「貴様、そこで何をしている!」
唐突な声に視線を上げると、そこには制服を着た男がこちらに銃口を向けて立っていました。
見た事の無い制服ですが、見た所軍服のようです。
我が国の軍隊の、新しい部隊の制服でしょうか?
「・・・失礼しますが、軍隊の兵隊様でいらっしゃいますね?どちらの部隊の方でいらっしゃいますか?」
「質問に答えろ!」
「ここにあった村の住人です。学業の為に村を出ていました。」
「そうか。それは幸運だったな。」
「もし宜しければ、この村に何があったのかを教えていただけませんか。」
「貴様、見て分からないのか?この村は吹っ飛んだ。跡形もなく焼けた。」
「自分が知りたいのは其れが「貴様、俺たちの足下に資源がある事を知っているか?」
「!?」
「その発掘の為にセドナ帝国政府は住民に立ち退き命令を出そうとした。が、それが村に届く事はなかった。」
「どうして?」
「なぜなら、住人が立ち退く必要が無くなったからだ。
ここにはかつての戦争で大変な武功を立てた、英雄とまで言われた軍人・・・階級は将軍だったか?が、居たらしい。もし、奴が命令にを拒否した場合、非常に
面倒な事になる。それで、政府は何も言わない事にしたのだ。“ある日突然、敵国の攻撃にあってこの村は焼けてしまった。”それならば問題あるまい?
新兵器として研究されている大爆弾の実験も兼ねて、この一帯は住民ごと吹き飛ばされた。油田は地下深くだから、地表も吹っ飛ばして、掘る手間を少しでも・・・とかいう算段だな。」
「そんな・・・!!ありえない。なぜ・・・!!?」
武器とは、自国を、国民を守る為のものではないのか!?
どうして、何も知らない民を、どうして、無力な人々を、なぜ、話し合いすらも無視して?
こんな、全て破壊する、実験とは名ばかりの殺戮ではないか!
「この村は、自分の国の実験につき合わされて吹き飛んだ。」
「・・・・」
「貴様のその制服、軍学校のものだろう?首都からの距離を考えると・・・貴様が首都を出発した日に故郷は吹っ飛んだという事になるな?」
「・・・・」
「どうだ?自分が忠誠を誓うハズの国に故郷を焼かれるというのは?」
「・・・・」
「そうだ、先ほどの貴様の質問に答えてやろう。俺が何者かと貴様は問うたな?」
「・・・・」
「俺は国境を越えて侵入した隣国セイランの兵士だ。明日の夜、あの首都鉄道の走る山向こうの街を制圧する。
予定では、外から本隊が、俺たちの部隊が内側から攻撃して国境の奴らを落とす。今夜、国境が動き、ここの資源は俺たちが頂く。」
「・・・あなたは、私が軍学校の生徒であると言いました。それは正解です。この国が焼かれた時、私はここに向けて出発した。そして、貴方が自分の身分を明かしたということは私はここで貴方に殺される。」
「分かってんんじゃねえか。」
「私は死にたくない。」
「あぁ?」
「私は生きたい。生きて、私から全てを奪ったこの国に復讐したい。」
「何も聞こえないな。」
「・・・私は、かつてここの村に居た元将軍の息子です。病気がちの兄に代わり、士官学校に通っています。父様の後釜に収まる為にありとあらゆる事を叩き込まれています。そちらのお役に立つような情報も一部握っていますよ。」
「喋るから殺すなと?」
「いえ、喋るつもりはありません。」
「ならば何のつもりだ?趣味の悪い冗談か?」
「いいえ。要求は簡単です。私を捕虜として連れて行って下さい。」
「冗談も休み休み言うことだな!」
「この・・・守り袋の中には父様の身分証明の為の証明用の証、名前入りの階級章が入っています。父様は政治にも関わっていましたから、政治の事もある程度分かります。権力者達の力関係、性格、将軍の戦略のクセ。一般の兵士では知り得ないでしょう?
それに地の利はセドナ帝国の兵士にあります。爆発の実験のせいでこの村の地形は大分変わってしまった。だからこの辺りは分かりませんが、山向こうの街くらいなら分かります。地元民しか知らない抜け道も、この辺にはたくさんありますよ。」
「俺に”貴様を連れてきた”という名誉を、貴様に復讐を・・・と言ったところか?」
「それでも私を殺したければどうぞ。私に抵抗する術はありません。」
「・・・いつか俺は貴様を殺す。」
「今でなければいつでも構いませんよ。」
「貴様は遠い未来、その言葉を後悔する。」
「あなたが自分を殺すべき時までに、自分は自分のなすべき事をやりとげますから自分は後悔などしません。」
「・・・ふん、ついて来い。」
私は許さない。私から全てを、希望を奪ったこの国を許さない。
どんな事でもする。
復讐のためならば。
狂わせてやる。終わらせてやる。
かような国、在るらせてなるものか!