その日は美しい満月の晩だった。
メルヘン王国だと夜は魔王の支配する時間であり、
今晩も魔物達があちこちで騒ぎ、
悪魔達は嗤っていた。
そんな中、森の奥にある野原に羊のような仮面をつけた黒ずくめの男が一人。
「銀色に輝く月見草と、マンドラゴラの根と・・・」
どうやら、魔術の材料を探しているようだ。
しかも、なかなか珍しいもののようで苦労しているのが伺える。
そして、男が疲れたように空を見上げると大きな美しい満月
……が、
……縦に裂けた。
正確にはその空間が、だが。
そして、
その裂け目は広がり、何かを野原に放り出してから,
縫い合わさるように閉じて行った。
男は何が降って来たのか興味があるらしくその“何か”に近寄って行った。
その“何か”とは少年だった。
少年は全身傷だらけでありあちこちから血を流していた。
そして、皮膚の所々から鋼鉄の運動補助機械だとか仕込み武器などが見えていた。
よく見ると少年は息をしていた。
「異なる世界から流れ着いたのか……!?
……生きたまま?そんな事はあり得るのか……?」
男はそうつぶやくとその少年をかかえて、彼の居城へと向かって行った。
背後には銀色の月見草が輝いていた。