あれから数日が経過して。
ついに今日はツナ達一行がイタリアへと発つ日。

空港にはツナにリボーン、獄寺、山本、雲雀、骸、髑髏、ハル。
ランボは、ボヴィーノとの連絡が取れ次第動く事になっているらしい。



「あ、そういえば了平さん居ないんじゃね?」山本が言う。
「は?…そう言えば居ねーな…」獄寺が続ける。
「もう飛行機に乗っちゃんたんですかねぇ?」これはハル。
「とんちんかんとバカとKYには定評のありすぎる彼が、そんな気の聞いた事を?」と骸。
「ねぇ、そこに"すっとこどっこい"も追加しといてよ。」雲雀も言い出す。
「遅刻なら制裁だな。」と、リボーン。
「リボーンが言うなら正しいわね」ビアンキ。
「まったくもう、みんなってば…!」ツナは溜め息。



髑髏は一人、宙を見る。
(京子ちゃん、見送りに来ないのかなぁ…。)






直後、エントランスにでかい声が響き渡る。
「…すまない!」




走って来たのは噂の中心、笹川了平。そして、京子。


「おせーぞ。」
「スマン、パオパオ師匠!そして沢田!頼みがある!」
「え?頼みって何ですか?」
「簡単な事だ!京子をイタリアに連れて行きたい!」
「…へ?」


叫ぶ了平の後ろで京子が微笑む。


「おい芝生空気読め!」
「読まん!」
「おい!」
「俺は沢田と話している!黙れタコヘッド!」
「きぃ〜さぁ〜まぁ〜はぁ〜っ!」


つかみかかろうとした獄寺をいつもの如く山本が止める。
そしていつの間にか回り込んだ骸が幻覚でビアンキを造り出して、雲雀が獄寺の首を強制的にそちらへ向ける。獄寺沈黙。
いつものアホな事態など気にもせず、ツナは了平との会話を続ける。


「了平さん、それは…」
「京子本人の願いだ!」
「…うん。わたし、ツナ君達と一緒に行きたいの。」
「でも…」
「知ってるよ。この前の話を忘れたりなんてしていない。だから今すぐになんて言わないわ。私は強くなってツナ君に会いに行く。きっと数年くらいはかかるわね。もう、コロネロ君には話はつけてあるの!」
「きょ、京子ちゃん!」
「それに私ね!」




京子は了平の指からボンゴレリングを取り外し、自分の指にはめる。
そして、まばゆい金色の炎を灯した。



「…!」
「見て、ツナ君。私、お兄ちゃんの代わりになれるんだよ。」
「代わりって…!」
「私、思うの。これから先、イタリアでお兄ちゃんがマフィアの重役になるなら、偽物や影武者がいて困る事ってないと思う。そして、私にはそれができる。」
「…でも。」
「ツナ君言ってたよね。弱いのは困るって。なら強ければ問題ないんでしょ?私は強くなる。私はツナ君を裏切ったりなんかしないし、覚悟はもう決めた。コロ ネロちゃんが言うには、私にもお兄ちゃんと同じ体術の天才の可能性があるかもしれないって。もう一度確認するよ。ツナ君は私が"強ければ"問題がないんだ よね?」
「………やっぱダメだよ。」
「どうして!」
「だって…、危ないよ。」
「知ってるわ。」
「ケガするよ。」
「覚悟してる。」
「…死んじゃうかもしれない。」
「それは…!」
「あともどりできないんだよ。」
「怖くないって言ったら嘘。でも!」
「俺、言ったよね?本当は誰も巻き込みたくなかったって。」
「…言ってたね。」
「正直な所、全員置いて行きたいくらいなんだよ。俺には…重すぎる。ただでさえこんななのに、これ以上重くなんて、しないでよ…。」
「でも…わたしは…。」
「お願いだから…!」

「沢田!」
了平が会話に割り込む

「了平さん!」
「お兄ちゃん!」
「俺からも頼む!沢田!」
「京子ちゃんを危険にさらす事になってもいいんですか!」
「俺は…京子の願いを叶えたいだけだ!」
「…それでどうにかなる訳ないのは、了平さんだって知ってるでしょう!?」
「…あぁ。でも、せめてチャンスはやれないだろうか。」
「……。」




「わたし、強くなったらイタリアに行くわ。」
「…京子ちゃん!?」
「その時の私を見て、そして決めてくれる?」
「それは…!」

「ツナ。」
「…リボーン……。」
「おまえの負けだな。」
「…!」
「京子はリングに炎を灯せたんだ。第一段階クリアじゃねーか。それに…。」
「それ、に…?」
「本気の覚悟を決めたヤツに対して、大した理由もなく断るのは失礼ってモンだぞ。」
「…でも。」
「もっとも、お前が了平と京子を納得させて諦めさせるだけの反論が出来るのならば、話は別だがな。」
「……。」



「沢田…頼む。」
「ツナ君…。」




「俺の負けかな…。」



「沢田…!」
「ツナ君!それって…!」
「うん。自分の身を守れるくらいに強くなったら、また会おう?」
「……うん!会いに行くよ!きっと、ここに居る誰よりも強くなって、会いに行くね!」
「…スマンな、沢田。だが礼を言う。」
「了平さん……お礼なんて。」







「はひぃ〜!これでスッキリしましたですよ!」
「そうだね、ハルちゃん!それに京子ちゃん、よかった…!」

「…ケッ!まったく、余計な時間取らせやがって!」
「まーまー、そう言うなって!これで落ち着いたんだしさ!」
「そうですよ。このまま飛び立って、後々までぐちぐち言ってるような事になったら、最ッ低ですもの。厄介ごとが減って良かったです。」
「そうだね。絶対言うよね。言わなくても多分、勝手にヘコんでるよね。」


一息つく一同に、リボーンがニヤリとしながら一言。


「お前らは何も知らないはずなのに、このやり取りに関して一つも疑問を持たねぇどころか、完全に納得してるんだな。」



「「「「「 ……。 」」」」」



「いっ……いやいやほら、あるだろ?KYと書いて空気を読む!みたいなさ!」
「そうそう!山本のアホが言うとおりですよ、リボーンさん!」
「ハルも、空気は読む方です!よくわかってなくても知ってるフリするみたいな!」



「ふ〜ん?」
リボーンがニヤリと笑う。

「全員でか?」



「いやぁ〜、やればできるもんですねぇ。」
「なのな〜。俺実は全然わかってないんだけど、骸はわかってた?」
「僕も全然ですぅ。」
「ですよね〜。獄寺さん!」
「あぁ。その通りだ。決してノゾいていたりした訳では…あ!」



「獄寺君…?」



「じっ…十代目!これはその、えーと、…」

「わお!のぞきなんて趣味が悪いね獄寺隼人!」
「鳥頭に同意しますよ。品のないタコ頭ですよね〜。」
「俺もそれはないと思うのな〜。」
「ちょ、お前ら!」


「ひどいや…。」



「貴様等見苦しいぞ!貴様等も散々騒いでおったではないか!」

「芝生!」
「余計な事を!」
「ちょ、了平さんもそれは言わない約束なのな!」
「僕は不可抗力だよ。こいつらに誘拐されて来たんだから!」
「何しれっとウソ言ってんだよ!筆頭で向かってったくせに!」
「なにそれ君だって突っ込んで行ったでしょ!」



「そっかぁ…。みんな見てたの…。」



「俺は止めたのな!」
「俺だって止めた側だ!」
「僕何も知〜らないっ…。」
「…逃げられると思うのこのナッポー野郎。」
「は、放しなさいっ!この馬鹿!鳥頭!手羽先!」
「さぁ綱吉、のぞきの筆頭はコイツだよ!思う存分殴るといいよ!」
「ち…ちょっと待って下さいってば〜〜!!!!」


「京子ちゃん。」
「クロームちゃん?」
「よかったね。」
「……うん!」
「これから先、いろいろ大変だと思うけど、がんばってね。」
「大丈夫だよ!絶対にね。私がイタリアに渡る時は、クロームちゃんよりも強くなってるから!」
「…まけない。」
「うふふ。ライバルだね!」
「ハルだって負けません!」
「うん!その時は勝負しようね!」
「約束ですよ!」




「おいおめーら、飛行機が行っちまうぞ。」

「へ!え、あぁそうだった!」
「十代目、急ぎましょう!」
「だな!」
「はひぃ〜!もうそんな時間ですかぁ!?」
「あっぶない…殴られる寸前でしたよ。」
「惜しかった…。実に惜しかった。」
「…もうちょっとだったのにね。」
「のぞいた貴様等が悪い!」
「あなたも居ましたよね!あそこに!」
「極限忘れた!」
「そんな事許しませんよ!あとで覚えてなさい!」




「ツナ君!」



「…京子ちゃん?」

「……いってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!………気が変わってもいいし、来なくてもいいけど…それでも、それでも待ってるから!」
「知ってるよ。大丈夫。時間はかかると思うけど、きっと…ううん、絶対に会いに行くから!」
「…うん!」





空港の展望台から、飛び立つ飛行機を見送る少女が一人。
たくさんの人間にまぎれて、無言で見送っている。
飛行機が高度を上げ、その影が見えなくなってもまだその方角を見続けている。
しばらくすると、彼女は踵を返して歩きはじめる。

静かな微笑みと確かな足取りには、
今はまだ一握りでしかない希望と、揺らぐ事の無い覚悟が垣間見えた。



おしまい>


おつかれさまでした。
リクエスト消化というか、自分で書きたかったエピソードというか、両方だね。
アンケートに拍手やメール、たくさんのリクエストを頂きました。
それらには随分はげまされながら、かき上げました本編です。ありがとうございます。
以上、京子参入編でした!

私は長いお話描くといつも心折れそうになってるんだけど、
うーんやっぱいつも思ってるけど、本作って売ってる人達は。
すごいよな…。漫画とか、もっと大変なんだろーな…。
一度でいいから作ってみたい。んで売ってみたい。
でも、そんな買ってもらえるほどのクオリティのものを作れない。
あとこれ15000字くらいだもの。未来ですら4000字くらい。これじゃ売れん。



今回、前半と後盤の温度差がどうしようもないですね。
仲悪いくせに無駄に息の合いまくるギャラリーが、私は大好きです。
妙に気の合う雲雀と骸とか楽しい。あいつらって絶対同族嫌悪の類いだよね。
普段はカチ合うくせに、妙に呼吸がピッタリなカンジ。


あと獄寺は不憫でなんぼだと思ってる。
髑髏とハルは黒くてなんぼだと思ってる。
ツナが振り回せないと骸が振り回されるのは確定なのか?



あと、NOVELページの紹介文作ってて思ったけど。
桜の咲く時期に雪って降らないよね!
でもそんなこと気にしたらダメなんだぞっ☆
…まぁGW終わるまでは桜さかねー地域の人だからいろいろ空想で買い手はいるんだけどさー