ここはどこだ・・・・?
石組みの天井。
ひんやりとして、湿った空気。
鼻を突く薬品の匂い。
薄暗い・・・地下室なのだろうか?
少々辛いが体を起こす。
地下室で間違いないようだ。
そして、寝かされているベッドの下には大きな魔法陣が描かれていた。
「??????」
俺が混乱していると古くさい木の扉が開いて、
黒ずくめの小綺麗な格好をした羊のような仮面をつけた男が入って来た。
「・・・本当に生きてた・・・」
「いきなり失礼だなお前!」
・・・ついツッコンでしまった・・・ではなくて!
「そう言えばお前誰だよ!てか何だよ!」
「そういえば寝覚めはどうだ?ジャック?」
「・・・なんでジャック?誰なんだ?それ・・・!?」
「お前の首から下がってるネックレスに彫ってあったぞ。
・・・違ってたのか?」
「ネックレス・・・?」
本当だ。よく見れば彫ってある。
今まで気にも止めた事なかったけれど。
俺は字はほとんど読めないけれど
それでもわかる。
簡単な字だ。
J A C K
あれ、なんだか懐かしいのはなんでだろう?
なんだか何か思いだしそうだ。
軍に入る前の事?改造手術を受ける前の事?
うそだ。
手術を受けたときに以前の記憶なんて全て抹消されているハズなのに!
いろいろ思い出していく?
「・・・ジャック 逃げ な さ・・・」
あの光景。
あの記憶。
無力な俺を庇って死んで行った女性は俺の母さん。
大好きだった。
母さんを喜ばせようとして、おいしいもの一緒に食べたくて
学校やめて働いたんだっけ。
母さんを撃った銃は俺の工場で作ってた型番だ。間違えようもない。
すべてを忘れたくて改造手術の実験も喜んで受けたんだっけ。
母さんを殺した奴らの所ででも、
心が死ぬのなら。
悲しくなくなるのなら。
あつい。目が潤む。
あぁ、こういう状態なんていうんだっけ。
こういう感情何て言うんだっけ。
・・・感情?
殺人サイボーグにはいらないものなのに。
きちんと、手術で消されているハズなのに!
苦しい。
くるしいよ!
かあさん!
かあさん!!
俺はめいっぱい泣いた。
5年前の事でも、夢から目覚めたばかりのような俺には関係なかった。
気がつけばいつの間にか仮面の男は居なくなっていた。