「むーくーろーしゃーーーーーん!朝!朝!起きるびゃんっ!ほらツナちゃんも!」
肌がじんわりと湿る森の夜明け前空が白み始めている頃。
朝露のせいで深みを増した植物の匂いが鼻につくのを感じつつ。
犬に起こされて二人は目覚めた。
「骸しゃん…火の番しながら寝ちゃうとか、らしくないびゃんよ。お疲れびょん?」
「そんな事ないですよ……あ、火消えてますね…。」
「骸様、だいぶぼーっとしているようですが…」
「大丈夫です…あぁ、なんか昨日…夢を見まして。」
「夢ですか?」
「やけにはっきりした夢だったので…あ、気にするような事ではないんですよ、本当に。」
そう言うと骸は立ち上がって大きく伸びをした。
その目は既にぱちりと開いていて、寝起きの様相など微塵も感じさせない。
「いけませんね。眠ってしまうなんて、僕も随分たるんでます。…ほら綱吉くんも起きる起きる!」
未だぼうっと寝ぼけ眼のツナをせっつく。
ツナはぼーっと目をこすって遠くを見ている。
「ボス…どこ見てるの?」
「う…空…。」
「今日はいい天気だよ。」
「そうじゃなくて…夢をみたんだ…。」
「夢?」
「うん。星空から蒸気機関車が降りてくる夢…。」
そう言ってツナは立ち上がろうとするが…転んだ。
「あーあー、ツナちゃんてばまた派手に転んじゃってぇ。」
「あうぅ痛い…。」
ツナが転んだ表紙にぶつけた鼻をさすっていると。
「…ねぇ綱吉くん、これ…」
いつのまにかツナの隣に来ていた骸が、ツナの服からこぼれ落ちた透明な砂を拾い上げた。
骸の手の上で、ひんやりとした透明な砂が、朝日を受けてきらめいた。
「あ、昨日の水晶の夜空の川で転んだ時に………あれ?」
「君も同じ夢をみたんですか?」
「え、骸も?」
「……この砂……。」
「砂じゃないですこれ…ひんやりとします。体温で暖まっているはずなのに触ると冷たい…。」
「水、晶?」
「みたいです…。」
そして骸とツナはぱちりと目を見開いて、奇妙そうに見つめ合った。
「うっそぉ…。」
「まさかね…?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして、足元に気をつけながら山を降りる。
途中、山の中腹で朝もやに沈んだ並盛町と黒耀町に感嘆の声を上げたり、朝露を浴びた藪をぐしょぬれになって通り抜けたり、ヒルやダニに驚愕の声を上げなが
ら進む。
ツナが山の小さな斜面で足を踏み外し、文字通り転がり落ちるとそこは田んぼの側溝だった。鼻の頭にカエルを乗っけたツナが見たのはーーー薄い朝もやに乱反
射し、七色に輝く朝日だった。
その後、ツナ達は町外れの黒耀ランドを目指す。
到着したらまず、道中で買った自販機の飲み物で一服。
そして…彼らはとりかかる。目の前にある宿題という脅威に。
お昼の買い出しジャンケンで延々とあいこが続いてみたり、
そろそろ飽きてきた犬とツナがお休みモードになって骸による公開処刑が開始されそうになったり、
誰かのくだらないギャグに千種のハリセンが大阪人もびっくりな唸りを上げてみたり、
クロームがBGMとしてお経を読み上げたりしながら勉強会in黒耀はす
すんでいった。
そして時計が回る。
今はもう、空は赤く染まり暑さが和らいでいる。
ツナは黒耀ランドの入り口に立って
「みんな、宿題つきあってくれてありがとー!あとプールもお祭りも面白かったよ、また行こうねー!」
「迷子になるんじゃねーびゃんよー!」
「ボス…きをつけてね。」
「静かになるね…。」
「せいぜい無断外泊でアルコバレーノに殺されないようにしてくださいねー!」
見送る黒耀、骸一味に笑顔で手をふった後、ツナは軽く走り始める。
走るタイミングに合わせて、腹がきゅうと小さく鳴った。もうすぐ日の入りだ。腹がへるのも不思議ではない。
ツナが家に帰ると、ぷんといい匂いが漂ってきた。
台所をのぞけば奈々が夕飯を作っているようだ。
「母さん、ただいまー!」
「…。」
「…母さん?」
「ママン、すごく怒ってるわよ。」
「え?あ、ビアンキ帰ってたの?」
「俺も居るぞ、ダメツナめ。」
「あ、リボーンもおかえり!」
「宿題は終わってるな?」
「俺すごく頑張ったよ!…てかなんで母さん怒ってるのさ?」
「宿題終わらせたのか。頑張ったじゃねーか。でもな、まーだ中学生で無断外泊は早いと俺は思うぞ。」
「…あ!」
慌ててツナは奈々にあやまる。
あわてて友人のところに泊まっていたのだと説明するが、思いきりデコピンをくらってしまった。
額をじんじんさせながら、ツナが荷物を部屋へと片そうとすると、ダイニングへの入り口に小さな影が2つ、こちらを伺っている。
「ほらランボいく!いまがチャンス!」
「うぅ…」
ツナと目が合うとランボは少し目に涙を溜めながら「が・ま・ん」とつぶやいた。そしておずおずと前へと歩みでて…
「ツナ、怒ってる?」
「なんのこと?」
「………むぎちゃ…。」
「…あぁ…あれね、もう怒ってないよ。」
「う…うぁ………」
「(ランボ、がんばる!)」
「ツ、ツナごめんね、だもんね…。」
「いいよ、気にしないで。もうちゃんと終わったし。」
そう言って笑い、ツナは部屋へと向かおうとする。そのツナをランボは追いかけ、足を小さく、軽く掴んだ。
「ラ、ランボどうしたの!?」
「ツナ、えと、ランボごめんなさいしたよ!」
「うん、そうだね、がんばった。」
「だから…」
「?」
「だから、もう、嫌いじゃない?」
涙目で鼻をすすりながらランボはツナを見上げている。
隣でイーピンも困った顔で見上げている。
「(頭に血が登ったとっさの言葉だったけど、随分こたえちゃったみたいだな。)」
「いいよ、もうごめんなさいしたし、嫌いじゃないよ。」
ツナがそう言うと、ランボはそれは嬉しそうににぱぁっと笑った。一緒に居たイーピンもうれしそうだ。
ツナはちらりと台所を覗き込む。夕飯まではまだしばらくかかりそうな雰囲気だ。
そうだ、と何かを思いついたツナはちいさく笑みを浮かべた
「なぁランボ、イーピン。」
「なぁに?」「…?」
「お前らさ、水晶の川を抜けて、夜空をどこまでも走っていく機関車って聞いたことあるか?」
幼い二人は興味津々といった面持ちでツナを見あげる。
その様を受けてツナは
「ふたりとも、俺の部屋においでよ。俺が居なかった間に出会った色んな事や、ちょっと不思議な事を話してあげるよ。」
その言葉を受けて、ランボとイーピンは楽しそうに階段を登り、荷物を抱えたツナに遅いと言う。
こうしてツナのとても長くて短かった、三日間の大冒険は幕を降ろすのだった。
お付き合いありがとうございました。
想像以上に長くなっちゃって私びっくり。
これ、学生のみなさんが夏休みに入る頃に
ちくしょうみんな楽しそうにビッグサイトの話しやがって!
うらやましいからお盆はビッグサイトじゃなくて
田舎に帰りたくなるような話作ってやる!
…とか言い出したのが始まり。
でも今なら言えるよね。どこか間違ってるって。主に投稿時期とか。
もう10月突入だよ、最低気温2度の世界ですよ。
でも、自分のうら若き中学生の頃を思い出しながら書くのは結構楽しかったよ。
中1の頃友達と、峠こえて丘もこえて、盆地も超えて延々とJRに乗って、
初めて同級生だけで街に行って映画(多分ハリポタ)見に言ったのを覚えている。
帰りの路線が乗り場わかんなくて真っ青になってパニック起こしたのもいい思い出だ。
あぁ、あの頃は町2つ向こうは未知の世界だったんだなと考えると自分年取ったなと思う。
他にお盆企画2号として、
山本が母親の実家に墓参りする話とかも考えてたけど…
こっちはプロットの段階で結構ホラーになったからまた今度。
多分xxxHOLICとか宗像教授と諸星大二郎のを読み返してから書いたほうがより楽しそう。
あーそうだ遠野物語読みたいな…
さて。
この話を書いたせいで今後書かねばならんだろう消化不良物語。
雲雀の幼少編。
髑髏が将来に関して親と決着をつける話。
骸が自分の将来とボンゴレとの折り合いをつける話。(済)
ツナがボンゴレを継ぐ事を決断する話。
こんなところだろうか。
それと最後に。
この間初めて読んだんだけど、銀河鉄道の夜…本当に素敵な物語だね!
最後に出てきた鉄道について。
モチーフはもちろん銀河鉄道の夜だけど、
中身は千と千尋の後半で千が乗る電車に近いイメージ。
もどりなんて存在しない。
詳しくはぐぐってくれ。