今日は月が無い夜だ
でも、外に出るにはもってこいの天気。
本当は、月のない夜に一人で外に出るのは十になるまではしきたりで禁じらているのだけれど。


でも、秘密の抜け穴から外に出るのだ。
なにをいまさら、常習犯だしな。








森の中は暗いけれど、星明かりでもよく見える。
全然問題ないくらいに。


今日も行くのだ。
この前見つけた、わたしだけの秘密の場所に。





「ここの樫の木を…南に二百三十七歩……!」




ん?
樫の木の下になんだか真っ黒いのが……いる。




…… 何だろう?ヒト…かな?動物?それとも魔物??



とりあえず突っついてみよう!






「うりゃ。」

「・・・・・○△□×!!!!????!」








…あ、こっち向いた。
なんか、羊っぽいへたくそな仮面みたいなのをつけた……ヒト、みたいだな?
なんだか、完全に錯乱してるっぽくて硬直している。


…あ、そうだ。その仮面ぽいのはぎ取ってみよう!







かぱ。




あかがね色の髪に緋色の瞳。
目元にイレズミみたいな模様がある。
たぶん、わたしと同じくらいか少し年上くらいの男の子がそこにいた。






「・・・・」

「・・・・」

「…なんでこんなトコロにすわり込んで居るのだ?」

「……星がきれいだったから散歩していたのだ。そうしたら、木にぶつかって……」

「気絶したいた、ワケか?」

「そう、そして……迷子になっちゃったぽいのだ…。」

「……そうか。」

「うん。」

「じゃあがんばれ。」






じゃあ、問題なさそうなので、気にしないでそのまま歩いて行く事にした。
さぁ、あの場所までもう少しだ!









ざくざくざくざく

がさがさがさがさ








ざくざくざくざく


がさがさがさがさ













ざくざくざくざくざくざくざくざく

がさがさがさがさがさがさがさがさ





「……用でもあるのか?」

「いや、ない。」

「じゃあ、なんでついてくるんだ!」

「さっき言っただろう!迷ったんだ!
お前みたいなちびっ子がこんな森うろうろしているなら、近くに屋敷なり何なりあるのが普通だろ!
そこで道をきくのだ!」

「わたしは自分の屋敷にもどるつもりはないぞ?」

「……。」

「用がないならついてくるな!」

「………!」










コイツに構ってるヒマなどないのでまた歩く。








ざくざくざくざく

がさがさがさがさ



「だーかーらー!!用がないならついてくるなと言っただろう!」

「用があるからついてくるのだ。」



こいつムカツク。



「じゃあ、なんの用だ。」

「道案内しろ。」

「だめだ。むりだ。」

「お前、ヴァンパイアだろ。」

「なにか問題でもあるのか。」

「このへんに住んでいるというヴァンパイアの一族は、十になるまで新月の外出はできないしきたりだと聞いたが。」

「………!?…なんでそのことを……?」

「ふん。顔色がかわったな。
道案内しなかったらおまえが出歩いていたことをばらすぞ。」

「……迷子にいわれるすじあいはないな。
だいたい、わたしが道案内しなかったらお前はずーっとまいごなんだぞ。」

「わがはいは立派な悪魔の家系の生まれなんだぞ。
おまえの家なんか、すぐに潰せるんだぞ。」

「野たれ死ね!へたくそ仮面!」

「つぶれろ!ちび!」