相変わらず髑髏→ツナだけどいいですか。
こりもせずまた歌ネタだけどいいですか。















昼下がり。
霧の守護者六道骸はボンゴレ本部の中核、ボス沢田綱吉の執務室へと続く廊下を歩いていた。
その手にあるのは紅茶とお菓子の乗っている盆。どうやらボスの休憩用に用意された物のようだ。
そんな骸の背後に駆け寄る影が一つ。

「むくろさま。」
「おや、髑髏じゃないですか。あなたも綱吉君に用事ですか?」
「ううん。今日は何もないよ。ただ、骸様が見えたから声をかけてみただけ。骸様はボスに用事?」
「見ての通りですよ。厨房につまみ食いに行ったら、ついでに頼まれてしまいましてね。」
「これ、ボスの今日のおやつ?」
「そんなところです。用がないのなら髑髏も一著にお茶しませんか?」
「本当?いいの?」
「えぇ。あの子なら人数の多い方が喜ぶでしょうから。」
「じゃぁ、わたしも行く。」


そう言って髑髏も骸の横に並ぶ。






「ねぇ聞いて、骸様。」
「どうしました?」
「この前のパーティーの事なんだけど。」
「あぁ、この前の…あなたが綱吉君のパートナー役兼ボディーガードをやった?」
「うん、そう。」
「何かあったんですか?」
「ボスったら、ヒドイのよ。」
「あのダメツナが何か言いましたか?」
「何も言ってないわ。」
「…?ならばどうしてそんなに機嫌が悪いんですか?」
「…だって。」
「?」
「ボスは女の子に慣れていないから、周りに変に言いよられないように…って私に恋人役を頼んだの。」
「へぇ、ラッキーだったじゃないですか。」
「あの日私がパートナーに選ばれたのは、京子ちゃんだとボスが緊張しすぎるし、ハルちゃんだとボスの地の性格がまるだしになっちゃうからだってアルコヴァレーノの子が言ってた。」
「これはまた…消去法ですね。」
「あと私の事、大和撫子って言ってくれたわ。」
「へぇ、アルコヴァレーノが他者を誉めるなんて珍しい。」
「きっと、ボスは日本女性が好みだから外国人女性が近寄るなってメッせージを込めたんだと思う。」
「まぁ、人除けですからね。効果のほどはどうでした?」
「まずまず…だと思う。」
「それはそれは。ボンゴレボスなんて、それだけで沢山の人間が群がって来ますからね。あなたがまずまずと言うのならかなり良い線いったのでしょう。僕も鼻が高いです♪」
「…。」
「髑髏?」
「…。」
「??」
「でも。」
「でも?」
「でも、ボスってば、私の事ぜんぜん見てくれなかったわ。」
「それはまぁ…本気で恋人って訳ではありませんから。」
「ボス、周りをきょろきょろしてばっかり。」
「そりゃぁ、不慣れな場所でしょうからね。」
「ちがうもん!ずっと、あっちこっちの美人ばっかり見てた!」
「…まぁ、彼もあれで一応男ですから。」
「せっかく私、恋人役だったのに。めいっぱいおめかしして行ったのに!」




髑髏がそこまで言ったとき、骸はふと先日開かれたパーティーを思い返す。

各国の金持ち達が集まる、極秘に開催される武器の横流しオークション。その前に開かれるパーティーである。
カタログ片手に出品者に詳細を尋ねる者。後ろ盾を得る為に、パーティーに現れる某国軍上層部の人間と話をつけようとするブローカー。
身分をこえた、いろいろな人間のやはり、いろいろな思惑が飛び交い混沌を成す。


ちなみに今回のオークションのメインは、旧ソ時代に軍で開発された生物兵器(いわゆる細菌兵器)だ。

ボンゴレは表向きは海運や貿易を扱う企業だが、それを強みに武器の密輸をメインとするマフィアである。
このオークションはボンゴレにとっても大きな意味があるが、ツナの今回の目的は何かを競り落とす事ではない。オークションという雰囲気に慣れる事である。
リボーンは目玉である生物兵器を競り落として来いと言ったが、九代目が制止をかけたのだ。
ボンゴレとして必要な物は構成員の中でもオークション慣れした者に任せる事になったため、ツナは今回自分で興味のある物だけ競っていいことになっている。


話は少し戻るが、オークションの前にはパーティーが開かれ、その時に出品表も配られる。
それは、オークションの前に狙いを付けた物についての説明を出品者から受ける事が出来たり、その出品者、あるいはブローカーとのコネを持つ事だったりいろいろなメリットがある。
もちろん、デメリットもあるがそれもすらも許容するのが暗黙のルールである。まぁ、行き過ぎた事をすれば数日後には消息がつかめないということになってしまう事もあるため、そうそうあこぎな事をする輩はいないのだが。

オークションに参加するのは多かれ少なかれ社会の闇に通ずるものが殆どなので、参加者には仮面が配られ(或は持参して)、それで顔を隠す事が義務づけられているのである

ツナ達も例に漏れず仮面を身につけた。だが、どこからともなく権力の匂いを嗅ぎ付ける者は多いし、仮面をつけていてもわかる奴はわかる。
そして、そいつらが付きまとう事でばれなくてもいいことがバレたりする事も、なきにしろあらず。
そう言う訳で、まぁ他に護衛もちゃんと居るにはいるのだが、キツネとタヌキの巣窟に突っ込んで行く髑髏とツナを心配した骸がこっそり参加者にまぎれて見に行ってたりしていたのだ。




「(そういえば西洋風のパーティーって、女性は随分と肌を露出するドレスを着ますよね。…まぁ、正装ですからねー。)」

幾ら仮面で顔を覆っていても、服装は(正装ではあるが)まぁ自由である。

「綱吉君っってばウブですからねぇ。そう責めないであげなさい。」
「でも。」
「ボンゴレボスじゃなかったら新聞や雑誌でしかお目にかかれない光景でしょうから。」
「でも、骸様がわたしの立場だったらきっと、わたしと同じ事を言うと思うわ。」
「同じ立場?」
「もし骸様がボスの恋人役を言いつかって、でもボスにちっとも見てもらえなかったらって事よ。」
「…いくら綱吉君でも、さすがに男は射程外じゃないですかね。」
「男色家はいっぱいいるわ。」
「いや、まぁそうですけど…。」
「もう少しボスの容姿と名前が有名になって来たらあるかもしれないわ。だってボスはとってもかわいらしいもの。……もしもわかりにくかったら、骸様が女だったらで考えてみてもいいよ?」
「…。(そんな無茶な…。)」
「…。」
「…。」
「…………まぁ、確かにいい気はしませんね。」
「でしょう!?」
「…でもしょうがないんじゃないですか?さっきも言った通り、本当の恋人とか愛人って訳ではないんですから。」
「むー。」
「むくれないの。折角の美女が台無しですよ。」
「どんなにキレイになったって、ボスが見てくれなかったら意味ないわ。」
「はいはい。…しかし、今日はどうして僕にこんな話を?こういう話なら、他の女性とした方が楽しいのでは?」
「消去法。」
「…?」
「とりあえず誰かに言いたかっただけよ。ハルちゃんは先日の護衛隊の反省会。京子ちゃんは今ローマ。」
「で、僕が残り。」
「そう。」
「…。」

「あ、こんなに話してたら紅茶、ぬるくなってない?」
「そうですね。」
「給湯室に戻る?」
「執務室に電子レンジってありましたっけ。」
「仮眠室にはあったと思うけど…。」
「じゃぁそれを使いましょうか。」
「…煎れなおそうよ。」























執務室ではツナがだらだらしていた。
目の前には仕事の山。机の隅には"本日の最低限やんなきゃなんない事リスト"と書かれたメモが貼ってある。
だがしかし、だらだらぐだぐだしている。

そんな折、扉が盛大に開かれる。
ぐだぐだなツナは退屈しのぎの気配に反応して飛び起きる。


「やぁ、骸に髑髏じゃない。どうしたの?」
「本日のお菓子をわざわざ持って来てあげたんですよ。」
「わぁ、マジで!獄寺君じゃなくて骸が持って来る所をみると…今日のお菓子はチョコレート系?それとも何か特別おいしい物なのかな?」
「なんですか、人の事をお茶菓子判断基準に利用しないでくれます?」
「事実でしょ。お前がシェフの"本日のお菓子リスト"を基準にして行動してるのくらい知ってるんだからな!」
「ヒドイです。ヒトの事を食い意地張ってるみたいに。」
「俺の分まで容赦なく食う奴がなに言ってるのさ!」
「そんな事ないです!君の分には手を付けてません!」
「辛口のお菓子の時だけな!」
「そんな事ないです!そもそも、辛いお茶請けの時は来ません!」
「ほら白状しやがった!」
「辛いもの嫌いで何が悪いんですか。あんな口の中がヒリヒリするもの、よく食べられますよね。口の中どM!この火星人!」
「俺地球人超えちゃったの!?」
「あんなの食べられるなんて僕と同じ地球人のワケありませんよ!」
「そ、そうかなぁ…でもオレ、火星より土星の方が輪っかがカッコいいから好き…って、また変な方に流された!」
「今回僕は流してませんよ。君が勝手に流れただけです。」
「うそこけ!」
「今回は僕ウソついてないと思うんですけど。」


ツナと骸がアホらしい話をしていると、ツナに向けてつかつかと髑髏が寄ってくる。


「ボス。」
「あ、髑髏。髑髏もお茶しにきたのかな……!!?」


唐突に、ツナのほっぺにちゅう。


「えっと、あの…あ、あいさつ…?」


ツナがしどろもどろに尋ねるが、言い終わらないうちに至近距離で髑髏は歌いはじめる。


「e'nfin j'arrive a' te de'tester et toi
 tu dis que tu m'aime c'est trop tard maintenant
 les mots doux ou tes larmes ne me disent rien
 tu ne pourrais jamais imaginer mes souffrance ♪」

「な、何語…?」


ツナは驚きと混乱で硬直するが、骸は何か思いついた風で、ぽかんとするツナを背後から思い切り引き寄せる。


「ぬがっ!?」


ツナが骸の胸に後頭部をぶつけると同時に、ツナの口の中に左右から骸の人差し指が突っ込まれて、ほっぺの内側と外側をつままれる。
そしてそのまま上下左右にぶにぶにと動かされる。


「にゃにふんにょひゃあ、いひにゃに!(なにすんのさ、いきなり!)」

そのぶにぶに動きに合わせるようにして、今度は骸が歌い始める。

「je t'aime,je n'ai que toi,quelle be^tise j'ai fait !
 c'e'tait une illusion que j'aimais autre fille
 nous avons promis de nous marier
 ne me dis pas que tu ne reviendras jamais ♪」



骸が歌い終わると、髑髏がもう耐えきれないという風にして笑い始めた。
彼女にしては珍しく、声を上げて笑っている。
つられるようにして、骸も笑い始めた。

腹を抱えて笑う2人を見ながら、巻き込まれたツナは頭に疑問符を浮かべまくる。
そして、早く口を自由にしてくれと言うタイミングを探しているのだった。



おわり


Love is Orange(Orange Lounge)歌詞と和訳。

e'nfin j'arrive a' te de'tester et toi        (やっとあなたをきらいになれたの)
tu dis que tu m'aime c'est trop tard maintenant (今さら愛してるって言っても遅いの)
les mots doux ou tes larmes ne me disent rien  (甘い言葉にもあなたの涙にも何も感じない)
tu ne pourrais jamais imaginer mes souffrance (私がどれだけ苦しんだか想像もつかないでしょう)

je t'aime,je n'ai que toi,quelle be^tise j'ai fait !   (愛してる、君しかいない なんてばかなことをしたんだ)
c'e'tait une illusion que j'aimais autre fille     (他に好きな人ができたなんて 気の迷いだった)
nous avons promis de nous marier         (結婚の約束してたじゃないか)
ne me dis pas que tu ne reviendras jamais    (もう戻ってこないなんて言わないで)

orange,l'amour est orange               (恋はオレンジいろ)
oui nous sommes me' lange's dans un jeu d'ange(天使のゲームに巻き込まれた)
orange,l'amour est orange             (恋はオレンジいろ)
c'est dangereux,quand je finirai son jeu ?    (危険、このゲームはいつ終わるの?)



この歌が好きなので、歌詞を使った物語を作りたいナー…というただそれだけで書いた話。
ついでにヤマナシオチナシイミナシ。
そうか、Pollyannaの時もそうだったけれど歌詞ネタを使うとそーなりやすいという事なのか。
ちなみに、一番最後のフレーズは使いどころを見失ったため使ってないですよ。
個人的には一番最後だけハルと髑髏にデュオで歌って欲しい。

どうでもいいかもしれないけど、物語内のツナの質問「何語…?」より。
フランス語です。

聞いてみたい人用。YouTubeに飛べますよ。
http://www.youtube.com/watch?v=e3c4qk-hQIQ&translated=1