が広がっている。
そこには先頭を歩く山本の数倍くらいはある、色とりどりの巨大なキノコが所狭しと立ち並び、きらきらと光る胞子をばらまいていた。


「キノコの傘、光ってるわ。とてもきれい。」
「ですね。とってもキレイですぅ!ベリーファンタスティックですよーっ!」
「すごいな。たいまつ要らないんじゃないか?」
「そうですね。飛んでいる胞子に引火したりしても嫌ですし、一旦消した方が良さそうです。」
「極限に理解したぞ!」

そうしてたいまつは胞子の小山につっ込んで消火された。
彼らは巨大キノコの合間を縫って歩きはじめる。



「しかし…本当スゲーのな。こんなの、ゲームの中だけかと思ってた!」
「あぁ…でもよ、胞子がうぜぇ。たいまつあった方がよかったんじゃねーか?」
「でも、場所によっては引火しそうですよ。こんなところで火事ったら、僕らまとめて薫製ですよ。」
「わお、薫製は好きだよ。」
「僕マジであなた嫌いです。」


こんな会話をする一同のすぐ後ろで目を光らせる何かに、彼らはまだ気がついていない。
カンに従うように振り向いたツナが見たのは…

「ぎゃひぃぃぃ!」
「ツナ!」
「どうなされました、十代目!」
「誰でもいい、助けて!」


ツナはいきなり走り出す。何かから逃げているようだ。


「…はひ?何も居ないですよ?」
「いるよ!わかんないの!?」
「僕はわかんないです。」
「あ、今…」


「ねぇ綱吉。…もしかして、蛾?」


雲雀の言葉に頷くツナ。見れば走り回るツナの後ろを一匹の小さな蛾が追いかけているように見える。

「うわぁぁぁぁ!まだ来てるぅ!やだ、やだやだやだぁ!」
「ツナこっち来いよ。ほら、あっちいけって!シッシッ!」
「いなくなった?」
「あぁ、向こうに行ったぜ。」
「よかった〜。」
「そういや蛾、多いっスね。」
「そうだよね!だからもう、俺ここ入ってから怖くて怖くて。あぁ〜、ジンマシン出そう!」
「奇遇ですね、ハルもです!蛾って超キモチワルイですもんね、ヘイトなのですよっ!」




ずざざざざざざざざざっ!



どうでもいい話を続ける一行の後ろ。突然何かがすごいスピードで突っ込んでくる!
光る目玉。ほとばしる殺気。
気のついた者は周囲の者を捕まえて、一瞬で左右に退避する。
そこに突っ込んで来たのは…


「な…何だ!」
「でけーのな!」
「はひぃぃぃぃ!」
「あ!ランボさんコレ知ってるよ!」
「やだ!言うなよランボ!俺は認めないからな!」
「あ、もしかしてもしかしてツナ怖いの〜?」
「怖くない…ワケないだろ!こんな、こんな…こんな超巨大な蛾!」


そうである。彼らの後ろから出て来たのは10m近くはあるかもしれない巨大な蛾であった。


「はっ……はひぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーっっ!」
「コレは…ボスじゃなくても怖いと思う…。」
「わお。胴体とってもでっかいね。なんかぷりぷりしてる。」
「極限過ぎる程に極限だな!」
「だ…大丈夫ですか、十代目!」
「あはは…俺ってばユメみてるのかな〜。そうだ夢だ絶対に夢だ。そうさ夢さこんなの俺は認めない…。」
「そうも言ってられないですよ、綱吉君!」



突進攻撃に失敗した巨大蛾は、距離にして40m位突っ切ってから舞い上がり、空を切って方向転換する。その際に大量の鱗粉がまき散らされた。


「全員息止めて体勢低くしろ!」

獄寺が叫ぶ。一同が大慌てて指示に従った直後に一瞬大きな炎が彼らを覆った。


「何をした、タコヘッド!?」
「嵐の炎を噴射して飛んできた鱗粉を分解しただけだ。吸い込んだり触ったりしたらどうなるかわかんねーからな…。」
「…でもソレ、乱発できる防御ではありませんよね。」
「まぁな。今回は鱗粉が一方向から来たから上手く行っただけだぜ。」

「はひぃぃぃっ!あの蛾、空中でUターンして来ましたですよ!」
「ねぇハルちゃん、蛾って人間食べるのかな。」
「そういえばそうですよね…ってそんなこと言ってる場合じゃないですよ髑髏ちゃん!早く逃げるか反撃するかしないと!」


そうして骸と髑髏は槍を構え蛾の前に立ちふさがる。
了平はファイティングポーズを取った。残りは…


「はひ?皆さん戦わないんですか?」
「湖に落ちた時、防水ライター以外全滅しちまった。まぁ特注の火薬が数本無事だったがな…。あいつらが戦えるんなら温存しとくに越した事はなさそうだ し。」
「俺もバット湖に沈んじまったのなー。」
「僕のトンファーも。片方はあったけど…片方だけじゃバランス取れないし。」
「あはは…夢だ…。そうこれは夢…。」
「ランボさん無敵だもんね!」
「コレって…もしかするともしかしなくても、実はかなーりピンチってるんじゃないんでしょうか…?」


蛾が、キノコの胞子を巻き上げながら再び低空飛行で突っ込んでくる。
了平は突っ込んでいったが外したようだ。
骸は蛾とのすれ違い様にかすめるような一撃を与えて、四枚の翅(はね)のうち1枚を切り離す事に成功した。
髑髏もそれに習おうとするが、骸の攻撃の影響で蛾の軌道が少し修正されたせいで槍の軌跡に狂いが生じ、蛾の腹を少し裂いた。髑髏が傷つけた蛾の腹から、緑 色の体液が噴き出す。
直後、髑髏は羽ばたきによって吹き飛ばされてキノコに背中を打ち付けられた。




「大丈夫ですか髑髏ちゃん!」
「…。」

ハルがとっさに駆け寄る。

「痛くないですか、大丈夫ですか!?」
「……よ…。」
「はひ?」
「夢よ…。」
「髑髏ちゃん?」
「夢よ、そうよコレは夢。ボスも言ってたじゃない!」
「髑髏ちゃん!」
「ハルちゃん…だって、ぶしゅうって…蛾のお腹から緑のが…ぶしゅうって…!」
「大丈夫ですよ髑髏ちゃん!」
「そうよね…。やわらかくなんてないものね……。だって蛾だもの…。」
「髑髏ちゃん!あぁ…目がツナさんの如く虚ろに!」


「マズイなナッポー…。」
「ナッポー言わないで下さいこの芝生。」
「他に何と呼べばいいのかわからん!んな事はさておき、今の状況だ。アイツが突っ込んで来る度に"こう”なるのだろうな?」
「おそらくね。ただの蛾だと思って侮ってました。」



今、了平と骸の視界は限りなくゼロだ。
蛾の超低空飛行が巻き上げた、鱗粉と胞子の霧の渦中にあるせいもあるが最大の問題は。


「ナッポー、今何が見える?」
「クフフ、真っ暗ですよ。」
「奇遇だな。極限俺もだ。」
「まさかあの蛾の鱗粉、毒持ちだったなんてね。しかも目をやられるなんて。不幸の紋様のせいでしょうか?」
「さぁな。ただの偶然やも知れんぞ。」
「しばらくしたら回復するといいんですけどね。このまま失明なんて事態…笑えませんよ。」
「急いで湖に戻って洗ってみるか?」
「そうですね、それが今の時点では一番一番可能性があるかもしれません。」
「ならばやる事は一つだな。」
「えぇ。」


了平は神経を研ぎすます。
羽音から蛾の向きと方角を割り出し、流れる空気から距離を測る。

骸は殆ど意識のない状態になっている髑髏の目を借り、状況を把握する。
どうやら目をやられたのは、胞子と鱗粉の霧の中に居た了平と骸のみのようである。


蛾は再度の突進に向けて体勢を立て直していた。
そして空中での体勢が安定したところで再び突っ込んでくる!

了平はファイティングポーズを取り、骸は低い体勢で槍を構える。


「解ってますよね、タイミング。」
「貴様がズレなければいいだけの事だ。」


蛾は鱗粉と胞子の霧などものともせずに突っ込んでくる。
距離が詰まる。



そして、交錯するその瞬間。



「極限!マキシマムキャノン!」
「と、軌道修正オマケつき!」

蛾は頭部から金色と藍色の炎を燃やしながら元来た方向へ飛ばされていった。


「…決まったな。」
「当然。」
「結果を見られなかったのが残念だ。」
「ですねー。」
「だがしかし、それよりも早急な問題がある!」
「目の事ですか?」
「違う!」
「え!?」
「今の技に極限かつゴージャス最強チャンピオンな名前を付けねば!」
「……晴れ霞キャノンとかでいいんじゃないですか?」
「極限だな!」
「うんまぁ…極限に……テキトーですけど。」




霧が晴れる。



「やったじゃねーか!見たぜ、蛾が吹っ飛んでいったの!」
「あぁ山本武。丁度良かった。ハンカチとか何か持ってませんか?」
「鱗粉が目に入ったのか?」
「芝生もです。このままだと全く何も見えないので、一旦湖に戻って目を洗いたいのですけど…。」
「そうだな。…いいだろ、ツナ?」

ツナは相変わらず異世界を彷徨っている。
そんなツナに変わって口をはさんだのは雲雀。

「いいんじゃない?あの草食動物も、もう一回湖に落ちれば正気にもどるかもよ。」





一行が来た道を引き返しかけた時。
そこに道はなかった。
ただ、見上げるほどの黒いカベが道をさえぎってそびえている。



「あれれぇ?ハルたち、道を間違えちゃったですかぁ?」
「アホ女じゃあるまいし。んなワケあるか。」
「ハルはアホじゃないです!…でもでも、現に通れませんよ?」
「まぁな。この道を塞いでいるカタマリ、なんなんだ?」

ランボが「へんなの〜」と言いながらつつく。

「あれ、コレやわらかいじょ。」
「うそ。」

かろうじて立ち直った髑髏がやはりその黒いカベにさわってみる。

「どうですか、髑髏ちゃん?」
「ふかふかしてる。それにやわらかい。…そして、少しあたたかい?」
「でもソレ、邪魔だよね。」
「そうね。」


「あ、そういう時のアホ牛じゃねーか!」
「はひ?」
「くぴゃ?」
「おいアホ牛、あのカベを手榴弾で吹っ飛ばせ!」
「やだじょ。」
「はァ?」
「バカ寺の言うことなんて聞いてやんなーい。」
「フザケろよ!」

「ちょっと待ちなよ。」
「ハァ?なんで雲雀が出て来るんだよ!」
「君、子供の扱いがなっていないよ。」
「てめーなら出来るってのかよ。」
「いいから黙って見てなよ。」

雲雀が一歩ランボに歩み寄る。
ランボは目の前にそびえる雲雀を間の抜けた顔で見上げてる。

「おにいさんの言うことは、おとなしく聞くものだよ…?」

放心状態のツナと失明中の了平&骸以外の面子は、雲雀の歪な笑顔に戦慄したらしい。




「ら…ランボさんいい子だから……、いじわるしない…。ヒ、ヒバリにもあげる……。」

ランボが震える手で、雲雀にピンの刺さったままの手榴弾を渡す。

「いい子だね。見た?獄寺隼人。子供には笑顔で接するものだよ。」

真っ青な顔をした獄寺など気にせずに、得意満面そう言い放った雲雀は手榴弾のピンを引き抜き黒い壁に投げつける。
離れていた一同が、爆発が収まったころにもう一度近寄ってみるが、一向にカべが傷ついた気配は無い。





首を傾げながら山本が近寄ろうとしたその瞬間、カべが動いた。


「え!」
「うお、何だ!」

カベがゆっくりとコチラを向く。

「はひぃ…これは…カ、カベ、じゃなくてコレは…」
「わ…わ、わたし、さっき…さ、さわっちゃった…!」

それはもう、カベではなかった。
真っ黒で巨大なイモ虫である。


「くぴゃー!でっかいアゲハの幼虫だじょー!」
「わお。王蟲生で見ちゃった。」



「極限気になるぞ!」
「どうして、こういう面白そうな時に限って目が見えないんでしょうか…。非常に残念です。」

慌てたり驚いたりそうでもなかったりする一行が、とりあえず逃げようと振り返るとそこには。



「な…なんてこった!」
「これはヤバいのな!」
「わたし…もう…限界……。」
「ど…髑髏ちゃん、トリップしないでください〜ハルもトリップしたいんですからぁ〜!」
「コレって、まさに万事休すってヤツ?困ったね。」
「くぴゃ!いっぱいだぁー!いっぱい、いっぱいー!」
「極限見えん!よってわからん!」
「放心した髑髏の目を借りて見ましたが、どうやら僕たちは巨大蛾とその幼虫の大群に取り囲まれているようです。個人的には体液をすすられてじわじわ死ぬよ りも頭からばりばり食われて死にたいですね。」
「わたし…痛くない方がいいわ…。」
「それって、どっちだろーな…」


いつだって無駄にポジティブな彼らが、遂に素敵な死に方についてのカウントダウン議論を始めようとした時だった。

了平が叫ぶ。



「貴様ら伏せろ!」


巨大蛾達が例の超低空飛行による突進を開始していた。

「あはは…。」

輪の中に居ながらも、忘れられていたのが一人。
放心しているツナが一人で立っていた。

「ツナ!」
「十代目!」

山本や獄寺が声をかけるが、まるでダメだ。ツナは耳を貸さない。
蛾が迫ってくる。
もう押さえつけるにも間に合わない距離に入った時、ツナの口が静かに開いた。


「認めない…。」

「ツナさん?」
「夢。そうだよコレは夢…!」
「ボス…?」
「そうだ、これは夢、夢、夢なんだー!!!こんな現実あってたまるかぁーっ!」


それは、ツナが叫んだのと同時に起こった。
今だかつてないほどの死ぬ気の炎の嵐。いや、竜巻。

「ツナ!?どうしちまったんだ!」
「うふふふふ…あはははは…あははははははははははははは!蛾なんてみんないなくなればいいんだぁぁぁぁぁぁ!滅べいなくなれ消え失せろぉぉぉぉぉぉ!」



炎の嵐の中心にツナが居る。
もう額を通り越して、ツナ自体が燃えていた。
巨大蛾たちとて、サイズを除けば一応普通の虫。己に敵対するものを消し炭にせんと猛然と襲い来る炎から逃れられずに燃えていく。


「綱吉君っ!そんなに死ぬ気の炎を振りまいたりしたら危険ですよ!」
「骸様、目、見えるの…?」
「あれ…そういえば…。死ぬ気の炎で焼けたんでしょうかね?」
「俺も極限見えるぞ!」

「んなこた置いとけ!それより骸、十代目が危険ってどういう事だ!」
「死ぬ気の炎は生命力そのものだと聞いた事があります!あんまり燃やしすぎたら…!」
「それってそれって、うっかり燃え尽きたりしたら死んじゃうって事ですかぁ!?」
「見た事がないので断言はできませんけど…。」
「あぁもう、ホント極限に手がかかるんだから!」


そう言って立ち上がる雲雀。


「委員長さん、危険ですよぉ!」
「いえ、大丈夫だと思いますよ。死ぬ気の炎は本物の炎ではありませんから…。温度は綱吉君の意志次第…らしいです。」
「それって要はきまぐれってコトじゃないですかぁ!今ちなみに暴走してますよねソレって!どーみても!」
「まぁ、僕と芝生の目に入った鱗粉は燃えたみたいですよ。そのノリでいけば僕らは燃えない………………………………………………………………かも。」
「……。」


「やっぱり完全に暴走してるみたいだね。我慢できなくはないけど…かなり熱いな。」


雲雀は自由のきかない炎の嵐の中で、その中心を見つめる。
その足取りはおぼつかないものの、確実に距離を詰める。

ツナの目は、相変わらず焦点が定まってない
小声で。「蛾はキライ…蛾はイヤだ…。」とかつぶやいている。

「巨大蛾のご一行様は君のおかげでみんな燃え尽きたよ。灰も残ってないね。」

ツナに雲雀の言葉は届かない。

「一応言うだけ言ったから。」

それだけ言うと、雲雀はツナをかみ殺した。