しばらく歩くと喫茶店に着いた。あ、ここ知ってるけど、中に入るのは初めてだ。
内装は…綺麗だなぁ。ヨーロッパ風なんだ。



「みなさん、ここの席にしませんか?」


おお、窓際。日当たりも…丁度影になる。良好。


「ねぇ、何にしよっか?」
「そうですねぇ……、チーズケーキは外せません。ハルはチョコレートケーキも追加ですね!」
「あぁ、美味しいんだよね、とっても!私もそうしようかな……?でも、ラズベリータルトも食べたいし…そうだ、ねぇハルちゃん、ワンホールづつ頼んでみんなで分けない?」
「はひ!それは名案です!それに、四人で分けてもいつもより沢山食べれるかもですね!」
「ツナ君とクロームちゃんはそれでいい?」
「うん、いいよ!」
「……。(こくり。)」
「それじゃ、早速注文していいかな?」


京子ちゃん、嬉しそうだなぁ……。かわいい……。


「二人とも、随分食べるんだね……。一人当たりのの取り分を単純計算すると半ホールも!こんなにケーキ食べるの、俺初めてかも!」
「はひ?ハルと京子ちゃんの“自分感謝デー”の話、ツナさんに話した事なかったでしたっけ?」
「あぁ、そういえば前に話してたよね。」
「……?」
「あ、そうだ。よかったらクロームさんも、これから一緒に“自分感謝デー”やらない?」
「それは、なに?」
「うんとね、月に一回だけ好きなだけケーキを食べるの!今まで私とハルちゃんとでやってたんだけど、良かったら一緒にやらない?……あ、嫌なら別にいいんだけれど……?」
「わたしも、いいの?」
「うん!だって、私達もう、友達でしょう?」
「……うん。」
「へぇ、よかったね、クローム。そういえばクロームが笑ったの初めて見たかも。やっぱり、笑ってる方がかわいいね。」
「……!……そう、かな……?」
「ちょっとツナさん!クロームちゃんだけズルいです!ツナさん、ハルはかわいくないんですか!?ハルにもかわいいって言って下さい!」
「あはは…、……えと、ハルもとってもかわいいよ。」
「はひぃ!ハルは……真っ昼間から愛しのツナさんに、ワンダフルでロマンチックな愛のセリフをささやかれてしまいましたぁ!!」
「なんでそうなるのぉー!!??」(京子ちゃんの前なのに—!!)
「ツナ君とハルちゃん、楽しそうだね!」
「……うん、とっても。」


まもなくケーキが来た。うわぁ、思ったよりも大きいかも。しかも、とってもいいにおいがする!た……楽しみ……!…よだれでそう。
隣をみると、クロームもケーキをながめてる。
「楽しみだね!」
「うん。ケーキなんて久しぶり。」

たしかに、自分で買わないとあんまり食べないかも。ケーキなんて。


「はい、ツナ君。」

京子ちゃんが取り分けてくれたケーキ。(それだけでも感動っ!)
…しかも、すんごいおいしい!ちょっと、マジ感動なんだけど!

「…おいしい。」
「でしょう!ですよね!おいしいですよねぇ〜!ハルも、初めて食べたときは本当に感動しちゃったんです!」
「女の子なら、だれでも通る道だよ。あ、チョコレートの方もどうぞ。」
「チョコレートケーキ……。」
「……クローム、どうしたの?」
「なんでもないよ。」
「そぉ?」




「そういえば、聞いて下さいよ!あのですね、商店街のオジサンが言ってたんですけど……!」
「えっ、うそうそ!……だって私は…」
「……ええええっ!ハルはそっちの方が……!」
「……でねでねっ……!」


ぺ………ペースが早くて、話題についていけないっ……!
すごいなぁ、二人とも……!
あれ、そういえばクロームさっきから黙ってるけれど…?


「クローム?」
「……とってもおいしい。」
「よかったね。」
「骸様にも教えてあげなきゃ。」
「……骸って、ケーキ好きなの?」
「チョコレート系は全般的に好きみたい。」
「…なんか意外〜!!」
「そう?」
「だって骸って、すごく大人っぽいイメージあるもん!ほぼ同い年なんて、にわかには信じられないくらい!」
「…たしかに、普段はそうみえる。かも?」
「あ、かもなんだ。あれ、でもそしたら……普段じゃない時って?」
「骸様、ボスとしゃべってる時は、すごく楽しそう。少し、幼く見える。」
「………俺が骸としゃべってる時かぁ。八割は遊ばれてる気がするなぁ。」
「でも、骸様、すごく楽しそうに笑ってる。」
「う〜。うれしいような、うれしくないような……。」
「ボスは……いや?」
「や、そうじゃなくって!笑ってくれるのはうれしいけれど、遊ばれるのはなー…みたいな。あ、でもまったくからかわれないってのも…それはそれで不気味だな…。てゆーか、てゆーか!骸といっしょに居るとさ…。」
「なにか、あるの?」
「…すごく、さ。」
「?」
「その…えっと…首が、痛くなる、みたいな…。」
「……なんで?」
「あのさ、あいつが俺の隣に立ってるの想像してみてよ。ものすごい身長差じゃない?山本と居る時は、中間に獄寺君が居るから、あんまり感じないんだけど…骸と居る時は大抵2人きりだから、嫌でも身長に差を感じる…みたいな。」
「身長、そんなに、気になる?」
「…普段はそんなに気にならない、けど。でも、さ。…この前の休日に、骸と偶然商店街で会ってさ、またおちょくられてたんだよね。そしてらさ、通りすがり の人に道を聞かれたんだよ。その人に何て言われたと思う?“高校生と小学生”って言われたんだよ!?ちょっと、ひどくない!?」
「確かにボスは、ちょっと幼くみえるけど……。」
「多分、骸が大人っぽく見えるせいだと思うんだ。だから……その……俺がガキっぽいのが際立つんだと……思う……。身長も、小さいし…。」
「……ボス、かわいい。」
「クローム、なんか言った?」
「ううん、なんにも。ただ、骸様、言われたい放題だなって、思ったの。」
「あ………ゴメン。」
「気にしないで。骸様も、言いたい放題だから。」
「うげ、やっぱり?」
「うん。」
「だよなー。骸だもんなぁー…。」
「…何言ってたか、聞かないんだ。」
「だって、骸だし。きっと、俺がボスなんて向かない、とか、バカとかどんくさいとかトロくさいとか、そんなトコロでしょ?」
「だいたいは、そう。」
「骸らしいよね。」
「そう?」
「うん。…って!なんか俺、さっきからひたすら愚痴ばっか言ってる!ごめんねクローム。うざかったでしょ?」
「……ううん、そんな事ないよ。わたしはボスと一杯しゃべれてうれしいよ。ボス、とってもかわいいよ。」
「あ、そのぉ…なんだ、えっと、ありがとう。なんだか照れるなぁ。あ、そうそう、さっき俺が言ってたこと、骸にはないしょだよ!絶対におちょくってくるもん!」
「うん、わかった。まかせて。」
「あはは……。」


ううむ。やっぱり俺も男だし、かわいいより、カッコいいって言われたいけれども…。



「ツナさん!」
「うわ、ハル、な、なに!?」
「ツナさんは、たこ焼きとお好み焼きのどっちがこのみですか!?」
「はぁ?なに、いきなり」
「さっき、商店街のたいやき屋さんと、駅前のタコ焼き屋さん、行くならどっちに…ってハナシをしていたんです!」
「ツナ君はどっち?」
「えっと…俺は…」
「ボスはたいやき、好きだよね。」
「やっぱり!」
「はひ!ハルとは意見が食い違ってしまいましたです!」
「あれ、俺クロームに言ったっけ?」
「この前千種が、言ってた。」
「あ、なるほど。そういえばこの前、そんな話をしたかも。」





そんなわけで、珍しいくらい平和で貴重な時間はあっというまに過ぎて、喫茶店からの帰り道。


「ケーキがいっぱいでシアワセでしたぁ〜!」
「あーあ、でも、また来月までおあずけね。今から待ち遠しいな。」
「こんなににいっぱいケーキ食べたの初めてだ。夕御飯食べられるかな?」
「…おいしかった。」
「はひ!クロームちゃんもおいしかったですか!よかったですぅ!」
「…ハルちゃん。」
「はひ?クロームちゃん、どうかしましたか?」
「これ、落としたよ。」

クロームがハルに生徒手帳を渡す。


「……。」
「…ハルちゃん、どうかした?」
「…あ!えっと、ぼーっとしてました!なんでもないですよ!」
「そう?はい。」
「ありがとうございます!」
「ボーッとするなんて、ハルらしくないね。」
「そうですか?ハルもそんなことくらいありますよ。」



なーんか、一瞬変なカンジがしたけど、気のせいなのかな?
そうして、四つ辻に差し掛かる。


「私、こっちなんだ。それじゃぁまたね!」
「わたし…こっち。」
「ハルもこっちです!クロームちゃんと同じ方向ですね!…それでは、ツナさん、京子ちゃん、ばいばいです!」
「ん!そっか、それじゃぁ、またね!」



そんなわけで、みんな帰って行った。
なんか、いっきに一人になると急に寂しいカンジがするなぁ。

…空はもう、茜色。
山本の話じゃ、チンピラにからまれた話が増えている、らしい。
昼間からまれても嫌だけど、暗くなってからとか、さらに嫌だ!早く帰ろう。

あ、京子ちゃんとハル、クロームも大丈夫かな?