俺の名はジャック。工場で働いている。
母さんと二人で頑張って生きてる。
まだ子供だから賃金は安いけれど、貧しい俺の家にとっては大事な収入源だ。
わかってる。ちゃんと理解してる。ちゃんと自覚してるってるのに・・・
まさか風邪でぶっ倒れるなんて。
それで仕事を休むなんて。
・・・情けないったらありゃしない。
でも、俺の風邪は今日丸一日ねむっていたらすっかり良くなった。と、思う。まだちょっと体がだるいけれど・・・
・・・どうしたんだろう?家の外が騒がしい。
いろんな種類の声がする。いつもの雑踏では聞かないような音もする。
今日はいつもの街のいつもの家……じゃあないの、かな?
なんだか街が騒がしい。
お祭り……じゃあない、よな。だいたい時期じゃないし。
……誰かが叫んでる?
これは、誰かの…悲鳴??
何が起こったのだろう。何が行われているのだろう。なんだか嫌な予感がする。
どうしていつもの街のいつもの人たちがいつも出さないような声を出しているのだろう。なんだか不安になる。
いつも街は騒がしいけれど、今日の騒がしさはいつもとは種類が違う。
何が起こったのだろう。何が行われているのだろう。胸騒ぎがする。
空が紅い。夕暮れってこんなに赤かったっけ。
いや、そもそも今は夕暮れ時なのだろうか。でも、空は紅い。
いろんな人の声がする。
近所の酒場のおじさんの叫び声。酒場の呼び込みにはまだ早くないかなあ。
一緒に工場につとめている向かいのお兄さんと、いつも一緒にいるきれいなお姉さん。
今うちの前を通り過ぎていった?
お姉さん、あんまり転んじゃだめだよ。けがしたらお兄さんが心配するよ?
この声は隣に住んでいる太り気味なおばさんかな?大きな声だなあ。
元気なのはいいけどさ、こんな声出してたら喉が枯れちゃうよ?