……やっと、涙が、おさまってきた。
でも、このあと、どうしよう。
とりあえず、まわりをみわたす。
「あ……おまえ、いたのか?」
「ひどい扱いだな。もう、泣きつかれたのか、ちび。」
「ちびじゃない、ユーリだ。うるさいぞ迷子。」
「…ヴィルヘルム。迷子とか言うな。」
「しるか。」
「おまえ本当、むかつくな。ところで尋ねるが、ここはどのあたりなのだ?」
「…………う………。」
「……もしかして迷ったのか?」
「………。」
「ふん!きさまもヒトのこと言えたものではないな!」
「………ひっく……!」
「……!わかった!わかったから、泣くな!!……な……泣くなってばぁ!!!」
しばらくしてから。
「たぶん、こっちから来たのだとおもう。」
迷子が言った。
わたしは、あんまりひっしに走っていたせいか、まったく道を覚えてはいない。
まちがっているとしても、こいつについていく他はなかった。
「行こう。」
泉の水をすこし飲んで、わたしたちは歩きだす。
「…なぁ迷子。」
「おまえも迷子だろうが。」
「ほかにどう呼べばよいか思いつかない。」
「……ヴィルヘルムだ。」
「そうか、迷子。」
「おまえな……。」
「そうそう、この木、さっきもなかったか?」
「……そういえばそんな気もするな………」
「あっちではないか?」
「こっちな気もする。」
「………。」
「………。」
そんな時、ふと低い音を感じた。(音を感じるなんて変だけれど、確かに感じたんだ。)
なんだかおおきなモノの足音のようだ・・・地響きだ!
わたしは、あ。迷子も思わず近くの樹の根のあたりにかくれて、いきをひそめる。
どしん……どしん……
近づいてくる!
どしん……どしん……
いきがあらくなる。
いきの音が、しんぞうの音がとおくまで聞こえているような気がして、不安だ………。
どしん…………どしん……!
なんだか、
なんだか、あたたかくてくさい。……息?まさか……。
でも……いま、すごく、ちかくに、いる!
どしん………どしん……
……よかった、とおりすぎた!
とりあえず顔をあげる………と。
いっぴきのうさぎ。
よかった、魔物じゃないな……。
と、思った瞬間、うさぎと目があった。
うさぎはおどろいてにげていった。
……ハデにがさがさという音をたてて。
……どしん!どしん!
わたしたちは一目散に、声もなくそのばからにげだした。