菊の家前にて。
遊びに来たフェリシアーノが掃き掃除をしている菊に声をかける。


「やほーー☆遊びに来たよー!」
「おや…久しぶりですね、フェリシアーノ君…。」
「あれ?顔色悪いよ。どうかしたの?」
「ちょっと風邪をひきまして…。」
「うわ!大丈夫?…本当に悪そうだよ。」
「…大丈夫ですよ。」
「…(これはヤバそうだなぁ。)何かやることある?俺手伝うよ!だから寝てて?」
「いやいや…それほどでも…。」
「とてもそうは見えないよ。国連もビックリな驚きの青さだよ!」
「…それはひどい。」
「うん、だから寝てなって。俺の事は気にしないでよ。俺と菊の仲でしょ?…日本語的におかしくないよね、この表現?」
「おかしくないですよ。折角来ていらっしゃったのに申し訳ない。」
「さっきも言った通り、それは気にしないでよ。きっとこれも何かの縁だって!何かする事ある?僕お手伝いするよ!!」
「…ありがとうございます、そしてすみません。それではお言葉に甘えさせていただきますね…。」


菊、布団を敷きながら

「昨日雨に降られただけでクラクラするだなんて、もう本当じじいですよね。」
「ヴェ〜。それは災難だったね。でもでも、こーゆー事あるある。」
「まったくです。頑張って塩鮭タイムセールに駆けつけたってのに売り切れ。その上雨に降られるし、盛大に転ぶし、ダンプに泥水もかけられたし、野良犬に吠えられたのに驚いて足を滑らせてドブにもハマるしで、踏んだり蹴ったりの骨折り損のくたびれ儲けです!」
「えと……今、なんて言ったの?」
「…?踏んだり蹴ったりの、骨折り損のくたびれ儲けって言いましたけど。」
「なんかそれすっごい痛そうだね!」
「?」

そして、しばらく後。
菊は眠りに付いたようである。


「よし!菊に頼まれたのは"ポチくんのえさやり"と"夕御飯のお買い物"だね!それじゃぁ早速…」

ジリリリリリ…

「あれ、電話だ!」

ガチャ

「もしもーし!」
「菊…ではないな。」
「ルートだぁ〜。おれだよ!おれおれ!」
「今流行のオレオレ詐欺か!」
「違うってば!俺だよ、フェリシアーノ!」
「そ、そうか。俺はてっきり…あ、いや違う。すまない、間違い電話だ。」
「そんなことないよ、あってる!だって今俺、菊の家にいるんだもん!」
「そうか。他所の家の電話に勝手に出るのはどうかと思うぞ。」
「違うよ。菊今寝てるんだ。だから俺が出たの!」
「寝てる?あいつは客人を差し置いて寝るような奴ではなかったと思うが。」
「うん。菊ってば、えっと…」
「?」
「そうだ!ふんだりけったりで、骨折って損したくたびれ儲けで、起きれる状態じゃないの!だから俺が…」
「…なるほど。大変そうだな。俺も行った方がいいか?」
「そうだねぇ、菊よろこぶかもね!」
「うむ。そんなに大変な事になっているのならば、人手が必要だろう。」
「わーい!ルートに会うのも久しぶりだぁ!」





ルートヴィッヒ宅の近所にて。

「あれ〜、ルートじゃねぇか。よう、今日もバリバリムキムキのゴリマッチョだな。」
「フランシスか。」
「出かけるのか。どこ行くんだ?」
「菊の家だ。」
「あぁ、菊ちゃんの!いいねぇ〜。観光?にしては準備がアレだな。ルートがそんな軽装の急ごしらえなんて珍しい。」
「いや、どうやら踏まれたり蹴られたり…暴行を受けた上に財布をスられて、動ける状態ではないらしい。」
「え!…物騒だねぇ。日本って治安のいいイメージがあったけど…。」
「わからん。菊は旅行好きだから、どこか別の国に行っていたのかもしれんな。」
「多分そーだよね。菊ちゃん不用心だからねぇ。」
「全くだ。治安が良すぎるのもある意味問題だな。」
「ははは。いいじゃないの、平和が一番!」
「…とまぁ、そんな訳で人手が足りなさそうなので言ってくる。」
「ん、行ってら。お兄さんも後で行こうかな〜。観光兼ねて♪」
「…。」




その後、フランシスとイヴァンの電話。

「やぁフランシス。元気?モスクワは今日も寒いよ〜。最近は北風をコルコルする研究にハマってるんだ。」
「そりゃぁ余計冷えそうだな。」
「背筋も凍っちゃうよ〜。で、今日はどうしたの?」
「ん。俺さ、菊ちゃんのお見舞いに行こうと思ってるんだけど、何持って行ったら喜ぶと思う?」
「お見舞い?なにかあったの?」
「どうやら、どこかの国で強盗にあって、ひっどくボコられたらしいんだよね。」
「えええ!やだ!なにそれコワイよ!」
「うん。で、今ルートが急いで様子見に行ったよ。ルートにしちゃ珍しく慌ててたな。」
「よっぽどひどいんだ…。」
「…そういや、今はどんな状態なのかは聞かなかったな…。」
「…ひどいのかな。」
「………まっさかー……?」
「…。」
「…。」
「ぼく、王燿に聞いてみるよ。近所だし、何か知ってるかも。」
「そうしてみて。俺は明日の朝日本に向けて発つよ。」
「うん。」




イヴァンと王燿の電話

「もしもし。」
「だれあるか!今北京は何時だと思ってるある!ばっちりしっかりご飯タイムあるよ!空気読むある!」
「コルコル…」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!イヴァンあるか!そうあるか!そうあるな!?何の用あるか!」
「あのね、聞きたい事があるんだ!」
「聞きたい事?我にあるか?」
「あのね、菊がねぇ、どこかひどく治安の悪い国で強盗にあって、ひっどいケガを負わされたんだって話を聞いたんだ。王燿は何か聞いてない?。」
「そんなの…知らねぇあるよ。」
「そうかぁ。悪かったね…じゃぁ他の人に」
「待つある!」
「さっきの、もっかい言うある!」
「ひどく治安の悪い所で強盗にあって、重傷を負わされたってやつ?」
「…。」
「?」
「組織あるか?そいつら。」
「え」
「菊はザコある。でも、本気になればそこそこ戦えるし、逃げ足の速さは一級品ある。その菊に重傷を負わせるなんてそうそう楽じゃねーあるよ。」
「そうだね。言われてみれば。」
「アイツはビビリあるから、治安の悪い場所に自分から出かけて行くってのも考えられねーある。もしかしたら…誘拐、かも。」
「…ありえるよね。命からがら逃げ帰ったってのなら、納得も行くね。フランシスが明日発つって言ってた。俺も行こうかな。なんか心配だよ。」
「それもそうあるな。何かあったら困るし、頭数は多い方がいいある。」
「うん。」




王燿とアーサーの電話。

「眉毛いるあるかあへん。」
「王燿か。うぜぇ。どうでもいいな。切るぞ。」
「黙るあへん!聞きたい事があるからこーしてしたくもねー電話してるある!質問に答えるよろし!」
「あぁ?」
「今すぐ、知ってる限りのマフィアと裏組織、地下連中のリスト作成するあへん!最速あるよ!」
「おい、なんで俺なんだよ。そういう事はロヴィーノに言えっての!それにそーゆーのは、おまえの得意分野だろうが!」
「うるせぇある!菊の仇探しに付き合わせてやるだけ喜べあへん!」
「……おい、今なんつった?」
「あぁ、てめーは知らねーあるか。ふーんそーあるか。自称友達のくせに知らされてねーあるか。そんならどうでもいいある。」
「どうでもいいわけあるか!前置きはいい。仇って、どーいう事だよ。」
「しかたねーから教えてやるあへん。聞いた話じゃ、菊が誘拐されて殺されかけたらしいある。」
「なっ…!」
「おおかた、日本国相手に脅迫でもしようとしたってトコロあるな。馬鹿ある。しかも、逃げられてるあへん。」
「そうか、逃げられたんだな。よかった…。」
「今の状態が解るって事は、誰かに保護されてるか、脅迫が来てるかある。」
「!」
「…ただの、じじいの推測ある。」
「だよ、な。そうとは、限らない、よな。」
「何動揺してるある。」
「うるせぇよ!動揺して何が悪い!」
「ふん、開き直ったあるか。まぁ、虚勢張られるよりはマシあるね。」
「で、だ。菊は、その…無事なんだろうな?」
「知らねーある。情報が足らないあへん。でもさっき言った通り、完全に無事って訳じゃなさそーあるよ。聞いた雰囲気じゃ、虫の息らしいある…。」
「虫の…?」
「死にかけって事あるな。東洋の言葉ある。」
「…!」
「菊をそこまでボコれる連中なんて、そうそう居るもんじゃねーあるよ。これは何か、……何か大物がかかるかもしれねぇあるな?」
「…そう、だな。菊の強さは、俺もよく知ってる。でも、だけど…。」
「信用はできてねぇあるか。」
「…違げぇよ!…菊は、あいつは不用心なんだ!多少は痛い目を見た方が薬になる。あいつはもっと、周囲に対して警戒するべきなんだ。」
「確かに。その意見には全面的に同意するあへん。」
「でも、今回のそれはやりすぎだ。こりゃぁもう、タダじゃ済まされねぇ。」
「ほぉ?どうするあるか。」
「わざわざ言わないと解らねぇのか?東の大国がこんなに馬鹿だったなんてな。」
「我が知る限りじゃ、日本と英国に同盟関係はなかったハズあるな。」
「そんなの知るか。菊は"個人的"な友人だ。てめぇは友達がこんな目に遭わされて黙ってるってのかよ。」
「…黙ってたら、誰が電話なんかするあるか。我はやりたいようにやったある。後はてめぇの好きにするよろし。」
「リストの件はロヴィーノに回しておけよ。俺は…アルに聞いてみる。この間遊びに行ったって言ってたから、何か知ってるかもしれねぇ。」
「我に命令するな…って、もう電話切られてるあるよ。全く、これだから友達の少ないヤツは…(ぶつぶつ)」





アーサーからアルへの電話。

「おいアル!」
「…Hello…って、なんだアーサーか。悪いけど今度かけ直してよ。今やっと俺のマリオが最終面まで来たんだから。」
「この前、菊と会ってただろ!居場所とか、どこに出掛けてたとか…何でもいいから!何か聞いてないか!?」
「何だよ、アーサーが慌ててるなんて珍しい…あれ、いつものことだっけ。菊がどうかしたのかい?」
「何だよ、知らないのか。お前の数少ない友達だろ!」
「数少ないは余計なんだぞ!んで、何かあったのかい?」
「簡潔に言う。菊がある組織に誘拐されて、日本国に脅迫が来たらしい。」
「!」
「菊の所在は不明。王燿からの情報によればかなりの深手を負っているらしい。」
「じ…冗談だろ?」
「加えて、現在時点の生死は不明だ。」
「アーサーそのブラックジョーク、本格的にイケてないよ?君が面白い事を言ったためしなんて全然ないけど、今回のは特におもしろくない。」
「そう、だな。現実はいつもつまらない。」
「…。」
「現実がジョークみたいにおもしろかったらいいのにな。」
「…うそ。」
「残念な事にこれは現実だ。」
「…ウソだ!だって俺、この前菊に会ったんだ!ニンテンドーの新しいゲーム一緒にやったんだよ!」
「…。」
「今度は遊びに来るって!…お菓子いっぱい持って来てくれるって…!」
「…アル。」
「…そんなのウソだ!だって、俺は…俺は…!」
「…俺だって、とびきり趣味の悪いジョークだと思いたいさ。でも、これは現実なんだ!何も出来ていないのも本当だ!」
「うるさいんだぞ!アーサーのバカ!いつだって君はろくな事しないし言わない!今日の事だって菊にチクってやるんだぞ!きっと菊も、アーサーの事嫌いになるはずだ!」
「あぁ、幾らでも嫌われてやるよ!菊が生きてて、また会えるんならな!」
「…菊は…死んだりなんかしないんだぞ…!だいいち、国家が死ぬなんて!」
「アルは若いから、知らないのも無理ないだろうけれど、俺は…」
「聞かないんだぞ!」
「……死んだ瞬間を見た事はねーけど、行ったきり帰って来なかった連中は、俺の知ってる限りでも、たくさんいたぞ…!」
「うるさいんだぞ!なにも聞こえないんだぞ!…認めないんだぞ……!」
「…。」
「…いやなんだぞ…!」
「アル。」
「…。」
「アル!」
「アーサー…。俺…。」
「…まだ、間に合うかもしれない。今王燿とロヴィーノが調べてる。」
「俺…!」
「どうするかは、おまえが決めろよ。…もうガキじゃないんだから。」
「ずるいや。こういう時だけ大人扱いなんだな。」
「…。」
「…。」
「…俺は、菊の家に行ってくる。」
「誰もいないのに?」
「ポチが寂しがってるだろ、きっと。」
「…それは…。」
「………正直、俺もかなり動揺してる。真面目に考えられない。少し頭を冷やす必要があるんだろうな。」
「…悪かったよ、アーサー。」
「…いいや。俺だって、よく考えもしないで喋ってた。菊の家に行った後で、王燿の所にも行ってみるさ。今はとにかく…情報が欲しい。」
「うん、わかった。俺も少し頭を冷やして考えるよ。本当は、すぐにでも何かした方がいいんだろうけど…」
「だな。」






菊の家にて

ルートヴィッヒは、フェリシアーノの電話応対についてこ一時間説教した後に、菊の言い回しに呆れながら食事の制作(じゃがいもとヴルストオンリー)に取りかかり、一泊した。

2日目には菊は完治した。
フランシスが来て、ルートの勘違いに盛大に爆笑しながら、持って来たアップルパイを切り分けた。
しばらくするとイヴァンが来て、事の顛末を知ってコルコル言いながら笑い出した。しかし、アップルパイをすすめると機嫌は良くなった。
王燿にも電話で勘違いの話をした。ものすごーい勢いでののしられた。
今度王燿が来る時に、最高級の酒とつまみを用意していないと許してくれないらしい。
それと、ロヴィーノから震える声で電話がかかって来た。ものすごい勢いで罵られたあと、ちぎーと叫ぶ声が入って、電話は切れた。
どうやら菊が、今度一月以内にトマトとワインを用意してイタリアまで遊びに来ないと、(なぜか)フェリシアーノが殴られるらしい事になった。

さらに時間が経つと、虚ろな眼をしたアーサーが尋ねて来た。そして、菊を見るなり泣きついてきた。
アーサーが聞いた事の顛末を知って、皆で大爆笑。人数が増えたため、今日は鍋である。
駄菓子菓子。奴らは何か忘れている。

買い出しに行ったフランシスが、本屋でNYタイムズに気がついた。
完全武装のアルが暴走を始めるまで、あと××時間。



おしまい!


こいつらはワイワイやってるのが可愛くていいと思う。
そして、APHはどこまで現実味を薄くするかっていうのを
マイ課題にしてみようかと検討中。

どうでもいいけど、こいつらでRPG系のファンタジックなのって面白そうだよね。