私の個人的な未来編の独自考察がだいぶ混じってます。それでもいい?

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壁に空いた穴から穏やかな太陽の光が差し込む、ゆるやかな午後。


廃墟の施設、ボロボロの部屋。
綿のはみ出したソファに寝転がった六道骸は、天井を見上げながらぼんやりと回想する。
何もないいつもの中のある日。
いきなり「未来の記録」が転送されてきた日の事をだ。




その記録は、白蘭との壮絶な戦いの様子だった。
しかしそれらの中には、1つだけ妙な記録があった。
まるで鍵でもかかっているかのように開くことが出来ないのだ。

「(そう、覚えている…。あれは間違いなく、未来の僕が施した術だ。)」




開くことのできない"記録"しかし、一月かけて気合と根性で解いた骸が知ったのは、とても衝撃的で悲惨なものだった。




その内容とは ----------
あの時代あの時間軸におけるタイムトラベルの真相と、"あの時代の六道骸"が受けた最後の仕事の内容について記録したものであった。


結論から告げよう。
あの後ボンゴレという組織は、沢田綱吉と仲間たちを反逆者として始末した。

なぜならミルフィオーレを敵に回した時に、最初にボンゴレを裏切った人間が沢田綱吉だったからである。
ミルフィオーレという組織の強さと勢い、異常性をいち早く知った沢田綱吉はすぐに情報収集を始めた。
そんな沢田綱吉が入江正一というパイプを持っていたのはまさにこの時空唯一にして最大の偶然でもあった。
正一を通し白蘭に関する情報を集め、その異常性を再認識するほどに危険は高まり、当時まだアリアが率いていたジッリョネロファミリーとの合併が現実的に なってきたあたりからもう、答えは出ていたのだ。「この事態は手に負えない類のものだ」と。


崩壊する世界。終末の未来。何のために。どうして。
まるで鋏で枝を切るように刈り取られてゆく未来。

そして選択肢は現れる。
沢田綱吉はボンゴレの為に戦うのか。あるいは仲間を守るためにミルフィオーレに膝を折るのか。それとも…この世界に生きる全てのために戦うのか。

彼は選んだ。
彼はー沢田綱吉はボンゴレを、捨てた。そして世界の運命に喧嘩を売ったのだ。
おそらく史上最大のギャンブルである。


ボンゴレが管理できる資金のおおよそ半分でもって、ミルフィオーレ傘下の企業、組織を片端から買収する。
ボンゴレは海運でのし上がってきた企業でもある。それを強みに武器輸出を手がけている。
その一部の商品を各地のボンゴレ拠点に流し、指示を出し撃って出る。
もちろん勝てる見込みなどない。いわば拠点の体力、構成員の命を使った時間稼ぎである。

極限まで研ぎ澄まされた超直感は、当時まだミルフィオーレに吸収されていなかったジッリョネロファミリーのボス、アリアの手助けによりさらに進化してい た。そして沢田綱吉は理解する。この世界に施された一部の世界システムを。
この世界に苑全と流れる因果律、アーカイブス(運命試算予測記憶)から予想された白蘭が得た能力の"本当の意味と目的"を。そしてそれらがーこの時空に生 きる人間では逆らえないと云う事を。
白蘭の能力、存在とはつまり、この時空に増え過ぎた"多重未来"の一掃だった。
いわば、増えすぎた未来のリセットである。
何がそれを望んだのか。なぜ未来を刈り取られねばいけないのか。それはだれにもわからない。
それを踏まえた上で作戦を練る。この世界の生き物では対処できないのならば、この世ではない異なるものを召喚すれば良いのだと。



限られた時間を使い十年バズーカと特殊弾の細工を進め、偵察として雇った骸一味に内情を探らせる。
雲雀と了平にもおおまかな段取りを伝えーーーそして計画のスタートを切る銃弾の音が鳴る。

響く音。山の中に捨てられた棺桶。
斯くして"沢田綱吉"は生き残った出来損ないのアルコヴァレーノと出会うのだ!



そしてーーーーー



そして、過去から召喚された沢田綱吉達は未来を変えた。
この世界に存在するはずのない、白紙の少年たちが世界を変えた。

沢田綱吉はこの賭けに勝ったのだ。
彼らが去った後に残るのは……この、世界を賭けたギャンブルの支払いだった。
保管機から解放された10人が降り立ち、その場に居た者たちと共に喜び合う。

それが、骸に向けて送られた"記録"の全てだった。
そして最後に付け足されていたのは、小さな意志と身勝手な予測。

触れると淡雪のようにとけだす"それ"。一度だけ何かを伝えてくる。
曖昧だが確かに伝わってくる内容によると。

おそらくボンゴレの兵と財産を、個人的な意志で勝手な戦いに使い込んだ沢田綱吉をボンゴレの生き残った幹部たちは許さないだろうということ。
そして、殲滅の命令が出るか、首に懸賞金がかかるだろうと云うこと。
再び脱獄した六道骸は、今回の協力の見返りとして沢田綱吉と息のかかった仲間達を始末したならば、どさくさにまぎれて勝手に脱出した件はうやむやにされ、 今後追われる事はなくなるという取引がなされているという事。
そしてもう一つ。-------1度保管器に入った者は、体にかけられていた極度の負担ゆえ、長くは生きられない…と、伝えられた。

おそらくあの時代の六道骸は見届ける。かつての仲間たちの死を。崩壊を。
そして、そのすべてを己の手柄にする。
そして自由になる。
きっと。

最後に一瞬だけ浮かんだのは、
自嘲なのかやけくそなのかわからないが、いくつもの墓の前でぼんやりと立っている彼(自分)の幻影だった。




まるで悪夢である。
いや、夢のほうが何倍マシだろうと考える。
こんな運命などあってはならない。

未だ中学生の若い六道骸は眉間にシワをよせながら、ソファの上にごろりと寝返りをうつ。ぼろぼろのクッションを顔に押し当てて、無意味に足をバタバタさせ てみる。
ひとしきりばたついたら気がすんだのか、顔を上げてはぁと大きくため息をつきながら外に目をやると、きらきらと輝く太陽があたたかな日なたを作っていた。

「(いつかのどこかの未来の綱吉君のばか。ばーかばーかばーか。
どうして君ともあろうものが仲間よりも世界なんかをとっちゃうんですか。こんな事されたら世界をぶっ潰すのなんてやりにくくなっちゃうじゃないですか。 ばーか。)」

ごろりと寝返り。

「(君はいつも言ってるじゃないですか。世界よりもボンゴレよりも仲間が大事だって。僕はこんな世界なんか嫌いだけど、君と愉快な仲間たちを生かしてあげ るくらいの度量は持ち合わせているのに。君はどうして大事な仲間を長生きできない風にしちゃったんですか。一般人の君が、ある日いきなり僕とかザンザスみ たいなのを相手に戦うことができる程に強い覚悟を決めて守ろうとした仲間を!ばか!ばか!)」
「(僕も僕なのです!一人で取り残されることにあんなに怯えるなんて、あんなになるなんてありえないのです!あんな、墓の前であんな悲壮な顔して立ってる 幻影を送りつけてくるだなんて悪趣味にも程があるのです!だって僕強いのに、最強なのに!無敵なのに!)」

ひとしきり心で暴れると骸は…穴の開いたように空虚な心で、ぼうっと天井を眺めた。

「(僕は無敵。)」

体に響く心臓の音。
つとほおを伝う雫。

「(僕は最強。)」

音のない空間。
随分遠くに感じられるひだまり。

「(僕は完璧。)」

静寂。

「(僕は。)」

一瞬だけ見えた、並んだ墓標の前に立つ取り残されたみじめな姿。
もう戦う相手もじゃれつく相手も居ない。

「(僕は。)」

沢田綱吉が超直感を用いた上で勝機は薄いと判断した化物、白蘭。
それを知っていながらあえて協力し、挑んだ愚かな六道骸。

「(僕、は。)」







静寂。








静寂。




静寂。


静寂。静寂。静寂。



静寂。静寂。静寂。静寂。




静寂。静寂。静寂。静寂。静寂。静寂。






重い体と乾燥した目元にぎゅっと力を入れ、体を丸め力をためる。

「んー。」

それを一気に解き放ち、がばっと跳ね上げるように起き上がると、ボンゴレから支給されている携帯電話に手を伸ばす。
電話帳を開くのもめんどくさいと、手打ちで番号を打ち込む。


「もしもし。」
「ちゃおッス!骸じゃねーか。」
「アルコヴァレーノですね、なんか儲かりそうな話ありませんか。ちょっと買いたいものがあるんです。」
「あ?何を買うんだ。」
「…術師として本格的に勉強するために、本を何冊か買いたいのです。」
「そんなら9代目にかけあってやろーか?各代の霧の守護者が置いていったような本がいくつかあると聞いたことがあるぞ。」
「ありがたい!お願いしてもかまいませんか?」
「高くつくぞ。」
「う…!」


しばらくして交渉がまとまり、骸はカバンを抱えて飛び出していく。
ここはあの時間軸とは違う場所。違う世界。
世界はまだまだいくらでも変わるのだ。

「(僕はこの世界が大嫌いだ、こんなの思い切りぶっ壊す!
 そして愉快で面白い最高の未来を作ってやるために、最善を尽くしてやるんだ!ざまぁみやがれ未来の沢田綱吉!)」


からになった部屋に、乾いた風が吹き込んでほこりが舞った。
日が暮れるにはまだまだ早い。




終わり。


私が書く骸って、どうしてこうもポジティブなのだろうか。

それと、こんな微妙に希望を持った終わり方してこれ書くのもアレだけどさ、
彼らボンゴレ一味の未来を真面目に考えると、
どうやってもどう補正してもかなり悲惨なバッドエンドにしかならないのはなんでだろうね。
これはもうアレか。考察あきらめてギャグ書けってことか。

あとツナと骸って根本的な所でよく似てると思うよ。