そして、
ユーリの傷はきれいに癒えましたので、ユーリは王妃様にお礼を言いました。
そしてユーリは、ユーリのあるべき場所に帰ろうとしましたが
王妃様はユーリにもう少しこの国に留まってはどうかと尋ねました。
と、いうのも
王妃様はユーリを助けたからこの国に繁栄がもたらされた、と思い込んでいるからです。
しかし、
ユーリは大切な仲間と信頼する友のもとへと帰らなければいけないと言いました。
なおも王妃様はユーリに説得をこころみますが
ユーリは首を縦には振りません。

そして、
ついに王妃様は家来にユーリを捉えるように命令しました。
この国では魔法を使わない事を約束したユーリは簡単に捕まり、
お城の地下牢につながれてしまいました。



国はますます富み栄えました。
王妃様はますます喜びました。






それから数週間がたちました。


見かけない少年が一人王妃様に謁見を申し込みました。

その少年はぼろぼろの服を着て、この国では見ないたぐいのゴーグルをつけていました。
自分はジャックだと名乗りました。


ジャックが言うには、
自分はこの国にいるヴァンパイアを至急つれて帰る命令を受けている
もし彼を出す事を拒めばこの国に良くない事が起きる。
とのことでした。

王妃様の答えは
ヴァンパイアなんて知らない、間違いではないのか
とのことでした。

ジャックは、
そうか。それならばしょうがない。
と言って帰って行きました。



その日の晩に町の収穫物を保存する倉庫から火の手が上がりました。
町の人たちは頑張って消火しましたが、昨年からの蓄えはみんな灰になってしまいました。






さらに数週間がたちました。


倉庫が焼けてしまったせいで食べ物が不足してしまい、
たくさんの人が困っていました。


そんななかで

見かけない女の子が一人王妃様に謁見を申し込みました。

その女の子はなにか人間ではない類いの雰囲気と、冷たい冷気をまとっていました。
その子は自分は名前がないので、皆からはおんなのこと呼ばれているといいました。


おんなのこが言うには、
自分はこの国にいるヴァンパイアを至急つれて帰る約束をした
もし彼を出す事を拒めばこの国に良くない事が起こる
とのことでした。

王妃様の答えは
ヴァンパイアなんて知らない、間違いではないのか
とのことでした。

おんなのこは、
そうですか。わかりました。
と言って帰って行きました。


次の日の朝、空が曇り雨が降りました。
雨は雪となり風にのり、吹雪となりました。
麦は凍って死んでしまいました。
作物の芽も雪の下に埋もれてしまいました。






さらに数週間がたちました。

国では作物が大損害を受けたので
国の外から来た商人たちの持ち込んだ食べ物に、とても高い値段がつけられていました。
貧しい人たちは高い食べ物を買う事などできず、おなかをすかせていました。


そんななかで

見かけない青年が一人王妃様に謁見を申し込みました。

その青年はこの国では見かける事の無い珍しい人狼の一族で、なかなか体格のいい強そうな感じでした。
彼は、自分の名はアッシュだと名乗りました。

アッシュが言うには、
自分はこの国にいるヴァンパイアをつれて帰る役目がある
もし彼を出す事を拒めばこの国に良くない事が起きる
とのことでした。

王妃様の答えは
ヴァンパイアなんて知らない、間違いではないのか
とのことでした。

アッシュは、
そうっスか。
と言って帰って行きました。


その日から2日くらいあとでしょうか。
国の周りに人食い狼の群れが住み着きました。
たくさんの人々が餌食になりました。






さらに数週間がたちました。


狼のせいで商人の往来が無くなり
国は孤立しました。
食べ物が不足して、たくさんの人々が飢えに苦しんでいました。
餓死者も出ていました。


そんななかで

見かけない青年が一人王妃様に謁見を申し込みました。
その青年は非常に珍しい"己の姿を消す"事ができる人種で、空色の肌と深紅の隻眼が特徴的でした。
彼は自分の事はスマイルと呼んで欲しい、と言いました。

スマイルが言うには、
自分はこの国にいるヴァンパイアをつれて帰らなければいけない
もし彼を出す事を拒めばこの国に良くない事が起きる
とのことでした。

王妃様の答えは
ヴァンパイアなんて知らない、間違いではないのか
とのことでした。

スマイルは、
そうなの。
と言って帰って行く前に、
"本当にそれでイイの?"
と尋ねましたが

王妃様は
私は何も知らない。
とだけ答えました。


その日から2日くらい後。
町からネズミがいなくなりました。
追うようにして、町に疫病が蔓延していきました。
しかし、薬はとても高価で手の出せない人がほとんどでした。
体力の無い子供やお年寄りを中心に、たくさんの人が死んで逝きました。







さらに数週間がたちました。

この国にはもう、元の豊かで活気のある国の面影はどこにもありません。
国は貧しく
国民には暗い影がまとわりつき
どこかうつろな目はおちくぼんで光を失い
餓えて、病におびえながら
迫り来る寒さに震えています。
町の外に出るという希望すらもありません。

この国に今あるのは恐怖と絶望と死体だけでした。



そんななかで

見かけない青年が一人王妃様に謁見を申し込みました。
その青年は羊に似た仮面をかぶり、全身黒ずくめで割と立派で綺麗な格好をしていました。
彼は、自分の事はヴィルヘルムと呼ぶように、と言いました。

ヴィルヘルムが言うには、
自分はこの国にいるヴァンパイアをつれて帰る必要がある
もし彼を出す事を拒めばこの国に良くない事が起きる
とのことでした。

王妃様の答えは
ヴァンパイアなんて知らない、間違いではないのか
とのことでした。

ヴィルヘルムは、
国の様子は見たのか
と尋ねました。

王妃様は
えぇ、知っています。
と答えました。

ヴィルヘルムは
何か思う所は無いのか
と続けます。

王妃様は
こんなに不幸な事が重なるなんて、まったくついていません。
と答えます。

ヴィルヘルムは言います
この国が繁栄する前にたまたまこの国に訪れた
我輩の友がここに居る筈だ
コウモリ達が教えくれた情報なのだ、と。

王妃様は言います
いま彼をこの国から出せば国が滅んでしまいます。
だからそれはできません、と。

ヴィルヘルムは
それこそ偶然ではないのか、
奴は天使でも妖精でもない。
人間にとっては忌まわしきヴァンパイアだぞ、
と言いましたが
王妃様は
そんな事はありません
彼は我が国に繁栄をもたらしました。
と答えました。

ヴィルヘルムは
一連の不吉な出来事は偶然なのに、か?
と続けます。

王妃様は
偶然ですよ
と言いました。





その時偶然、この国に大きな雷が落ちました。
城下町もお城もみんな一瞬で焼けて灰になってしまいました。

偶然にも無傷で生き残っていたヴィルヘルムは
かつてのお城の地下牢の入り口だった扉が
がたがたと動いている事に気がつきました。



がたん!

扉が外れてでてきたのはユーリでした。
どうやら、地下に居たおかげで偶然生きていたようでした。



ヴィルヘルムはそれを見てうれしそうに
ユーリ、久しぶりだな。しぶとく生きていたんだな。
と言いました。


ユーリは
ここはこんな砂漠だったのか?
と、尋ねます。


ヴィルヘルムは、
この国はさきほど、
偶然にもとても規模の大きな雷が落ち、丸焼けて全て灰になってしまったのだ。
偶然とはかくも恐ろしいものなのだな。
と、言いました。




だから、ここには今でもこんな砂漠があるのです。



民話風のお話。
ちなみに、ユーリがピーチ姫ポジションになったのは、振りまく厄災が思いつかなかったからだよ!