そうこうしているうちにコウモリが増えてきた。
屋敷を抜け出した事がばれてしまったのだろうか。
「もうしらん!勝手にまよってろ!」
わたしは歩き出した。
いそがなければ。
ちゃんと、あの場所に行かなければならないのに!
ざくざくざくざく
がさがさがさがさ
やっぱりアイツはついてくる。
あいつをまくために、いつもと違う道をいくことにした。
そしてしばらくたった頃。
見慣れない、真っ黒い木がたっていた。
見たことも無い、きもちわるい色をした花もさいている。
そんな場所に出た。
……どうしよう。
振り返る。
けれど、後ろも同じ風景……。
……完全に迷ってしまった。
「ユーリ、よくお聞き。
この館の周りにある森はね、ここら辺は比較的安全な普通の森なのだけれど…。
もっと奥に行くとね、強い魔物……トロルやサイクロプスみたいな巨人族や、凶暴な食尽植物なんかが茂るようになってくる。
興味はあるかもしれないけれど、絶対に行ってはだめだよ。
……今のユーリでは食べられてしまうからね。」
にいさまぁ……どうしよう。
きゅうに周りの全てが恐ろしく見えてきた!
どうしよう!どうしよう!どうしよう!
怖い!怖い!怖い!
そんなとき、ふと、後ろから
ドス……ドス…という地響きがした。
振り返ると、
そこには…………!
一つ目の巨人がいた。
—サイクロプスだ!—
きびすをかえして逃げる!
絶対にかなわない!
食べられちゃう!!
にげなくちゃ!
とりあえず、必死でにげた。
死にたくない!
「はぁ……はぁ……!」
まだ。
「………っはぁ…!」
まだ!
「………っくはぁ!……っはぁ!」
まだ大丈夫!追いつかれてない!
そう思っていたら、突然前からも別のサイクロプスが現れた。
…横からも!
かこまれちゃった…………。
…もう、逃げられないっ……!
そう思ってたら、ふわりと、体が宙に浮かんだ。
「……!!」
思わず顔を上げると、さっきの迷子がわたしをかかえてよたよたと飛んでいた。
木よりも高いところまで来た……!
巨人達がなんかわめいてる。
とりあえずわたしは助かったようだ。
迷子は、わたしをつれて近くに着陸した。
青い、きれいな群青色の泉のほとりだった。
「まったくもう、いきなり何処へ行ったかと思えば……!」
迷子が何かぼやいている。
そんなことよりも、わたしはさっきあいつにつれられて空を飛んだときに、ひとつ、気づいた事があった。
「……おい、ちび。聞いているのか!?」
空から見た森は、いつもの知っている森ではなかった。
大分奥に来てしまっていたみたいで、全く道がわからなかったんだ。
「……………。」
「…おい?」
あの場所も、分からない。
「…………。」
「…………あ!……ぇ!??」
屋敷へも帰れない。
「………。」
「あ……!…えっと、その…、勝手についてきた事は、わ、わがはいがあやまるから!」
どうしよう。
「………………。」
「……だっ!だから、泣くな!……泣くなってば!」
どうしよう、にいさま。
「………っく、……えぐ………!」
「………すまない!わるかった、ごめんなさい!!」
かえれない、よ。どうしよう。
「……うっく。……ひっく。」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!だから、泣きやめってば!」