ユーリの思い出(拍手御礼)


「ねぇ、にいさま。どうしてユーリは自由にお空を飛んではいけないのですか?いつになったら、自由に屋敷を出て行けるようになるのですか?」
「ユーリ、十になるまでだから。十になったら自由になるのだから。それまで、ガマンだよ。」
「あと6ねん…。」
「なに、あっというまだよ。」
「……。(ながい、なぁ。)」



がくっ。

…あ。
どうやら私は眠ってしまっていたようだ。

(午後のうららかな陽気に負けて居眠り、か)

目の前には散乱した魔法書と羊皮紙の山、あけっぱなしのインク壺に汚れた羽ペン。
羊皮紙には…ミミズがのたくったような線。

(…最低だ…。書き直しのようだな…。)

気が重くなる。ぶっちゃけやってらんない。
アッシュに紅茶でも頼んで気合いを入れようかと、私が立ち上がったのと同じくらいの時だ。


どごおぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん!!!!!


とかなんとかいう音が城門のあたりから響いて来た。

「なんなんだ!?いきなり!?」

ユーリは城門の方へと走って行く。
そこはまさに惨劇だった。
強固な城門が派手に崩れて瓦礫の山と化している。
そして、その下から……

「えへへ〜、ゆーり、ひさしぶり〜」
「ポ…ポエットぉ??」


天使の少女がずりずりと這い出て来た。


「だ…大丈夫か?けがとか…していないか?」
「うんと、大丈夫。全然痛くないよ。ちょっとだけ着地に失敗して、お城の門にぶつかっちゃっただけだから!」
「ちょっと…?」
「うん、ちょっとだけ。」

ポエットは無傷のようだった。
なによりだが。


でも。

城門に突っ込んで、思いっきり破壊して、無傷?
さっき見た自分の過去を振り返るような夢。
あの、分けの分からないようなしきたり。
必要かもしれないなぁ、と、停止した脳の片隅で思った。

そして、
天使とは恐ろしい生き物だと
あらためて認識し直した。

fin




アッス君について僕が思った事。(拍手御礼)


「いままで気にしていなかったけどさぁ。」

ソファに寝転がったスマイルが口を開く。

「どうしたっスか?」

紅茶を持ってきたアッシュがそれに答える。

「うん、アッス君のその〜っスって語尾、口癖…なんだよねぇ?」
「まぁ、そんなモノっスね。」
「じゃあ、その語尾つけないでしゃべってヨ。」
「…オチャ…ヲモッテキタ…ッッッ………ヨ。」
「…なんでカタコト??」
「……俺にはムリッス。語尾が無いとフツーにしゃべることすらムズイっス。なんで?」



「何をしているのだ?」


おもむろに現れたユーリが尋ねる。

「ん!あら、ユーリ。アッス君にね、〜っスって語尾付けないでしゃべってってお願いして、実践してもらったの。」
「そしたら何故だかうまくしゃべれないんスよ。なんだか不思議ッス。」
「…その語尾は、口癖というよりも訛りに近いのではないか?」
「あ〜そうカモネ。」
「なるほどっス!」
「獣の吠える声を引きずっているのだな。きっと。
「…てことはアッス君、元はわんこが基本なんだ?」
「そうっスね。基本は獣の方っス。」
「だから毛並みが半端無くきもちイイのだな。」
「きゃあ!超ナットクだネ☆」

「……なんだか身の危険を感じるっス…。…俺は獣の姿になるつもりはねぇっスよ…?」
「もっさい野郎になんか、全く興味はないの。あるのはふかふかの毛皮……。」

このあと、この城では盛大な毛皮狩りが行われた。


fin



Jack's  Hunting!(拍手御礼)


「ジャック!」

ヴィルヘルムはジャックを探して館の庭園のあたりまで来ていた。
すると、そこには夢中で走り回るジャックが居た。

「ジャック!昨日の…!」

ジャックは完全に聞いていなかった。
ヴィルヘルムなど眼中に無く走り回っている。

「……おい、ジャック!」

やはり返事はない。
ヴィルヘルムはため息をつきながらもある事に気がついた。
それは、ジャックは何かを追いかけている…という事だった。

何を追いかけているのか気になったヴィルヘルムは走るジャックを目で追う。
ジャックが追いかけているのは一匹の蝶々のようであった。


蝶は優雅かつ華麗に、ゆっくりと上下に飛んでいるが、何分三次元の世界なので、ジャックはなかなか捕まえられないでいる。
そうやって蝶に気を取られているうちに、石につまずいたのか思いっきりズッコケる。
呆れを通り越して芸術を感じるほどの見事なこけっぷりだ。


……と、その時にとっさに蝶を捕まえたようだ。
そろりそろりとジャックが握った手を広げると……

「…あ、これ蛾じゃん!」


ヴィルヘルムはなんだか、なんとも形容のしがたい気持ちになった。


fin




以下お題文章。

どこからお借りしたお題目なのかわからなくなってしまいました。
もってちゃダメですよ。


● 原作者の頭の中で躍る。
● 歌詞に秘められた歴史。…ここまで。うわ。
● 知らない方が良い物語。
● 創られた運命への抵抗。
● 箱庭から見上げる遊戯。
● ただ今主人公眠り姫中。
● 小咄の海に沈んだ人達。
● 時間にたゆたうのは誰。
● 想像が生み出した亡霊。
● キミはよんでくれたね。

1. 原作者の頭の中で踊る


「…だってサ。ユーリ。」
「まぁ、そもそもメルヘン王国自体が“物語”の集合体なのだ。つまり、必ず何処かに物語の作者が居るのだ。我々登場人物は原作者の頭の中で踊るのがそもそもの仕事だろう?」
「そーじゃなくってサ。この場合は…あぁもう、考えるのも面倒いや。思考放棄思考放棄!まぁ、せいぜいがんばってよね!この、クソ管理人!」
「????」


2.歌詞に秘められた歴史


「〜〜♪〜〜〜〜〜♪」


「ユーリの歌っている歌、なんだか聞いた事あるっス。」
「まぁ、そうだろうね。とっても有名な歌だから。」
「有名なんスか?」
「うん。魔族限定だけどネ。ボクも小さい時聞いたな。ユーリが歌ってるのはボクが知ってるのとちょっと違うけれど。」
「へぇ。でも、良く聞き取れないっス。なんて言ってるんでしょうね?」
「古代の言葉だからね。聞き取れてもきっと意味は分からないと思うよ。ちなみに訳はこんなカンジ。
“この世界には命は無かった。あるのは荒れた大地と澱んだ水、全てを切り裂く風に、終わる事の無い夜。そして果てしない闇。”
“永き時の末、闇の末端は幾つかに切り離され、それぞれ異なる自我を持った。最初の魔族の誕生だった。魔族は暗黒の守護の元、この世界に勢力を伸ばしていった。”
“或る時、この世界に光が現れた。光は闇を嫌い、この世界から闇を消そうと光の玉を造り、夜を無くした。そして、光の世界を生み出した。”
“次に闇の末端である魔族を駆逐する為に天使を造り出した。”そんで…。」
「それは歴史みたいっスね。続きはどうなってるんスか?」
「……てへ。ごめん、忘れちゃった☆」
「えぇっ!そらぁないっスよ!気になるっスよぅ!」

「そんなに続きが気になるのか?」

「あ、ユーリ。」
「ユーリは知ってるんスか?」
「あぁ、当然。確か…えーと……。」
「もしかしてユーリも訳を忘れたとか?」
「スマイルじゃないのだ。そんな馬鹿な事、あるハズないだろう?適当な訳が出てこないのだ。内容的には、光の頂点に立つ者は神を名乗り、闇の頂点に立つ者 は魔王を名乗った。そして天使と悪魔との戦いがどんどん激しくなり、光と闇とが中途半端に混じり合った生き物が世界に溢れた。彼らのほとんどは天使や悪魔 よりも弱かった。彼らの戦いに巻き込まれてたくさんの命が生まれ、散って逝った。
それを見かねたある人間が、この世界に溢れる命の力を用いて、光と闇を昼と夜に分け、神を天界に、魔王を魔界に置き、それぞれに昼と夜を支配させる事でこの古代大戦を終結させた。
その後、大戦を終結させた人間はこの世界の昼夜の狭間の生き物の王となり、この世界において人の身でありながら、神や魔王と対等な存在となった。
…まぁ、こんな感じだ。戦いの部分は大分省略したがな。いわゆる創世の歴史を綴った歌だ。というか、お前、本当に知らなかったのか?」
「歌は知ってたっスけれど、訳は知らなかったっス。へぇ、国王様ってスゴいんスねぇ。でも、何で“魔族に有名”なんスか?創世の歴史なら、この世界の全ての生き物が知っていたって別におかしくないっスよ?」
「あのねぇ。天界に住んでるヒト達が“この世界には光よりも…神より最初に闇があった”なんて信じると思う?それに、何が事実だとしても魔族と同じ詩、メ ロディーで歌うとも思えないよ?他にも、天界族、魔族以外の生き物の半分以上は寿命300年以下の短命種でしょ?歌い継がれる時なんかにズレが生じたり、 自分たちの土着の神様をたたえる歌やなんかにアレンジしたりして変化してるんだよ。」
「詩、メロディー、意味。継がれるたびに新しくなってゆくというのも一種の歴史を感じるな。」
「そう考えると素敵だと思うっスけれど…。」
「ケド??」
「天界の人達と魔界の人達は今でも仲が悪いっスよね。いつか仲良く同じ歴史を歩める日は来るんスかね。」
「我々が生きているうちには無理だろうな。歴史も考え方も、そう簡単には変わらないし、対立するものを受け入れることも、許す事も、生きた時間が永い程、歴史が長い程変えるのは難しい。」
「…でも、俺は…。」
「……ねぇねぇ、もうこんな時間だよ!ひょっとしたらポエットちゃんやヘンリー君が来るかもよ?今日はお菓子作ってないの?」
「あぁっ!台所!」


「…変化なんてどこにあるかは分からない。もし、ヘンリーが王国の頂点に立ち、ポエットが次の代の神になれば何か変わるかもしれないな。」
「そうだねぇ。ジジィやババァよりも、若くてイキのイイ子の方が見ていて楽しいしねぇ。」
「だな。とっとと皆隠居してしまえば良いのだ。」
「あはは、言うじゃない。ところで、何で今日はいきなりあの歌を歌っていたの?」
「今日が何の日だか知っているか?」
「?」
「春分だ。昼と夜とが等しくなる日。ふと思い出してな。魔族に伝わる歴史とポエットに聞いた天界の歴史。天界の歴史を魔族のメロディーで歌ってみたのだ。」
「通りで知ってるのとちょっと違うと思った。そういえば今日は王都でお祭りがあるんだっけ?夕方には出発しないと花火が見られないよ!」
「春分と秋分の祭りは人種も宗教も皆全て平等だ。今日のアッシュなら喜ぶだろうな。」
「さっすが気が利くね、リーダー様!」
「ふふん、足りないな。もっと私を讃えろっ!」
「すごいね、えらいね、完璧だねぇ!…って、何なのさ、その顔。」
「ホントに讃えられると気持ち悪いと思ってな。」
「自分で言ったんじゃん!」


ユーリとスマイルが喋っていると、大扉の方から声がする。

「あそびにきたよ−!」
「ごめんくださーい!」

アッシュが子供達を出迎えるまで、あと30秒。



拍手御礼3つは随分ながいこと働いてました。
すっかり忘れてたから。
あと、更新したつもりでもされていなくて、その上データがすっとんとんになった事も。
あぁぁぁぁ。

お題は、一つ目で頑張れっていっといて、二つ目で沈没。
このお題をクリアするころには俺様的メルヘン王国が完成する予定だった。
でも、手が思考に追いつかなくなって、結局創世の歴史おんりぃ。
古代天魔大戦や、人界における種族間の対立、迫害の歴史。
大陸縦断戦争や王都の内乱…そして、物語という世界の立場と存続について。
…までが目標だったけれどそれどころじゃなかった。
なさけねー。