この前、めずらしく父様から召還を受け、随分久しぶりに父様の屋敷に行った。
内容は大した事ではなくて安心したが。

しかし……、転移の魔法を使って横着して来たのだけれども
……………………長かった。そして、遠かった。疲れた。まぁ、飛んで行く事を思えば…なかなか短縮されてあるのだけれど。

まぁ、幼少時代を過ごした懐かしの屋敷を見に来たのだと思えば……
………………帰るのめんどくさい………………







もうそろそろ帰ろうかと思って屋敷を出る。
あー……今日は月が無いのだなぁー。星がよく見えるなぁー。

そんな事を思いながら屋敷を出て、首を回してみる。
昔、屋敷を抜け出すのに使った“秘密の抜け穴”が目に入った。
……あんなせまい窓通ってたのか……。
なんだか懐かしい。




そうだ!!
折角なのだからあの頃の“秘密の場所”にも行ってみようか。

















「ここらへんに大きな樫の木が……あ。あれかな?」

……意外と覚えているものだな。
あぁ、この樫の木。今見てもやはり大きい。
しかし、もっと幹が太くなかっただろうか?……私が成長した所為なのだろうか?
んで、ヴィルヘルムとの腐れ縁の始まりでもある、か。


そして、ここでまがる、と。












幼少期の記憶は色あせずに私を導いてゆく。
そして、記憶が正しければここにあの花畑が……。






……なかった。ただ景色の良い崖がある。

…道を間違えたのだろうか?
まぁ、古い記憶だしな。もういいや。帰ろ。







……と、向こうに見知った黒いマントの男が居た。




「……ヴィルヘルム?どうしてこんな所に?」

「ユーリか。こんな所で会うとはな。」

「崖に何か用があるのか?……えっと、何か落としたとか?」

「相変わらずのぶっとんだ思考だな。何か探しているように見えるか?」

「……ぼけっとどこか眺めているように見える。」

「………。」

「?」

「崖に用はない。ただ…この場所に用がある。お前はこの場所を忘れたか?」

「私は記憶の中の花畑を探しに来た。そしたら此処に辿り着いただけだ。」

「足下。」

「?」



言われた通りに足下を見ると
淡い銀色のひかりをまとった花が一輪、咲いていた。




「…………!」

「一ヶ月前、ここに嵐が来た。
嵐は何日もこの森に留まって、風は岩を削り雨は大地を支える力を弱めた。」

「………崖崩れ…か。」

「あぁ。花畑を尋ねてきたのなら、残念だったな。あの場所は、もう、無い。」

「……一瞬だったのだろうな。きっと。」



時の流れが残酷なのは、よく知っている。
形あるものに永遠など無いことも痛いくらいに知っている。
光と影が対になるように、始まりと終わりは対になる。出会いと別れもまた然り。
太古の昔より変わらぬ法則。因果律。
全ては運命なり。




初めて手に入れた“自分だけの場所”。初めて味わった“殺されるという恐怖”
自分がどれだけ無力かを思い知ったあの日。

自分がまだ父様の屋敷に住んでいた頃、泣きたい時はいつでも此処まで走ってきたし、空を飛ぶ為の練習もこの場所でしていた。
イタズラの為の魔法を考えるときも此処だったし、おおっぴらに出来ない類いの魔法の実験もいっぱいした。

たまに先客(ヴィルヘルム)が居たりして、
いろいろ愚痴っ言ったり、喧嘩したり、一人では出来ない類いの実験をして、痛い目みたり。
……そういえば仮面の出来ばえを自慢された事もあったな。

私の一族とヴィルの一族はあまり関わりが無かった(というか全く)事もあって、会うときはいつも此処だった。


この前までは、あったのだな。
確かにここに。この、場所に。














「……!」

ちょっと、思い当たる事があったので崖から飛び降りる。




もう、あの頃とは違う。翼をひろげて、風を受ける。
どこまでも続く緑の絨毯に、特に感動する事も無く……。
















崖下に辿り着いた。静かに青緑の芝生上に着地する。
目の前には崩れ落ちた土砂が積み重なって小山を作っている。

そして、私はあるものを見つけた。
私の予想は当たっていた。




「ユーリ!?」

振り向くと、いきなり飛び降りた私を追ったのだろう、ヴィルが着地したところだった。






「見ろヴィル!」


目の前には黒々とした森。しかし、地面は光っていた。まるで星空を引きずりおろしたように。




「これは……!」

「崖の上なんて、辺鄙ところに群生していたのだ。種が落ちてきても不思議はなかろ?」

「……なるほど。」










あの花畑が確かに此処にあった事、失うだけではなかった事。



……崩れてしまっても、また思い出がひとつ増えてしまったな。



終わり


この物語書いてる最中にcsFEVERが発売しました。
やりこんでるのでUP遅くなったです。
FEVERの曲&キャラって割とメルヘンチックなの多い気がします。
うれしいなぁ。

あとやっぱりちっこいのはええなぁめんこいなぁ…。